製造物責任法








































製造物責任法

日本国政府国章(準)
日本の法令
通称・略称
PL法
法令番号
平成6年7月1日法律第85号
効力
現行法
種類
民法(不法行為法)・消費者法
主な内容
製造物の欠陥による損害賠償責任
関連法令
民法
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製造物責任法(せいぞうぶつせきにんほう、平成6年7月1日法律第85号)は、製造物の欠陥により損害が生じた場合の製造業者等の損害賠償責任について定めた法規のことをいうが、形式的意義においては、上述の損害賠償責任について規定した日本の法律のことをいう。1995年7月1日施行。製造物責任という用語に相当する英語の(product liability)から、PL法と呼ばれることがある。




目次






  • 1 製造物責任の意義


  • 2 構成


  • 3 責任の概要


  • 4 民法との関係


  • 5 製造物


  • 6 欠陥


  • 7 製造業者等


  • 8 免責事由


  • 9 適用外


  • 10 期間の制限


  • 11 準拠法


  • 12 関連項目





製造物責任の意義


損害賠償責任を追及する場合、民法の不法行為法における一般原則によれば、要件の一つとして加害者に故意・過失があったことにつき被害者側が証明責任を負う。つまり民法で損害賠償を請求する際には、被告の過失を原告が立証する必要がある。しかし多くは、過失の証明が困難であるために損害賠償を得ることが不可能になる場合があるとの問題意識から、同法で製造者の過失を要件とせず、製造物に欠陥があったことを要件とすることにより、損害賠償責任を追及しやすくした。このことに製造物責任の意義がある。


無過失責任としての製造物責任に関する扱いとしては、まず、1960年代初めのアメリカで、fault(過失)を要件としない strict liability(厳格責任)の一類型として判例で確立された。また、ヨーロッパでは製造物責任の扱いについて各国でかなりの差異があったが、その均一化を図る必要があるとして、1985年に当時のEC閣僚理事会において製造物責任に関する法律の統一に関する指令が採択され、その指令に基づき各国で製造物責任に関する立法が導入された。


日本では、本法が制定される前は、民法が過失責任の原則を採用していることを前提に、製造物に欠陥が存在することをもって製造者の過失を事実上推定する方法により被害者の救済を図ってきたが、当時のEC諸国の動向を受けて立法が検討され、本法が1994年に制定された。



構成



  • 第1条(目的)

  • 第2条(定義)

  • 第3条(製造物責任)

  • 第4条(免責事由)

  • 第5条(期間の制限)

  • 第6条(民法の適用)



責任の概要


製造業者等は、引き渡した製造物欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害賠償をする責めに任ずる。ただし、欠陥の存在、欠陥と損害との間の因果関係については、被害者側に証明責任があり、加害者側である製造者等に証明責任を転換する立法はされていないことに注意が必要である。


もっとも、欠陥があることが証明できれば過失を認定できるのが通常であることや、欠陥の有無に関する判断基準は過失の有無に関する判断基準と重なることが多いとして、過失と欠陥がどれだけ質的に異なるかにつき、疑問を呈する見解もある。


なお、損害が当該製造物についてのみ生じた場合は本法の対象にはならず、民法の適用や契約の解釈の問題となる。



民法との関係


製造物責任法は、製造物の欠陥に起因する損害賠償請求に関して、民法の不法行為責任の要件を一部修正したものである。責任要件を「過失」から「欠陥」に修正しているが、損害賠償の他の要件は変更していない(6条)。つまり、次のとおりである。



  • 因果関係 民法416条の相当因果関係の考えが類推適用される。したがって、特別損害は、予見可能な場合のみ損害賠償の範囲に含まれることになる。

  • 過失相殺 被害者に過失があれば過失相殺されることがある(民法722条2項)。

  • 共同不法行為責任 複数の責任主体が存在する場合には、相互に連帯債務を負う(民法719条)。

  • 慰謝料 精神的損害に対しては慰謝料が発生する(民法710条)。

  • 金銭賠償 損害賠償の方法は金銭賠償を原則とする(民法722条1項・417条)。



製造物


本法にいう製造物は、「製造又は加工された動産」と定義される(2条1項)。


したがって、サービス、不動産、未加工のものは定義上含まれない(もっとも、「加工」概念は広く解釈される必要があると解されている。)ので欠陥があっても本法の対象にはならない。無体物も動産ではないためコンピュータ・プログラムそれ自体は本法の対象にはならないが、欠陥があるプログラムを組み込んだハードウェアの使用により損害を被った場合は、動産たるハードウェアに欠陥があるものとして本法の対象になるため、他社製ソフトウェアのプレインストールを行う場合はソフトウェアベンダーとのサービス水準合意の締結を行い、リスクの一部を移転するなどのリスクマネジメントが必要となる。また、元々無保証とされているオープンソースソフトウェアを組み込んだハードウェアを製造販売する際にはより一層の注意が必要である。



欠陥


本法にいう欠陥は、「当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」と定義されており(2条2項)、一般的に以下に分類される。



設計上の欠陥

設計自体に問題があるために安全性を欠いた場合

製造上の欠陥

製造物が設計や仕様どおりに製造されなかったために安全性を欠いた場合

指示・警告上の欠陥(設計指示の抗弁)

製造物から除くことが不可能な危険がある場合に、その危険に関する適切な情報を与えなかった場合。取扱説明書の記述に不備がある場合などが該当する。


上述のとおり、欠陥の存在は被害者側に証明責任があるが、どの部位、部品に原因があったまでは特定する必要はないと理解されている。また、製造物を通常の用法に従って適正に使用したことによって損害が発生した場合は、被害者たる原告としては、適正に使用すれば通常は損害が生じないようなものであることを証明すれば足りる。



製造業者等


本法でいう製造業者等は以下に該当する者である(2条3項)。



製造業者

製造物を業として製造、加工又は輸入した者。輸入業者も含まれることに注意が必要である。

表示製造業者

製造業者ではないが、製造業者として製造物にその氏名等の表示をした者又は製造業者と誤認させる氏名等の表示をした者

実質的製造業者

製造物にその実質的な製造業者と認めることができる氏名等の表示をした者



免責事由


製造業者等は、製造物に欠陥があるとされた場合でも、以下のいずれかを証明したときには免責される(4条)。



開発危険の抗弁

製造物をその製造業者等が引き渡した時における科学・技術の知見(解釈上、その時点における最高水準の知見と解されている)によっては、欠陥があることを認識できなかった場合。このような場合に免責されないと新製品の開発意欲が削がれるとの考慮から、免責事由として採用された。

部品・原材料製造業者の抗弁

製造物が他の製造物の部品又は原材料として使用された場合に、その欠陥が専ら当該他の製造業者が行った設計に関する指示に従ったことにより生じ、かつその欠陥が生じたことにつき過失がないこと。

例えば、テレビの部品に欠陥があったために火災があった場合、テレビの製造業者も部品の製造業者も本法にいう製造業者として、製造物責任を負う。しかし、部品の製造業者がテレビの製造業者の下請けの関係にあり、テレビの製造業者による設計・指示に従って部品が作られた場合は、部品の製造業者に製造物責任を負わせるのは酷である。そのためにこのような抗弁が認められる。



適用外


原子力損害の賠償に関する法律第4条第3項の規定により、原子炉の運転等により生じた原子力損害については、本法律は適用外とされる。



期間の制限


本法に基づく損害賠償請求権は、原則として、損害及び賠償義務者を知ったときから3年の消滅時効、または製造物を引き渡したときから10年の除斥期間により消滅する。



準拠法


日本において製造物責任につき準拠法の指定が問題となる場合、当該法律関係の性質が不法行為に該当するものとして法例11条により「其原因タル事実ノ発生シタル地ノ法律」が準拠法になるのか、法例11条の範疇に属しないものとして条理によって準拠法を指定すべきかが争われてきた。


この点、法例を全面改正した法の適用に関する通則法では、市場地である「被害者が生産物の引渡しを受けた地の法」によることを原則とし、例外として、生産物が転々流通するなどして通常予見できない地で引渡しがされた場合については、「生産業者等の主たる事業所の所在地の法(生産業者等が事業所を有しない場合にあっては、その常居所地法)」によることとして、立法的に解決した(18条)。


※ 法の適用に関する通則法で「製造物」ではなく「生産物」という語を用いているのは、不動産や未加工の動産を含むなど、対象を製造物責任法にいう「製造物」より広くしているため。


関連項目


  • 電気用品安全法







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