陶磁器












野々村仁清『色絵藤花茶壺』(国宝)


陶磁器(とうじき、英語: pottery and porcelain)は、セラミックの一種で、土を練り固め焼いて作ったものの総称。やきもの。


陶磁器に使われる粘土には、加熱することでアルミニウムやカルシウムなど他の物質と化合しガラス化する珪酸を主成分とする石英などが含まれる。成形後に加熱することで、土粒子の間に溶けて流体となったガラスが入り込み、冷めると固体化し土粒子同士をくっつける。『古陶磁の科学』の著者内藤匡は、この過程をおこしに喩えている。おおまかに言えば、陶器と磁器の違いはこのガラスになる成分と量の違いである[1]




目次






  • 1 分類


    • 1.1 土器


    • 1.2 炻器


    • 1.3 陶器


    • 1.4 磁器




  • 2 日本の陶磁器生産


    • 2.1 日本の主な陶磁器産地


    • 2.2 日本の主な陶磁器企業若しくはブランド




  • 3 アジア、ヨーロッパ、アメリカの主な陶磁器産地とブランド


  • 4 陶磁器の公募展


  • 5 関連項目


  • 6 脚注


  • 7 外部リンク





分類


陶磁器は釉薬の有無および焼成温度で以下のように大別される。



土器





縄文土器



素焼きのやきもの。窯を使わず、粘土を野焼きの状態で700~900℃の温度で焼いたもの。釉薬(うわぐすり、またはゆうやく)はかけないが、彩色されているものを「土器」と呼ぶことがあり、その場合は、その彩色具を釉薬としないことを前提としている。歴史的には陶磁器の前身にあたる。



炻器





信楽焼


せっきと読む。「炻」は国字(日本で考案された漢字)。英語の"Stoneware"の訳語である。窯を使い、焼成温度は1200~1300℃。土器と陶器の中間的性質を示すもので、釉薬の有無にかかわらず、透光性・吸水性ともにないものを指す。ウェッジウッドの「ジャスパーウェア」、ブラックバサルト、ロッソアンティコなどの「ストーンウェア」も炻器である。


炻器の原語である"Stoneware"は西洋陶磁の用語であり、中国、日本などの東洋陶磁の分類概念とは必ずしも一致しない。たとえば、"Celadon"と呼ばれる青色の焼き物は、日本・中国では青磁(青瓷)と言い、磁器に分類されるが、欧米では"Stoneware"の一種とみなされる。日本の陶磁研究者や陶芸作家には「炻器」という概念を立てる者と立てない者がいる。[2]


日本では、古墳時代に朝鮮半島からもたらされた窖窯(あながま)を用いて焼成する須恵器が起源。備前焼や常滑焼などが炻器に分類される場合がある。ただし常滑、萬古焼の朱泥、紫泥は別系統で中国の宜興窯の紫砂陶器が元である。


これらの焼き物は「焼き締め」ともいい、釉薬はかけないが焼成において自然釉がかかるものがある。また焼成において火襷(ひだすき)、牡丹餅などの模様が偶然(ときとして作為的)に現れることがある。原料に珪酸、鉄を多く含んでいるため、赤褐色か黒褐色をしている。軽く打つと澄んだ音がする。吸水性はほとんどない。



陶器





乾山の茶碗


カオリナイト(カオリン)やモンモリロナイトを多く含んだ粘土を原料とし、窯で1100~1300℃の温度で焼いたもの。釉薬を用いる。透光性はないが、吸水性がある。厚手で重く、叩いたときの音も鈍い。粗陶器と精陶器に分けられる。


日本では、古代に愛知県の猿投窯で国内初の人工施釉陶器(灰釉陶器)が生産されたことから始まり、瀬戸焼、伊賀焼や大谷焼などが知られる。


ヨーロッパではマヨリカとそれから発展したファイアンス陶器、ウェッジウッドのクリームウェア、クイーンズウェア等硬質陶器、ハフナー陶器などで知られている。



磁器




(磁器)写真は、1873年の万博に、出品されたもの




瀬戸物57万枚を使用した天水皿(愛知万博瀬戸会場で展示)



磁器は半透光性で、吸水性が殆どない。また、陶磁器の中では最も硬く、軽く弾くと金属音がする。粘土質物や石英、長石→陶土を原料として1300℃程度で焼成するが、焼成温度や原料によって軟質磁器と硬質磁器に分けられる。また、石英の一部を酸化アルミニウムに置換し、強度を高めた磁器も開発されているが、こちらには透光性が殆どない。


日本の主な磁器として肥前磁器(伊万里焼)や九谷焼などがある。英語では、産地名をつけた場合は、陶磁器共通に (産地名)+ware と言うが、磁器自体を指す場合は、 porcelain という。単に china ということもある。



日本の陶磁器生産


畿内より東では瀬戸物(せともの)と呼ばれ、中国、四国以西では唐津物(からつもの)とも呼ばれる。焼き方や用途や生産地などから数多く分類される。
岐阜県土岐市が生産量日本一である。



日本の主な陶磁器産地




  • 東北地方


    • 北海道 - 流氷焼


    • 岩手県 - 小久慈焼


    • 宮城県 - 堤焼


    • 秋田県 - 楢岡焼


    • 山形県 - 平清水焼


    • 福島県 - 会津本郷焼、大堀相馬焼



  • 関東地方


    • 茨城県 - 笠間焼


    • 栃木県 - 益子焼、小砂焼



  • 中部地方


    • 新潟県 - 無名異焼


    • 長野県 - 高遠焼


    • 石川県 - 九谷焼、大樋焼、珠洲焼


    • 福井県 - 越前焼(六古窯の一つ)


    • 岐阜県 - 美濃焼(日本の陶磁器生産シェア50%以上)


    • 静岡県 - 志戸呂焼(遠州七窯の一つ)


    • 愛知県 - 瀬戸焼(六古窯の一つ。瀬戸物の名の元となった地名)、常滑焼(六古窯の一つ)



  • 近畿地方


    • 三重県 - 萬古焼、伊賀焼


    • 滋賀県 - 信楽焼(六古窯の一つ)、膳所焼(遠州七窯の一つ)、湖南焼(滋賀県)(大津市円満院の御庭窯、保全最後の窯として知られる)


    • 京都府 - 京焼、楽焼(京都府)、清水焼(京都府)、朝日焼(遠州七窯の一つ)、御室焼(京都府)


    • 兵庫県 - 丹波立杭焼(六古窯の一つ)、明石焼、出石焼


    • 奈良県 - 赤膚焼(遠州七窯の一つ)



  • 中国地方


    • 島根県 - 布志名焼


    • 岡山県 - 備前焼(六古窯の一つ)、虫明焼


    • 山口県 - 萩焼



  • 四国地方


    • 徳島県 - 大谷焼


    • 愛媛県 - 砥部焼 、 江山焼



  • 九州地方


    • 福岡県 - 上野焼(遠州七窯の一つ)、小石原焼、高取焼(遠州七窯の一つ)


    • 佐賀県 - 唐津焼(唐津物の名の元となった地名)、有田焼(伊万里、有田を中心に焼かれた肥前磁器の総称。古九谷様式、柿右衛門様式、鍋島などを含む)


    • 嬉野市 - 吉田焼


    • 長崎県 - 波佐見焼、三川内焼(平戸焼)


    • 熊本県 - 小代焼(小岱焼)


    • 大分県 - 小鹿田焼


    • 鹿児島県 - 薩摩焼


    • 沖縄県 - 壺屋焼





日本の主な陶磁器企業若しくはブランド




  • ナルミ - 名古屋市(本社)


  • ノリタケ - 名古屋市(本社)


  • 大倉陶園 - 横浜市(本社)


  • 三郷陶器 - 愛知県尾張旭市(本社)


  • ニッコー - 石川県白山市(本社)


  • たち吉 - 京都市(本社)


  • 香蘭社 - 佐賀県西松浦郡有田町(本社)


  • 深川製磁 - 佐賀県西松浦郡有田町(本社)


  • 白山陶器 - 長崎県東彼杵郡波佐見町(本社)

  • ブルーダニューブ


  • アイトー - 東京都品川区(本社)



アジア、ヨーロッパ、アメリカの主な陶磁器産地とブランド




陶磁器の公募展


  • 出石磁器トリエンナーレ


関連項目








  • 陶磁ネットワーク会議 - 2008年(平成20年)に発足した日本の陶磁専門公立博物館で構成される組織[3]

  • 陶芸

  • 陶芸家

  • 焼き物

  • 素焼き

  • 琺瑯

  • 貿易陶磁

  • セラミック顔料

  • 漆器

  • 三杉隆敏

  • 金継ぎ

  • コンニャク版

  • 粘土鉱物

  • 中国の陶磁器



脚注





  1. ^ 竹内順一 監修『やきもの 見方・見分け方百科』主婦と生活社、1996年。ISBN 439160597X、p.170


  2. ^ 矢部良明編『角川日本陶磁大辞典』(角川書店、2002)の「炻器」の項によるときわれています。


  3. ^ 陶磁ネットワーク発足 全国の6館連携-佐賀新聞ニュース/The Saga Shimbun 佐賀のニュース




外部リンク




  • 陶磁の歴史、中国陶磁の視点(大阪市立東洋陶磁美術館)


  • 日本のやきもの(公益社団法人日本セラミックス協会)









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