キックスケーター








スケートパークで折り畳みスクーターを操る少年


キックスケーター (Kick scooter) とは、地面を蹴って進むハンドル付きの乗物の総称。




目次






  • 1 概要


  • 2 歴史


    • 2.1 事故など




  • 3 種類


    • 3.1 折り畳み型 (ポリウレタンウィール装着型)


    • 3.2 空気タイヤ装着型


    • 3.3 三輪式、四輪式


    • 3.4 幼児向け


    • 3.5 動力付き




  • 4 日本における法的な扱い


    • 4.1 動力なしのもの


    • 4.2 動力ありのもの


      • 4.2.1 公道走行可能なキックスケーター






  • 5 脚注


  • 6 関連項目





概要


キックスケーターの多くは自転車に似た感覚で乗る事ができ、ローラースケートやスケートボードよりも扱いが簡単な事からレジャー用途の他、スポーツとして使われる、公園等で自転車代わりの手軽な移動手段としても使われる。


元々スクーター (Scooter) やスクート (Scoot) と呼ばれていたが、2000年代に折り畳みスクーターの登場で市場が広がった頃からキックスケーターの呼称が使われる様になった。キックボードという名称で呼ばれることも多いが、これはK2社の製品(キックボード)を指す登録商標であることから注意が必要である[1][2]。またキックスクーターとされることもあるが、こちらもJD社の同名の製品と混同されることがあるため、スポーツとしての「キックスケーター」普及に貢献するために設立された日本キックスケーター協会では総称としては「キックスケーター」を用いるよう主張している[2]


なお、電動機や内燃機関付きのキックスケーターは原動機付自転車または自動車扱いとなる[3](#日本における法的な扱い参照)。



歴史




ローラースケートを流用した木製スクーター(制作時期不明)





1936年にベルギーで撮影されたという写真


1817年、両足で地面を蹴って進む二輪車「ドライジーネ」がドイツで発明される。19世紀後期にはローラースケートが登場し、その部品で作ったスクーターもあったと言われている。1914年、アメリカで二輪スクーターにエンジンを取り付けたAutoped(英語版)が登場している。1974年、日本でペダル推進式三輪スクーター・ローラースルーGOGOが発売され流行する。


1990年代後期、スイスでWim Ouboterが小型折り畳みスクーターを開発し、Micro Mobility Systemsを設立してヨーロッパで発売する。同じものが日本やアメリカではRazorの名で販売されて流行した[4]。更にRazor USAの共同設立者である台湾のJD Corporation(久鼎金屬實業股份有限公司)[5]が自社でもJD Bugとして販売を開始し、同製品は大阪のジェイディジャパンからJD Razorのブランドで日本でも販売されている[6]


1999年頃に折り畳みスクーターが日本に入ってくると、鉄道利用の際にも持ち込める手軽な移動手段として都市部の若者から広まって行き、子供にも流行した。それに伴って非常識な利用者も出て来たため、使用禁止を明示する施設も現れている。



事故など


2000年2月には、前年11月に東京の歩道上で歩行者と衝突した利用者が重過失傷害罪で書類送検され[7]、同年7月には神奈川で転倒による死亡事故も起きた[8]


また、2014年10月17日の消費者庁は、9歳までの幼児・児童がキックスケーターを使用していて転倒などにより負傷する例が2010年(平成22年)以降53件発生し、死亡事故も1件発生していると発表している[9]



種類



折り畳み型 (ポリウレタンウィール装着型)




折り畳んだ状態のRazor初期型


1990年代後半に登場し、その後主流となった二輪スクーター。アルミニウム合金の多用で総重量3Kg程度に抑えられ、小さく折り畳んで持ち歩く事もできる。舗装路のみでの走行を前提にローラースケート同様のポリウレタン製ウィール(車輪)[10]を持つ。初期のウィールは直径98mmだったが[11]、大径化が進んで200mmの製品も登場し、中には空気タイヤを備えた製品も存在する。後輪のフェンダー(泥除け)がブレーキを兼ねており、これを踏んで後輪の回転を抑えることで減速を行う。


スケートパークなどでスタントを行うフリースタイルスクータリング(英語版)も欧米やオセアニアを中心に広まり、2008年、2009年には折り畳み機構を廃した本格的なスタント専用スクーターが発売された[12]



空気タイヤ装着型




フットバイクのレース




BMX型スクーターを使用したドッグスクータリング


折り畳み型以前から使われている、12インチ程度の自転車用タイヤとリムブレーキを備えた二輪スクーター。上述のポリウレタンウィール装着型と区別する際にはニューマチックスクーター (Pneumatic scooter) 、ビッグスクーター (Big scooter) 等と呼ばれる。より安価で手軽な折り畳み型の登場で減少したが、乗り心地や安定性を重視する分野での需要がある。


ヨーロッパではフットバイク (Footbike) と呼ばれる大型のものを使ったレースが行われている他[13]、犬を動力にするドッグスクータリング(英語版)等の用途もあり、ニューマチック専門のメーカーもなお存在する。


BMXが盛んだったアメリカでは1980年代後期にフリースタイルBMXの要素を取り入れたスクーターが各BMXメーカーから発売された[14]。これらは従来のスクーターと区別してスクートと呼ばれ、その雪上版としてスノースクートが誕生した。なお、折り畳みスクーターでもスタントの世界ではスクートと呼ばれる事が多い。




三輪式、四輪式




キックボードの一種、K2 Kicktwo


デッキに固定されたハンドルを掴んで乗る「キックボード」、「スケータ」、「スティックボード」など。二輪式より安定する他にも自立する、片手で乗れるといった利点がある。




幼児向け




幼児向けスクーター二態。右側はMini Micro


まだ自転車に乗ることができない3 - 5歳程度の幼児を対象とした、主として三輪車風のもの。鋼鉄製のフレームにプラスチック製の外装を持った製品が多い。この他にも、バランス感覚の育成をうたった三輪式(前二輪)のものが販売されている。




動力付き


通常の折り畳みスクーターの前輪にモーターを装着して立ち乗りスクーターとした製品がある他[15]、個人で自作ジェットエンジンを取り付けた例まである[16]


なお、日本の道路交通法において電動キックスケーターは原付または自動車の扱いとなる(#日本における法的な扱い参照)



日本における法的な扱い



動力なしのもの



道路交通法76条4項3号で規制されているのは「乗り物」ではなく「行為」であり、キックスケーターだろうと自転車だろうと、ローラー・スケート行為とみなされれば規制を受けるし、通常の移動手段として用いれば公道でも適法である。下記のように「乗り方」でなく「乗り物」によって「交通のひんぱんな道路」での使用が規制されるという法解釈は誤りである。


キックスケーター協会の解説については、道路交通法を定めたのが警察庁である等と誤った記載を行っている為、信用できない。


動力なしのキックスケーターは、道路運送車両法上では軽車両に分類される。また、力を伝達するペダル等を備えない事から自転車には分類されない[2]。ただし、道路交通法では「人を搬送する目的で設計していない」「社会通念上、移動目的と認められない」製品については、軽車両ではなく遊具とされ、「交通のひんぱんな道路」での使用が禁止されるとしている[2]。「ひんぱん」の基準に関しては明確な基準はないが、おおよそ、他の歩行者や車両等との交通の危険が生じうる程度の交通量がある場所と解される。[要出典]


なお、道路運送車両法上は、キックスケーターは同法施行令(第1条)の規定に該当しないため、同法上の軽車両には該当しないと考えられる。[要出典]


上記のように法律上の扱いは明確化されておらず、キックスケーターの製造・販売においては「公道での使用は控えてください」との但し書きがされることも多い[17]。機種によってブレーキの有無など設計も異なるため、公道での使用についてはメーカーや販売店への確認が推奨されている[2]



動力ありのもの



電動機や内燃機関付きのキックスケーターは、法令上、道路交通法および道路運送車両法の双方で、原動機付自転車または自動車扱いとなる[3]。よって、様々な規制法令に不適合となる電動機や内燃機関付きのキックスケーターをそのまま公道で運転すると、法律上は原動機付自転車または自動車を運転した事になり、そのままの状態では様々な法令により処罰される事になる。



公道走行可能なキックスケーター


2019年時点、パルウェイ(Palway)やエアホイール(Airwheel)といったブランド名で、道路運送車両の保安基準に適合する製品の販売が始まっている。製品には最高速度が原付の制限速度30km/h程度出るものもある一方、最高速度が20km/h未満のものもある。最高速度が20km/h未満の場合には、道路運送車両の保安基準の適用が若干緩和されている。


市販されている製品にはおおむね次のような特徴がある。



  • 構造上はキックスケーターだが、十分な剛性のある車体フレームを持つ。駆動はリチウムイオン等のバッテリーによる電動。空気式小インチタイヤを装備。

  • フレームの左右に両足を乗せるステップを装備。車体上に立位で乗車する。

  • ハンドル部分は折りたたみにできる構造。ブレーキ、警音器、ウィンカー、前照灯、尾灯、制動灯、後部反射器、番号灯、後写鏡を備える。
    • なお、保安基準によりブレーキは2系統である必要がある。最高速度が20km/h未満のものの場合は、基準緩和され尾灯、制動灯、方向指示器、速度計は不要[18]だが、夜間などの安全上、尾灯、制動灯、方向指示器の装備が望ましい。



法令上は原動機付自転車となるため次の義務が課される。




  • 運転免許の取得義務(原付免許または上位免許)と、運転免許証の携帯義務


  • 自賠責保険への加入義務と、自賠責保険証書の携帯義務


  • ナンバープレートの取得および取付義務(原付格のものは、市町村に登録)

  • 原付扱いであるため、歩道、路側帯、自転車道、自転車レーンは通行できない。


  • オートバイ用ヘルメットの装着義務 - オートバイ用として法令上認められるものであればよい


また、原付扱いであるため、自動車損害賠償保障法に基づき人身事故に対する損害賠償につき無過失責任が適用される。よって、自動車任意保険にも合わせて加入する事が望ましい。



脚注





  1. ^ “キックボードを楽しもう!”. Internet Watch (2000年2月21日). 2015年3月22日閲覧。

  2. ^ abcde“日本キックスケーター協会”. 2015年3月22日閲覧。

  3. ^ ab“電動キックスケーターを公道で使用する方は必ずお読み下さい”. 日本キックスケーター協会. 2015年3月22日閲覧。


  4. ^ Folding Scooter Story: msg#00015(英語) - 2000年にウォールストリート・ジャーナルに掲載されたという記事


  5. ^ Razor USA LLC Company Profile - Yahoo! Finance(英語)[リンク切れ]


  6. ^ 日本でも一部廉価品が「JD Bug」のままで売られているが、JD BugがJD Razorの下位ブランドという訳ではない。


  7. ^ 朝日新聞夕刊2000-02-03(縮刷版)。歩行者をすり抜ける様に走っていたとされている。


  8. ^ 朝日新聞2000-07-27(縮刷版)。下り坂での転倒。


  9. ^ “キックスケーター、子供の転倒事故相次ぐ 注意呼びかけ”. 日本経済新聞. (2014年10月17日). https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG17H0R_X11C14A0CR8000/ 


  10. ^ 一体成形だったものにハブを加えて大型化した経緯から、通常はタイヤとは呼ばれない。


  11. ^ 幅24mm、軸8mmのインラインスケート用ハブを使用。初期は通常76 - 78mm径のウィールに対応する小さめのハブが使われていたが、後に拡大している。


  12. ^ 「Micro XT」(2008)と「Razor Ultra Pro Model」(2009)


  13. ^ IKSA - the world of scooter and kicksled sports(英語) - フットバイクとキックスレッドの競技団体


  14. ^ BMXmuseum.comでの例:1987 GT Zoot Scoot、1987 SE Racing Rad Scoot


  15. ^ Bruch, H. et al. 2003. Micro Mobility Systems. Realizing the Scooter Dream. Case Study, University of St. Gallen, St. Gallen.(英語) P23. 「e-power」


  16. ^ 自作ジェットエンジン/零號機/その5 - 播州迷頁-雅屋-


  17. ^ “キックスケーターガイド”. 2012 Sports & survival. 2015年3月22日閲覧。


  18. ^ 最高速度20km/h未満のものについては、道路運送車両の保安基準第六十二条の三が適用される




関連項目







  • キックボード

  • ローラースルーGOGO

  • キックスケーター協会




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