スダジイ













スダジイ

Castanopsis sieboldii2.jpg
スダジイ(2006年10月)


分類












































:

植物界 Plantae
階級なし
:

被子植物 Angiosperms
階級なし
:

真正双子葉類 Eudicots
階級なし
:

バラ類 Rosids


:

ブナ目 Fagales


:

ブナ科 Fagaceae


:

シイ属 Castanopsis


:

スダジイ C. sieboldii


学名

Castanopsis sieboldii
(Makino) Hatus. ex T.Yamaz. et Mashiba

和名
スダジイ、イタジイ、ナガジイ

スダジイ(学名Castanopsis sieboldii)とは、ブナ科シイ属の常緑広葉樹である(シノニムC. cuspidata f. lanceolataC. cuspidata subsp. sieboldiiC. cuspidata var. sieboldii)。別名はイタジイやナガジイ。普通、シイという場合には本種を指す。




目次






  • 1 特徴


  • 2 形態


  • 3 分布


    • 3.1 日本での分布




  • 4 近縁種と亜種


  • 5 利用


  • 6 保全状況評価


  • 7 脚注


  • 8 参考文献





特徴


暖地性照葉樹林を代表する樹種のひとつ。中陽樹〜陰樹であるため、適地では優占種として極相林の林冠部を形成する。また材が硬く、耐潮性が強く、丈夫であるため巨木になりやすい。日本では幹周が10mに達するにまで成長したものも確認されている。



形態


樹高15〜20m、直径1〜1.5mに達する高木。幹は黒褐色で、直立し、成長すると樹皮に縦の切れ目が入ることが特徴である。葉は厚くクチクラ層が発達する。長さは5〜10cm程度の広楕円形で互生し、先端は細く尖る。葉縁の上半分に鋭い鋸歯があるが、個体によっては鋸歯が鈍く目立たない場合や、鋸歯が認められない場合もある。また、葉の裏側が白色から赤銅色を呈するため見分けがつきやすい。成長すると樹冠がドーム型になり、スダジイ林を上からみると、まるでブロッコリーが集まっているように見える。開花期は初夏(5〜6月頃)。葉腋から長さ6〜10cm程度の穂状花序に黄色の小型の花を密につける。虫媒花。花が咲いた翌年の秋(10〜11月頃)に長さ1〜1.5cm程度の堅果(どんぐり)が熟す。熟すと殻斗(から)の先端は3裂し、中にある堅果を覗かせる。




分布




スダジイ林(千葉県香取郡東庄町)


比較的温暖な地域に生育し、日本では福島県および新潟県以西・以南から与那国島まで、日本国外では韓国の済州島に分布する。寒冷な気候には適さず、約2万年前のウルム氷期における本種(暖地性照葉樹林)の分布は九州地方南部が北限となった[1]。以後、間氷期となり気候の温暖化に伴って分布を広げ、現在に至った。



日本での分布


本種の分布の中心は温帯から亜熱帯であり、北限は最寒月の平均気温が2℃となる等高線とほぼ一致する[2]。緯度における北限は佐渡島、南限は波照間島である。特に、奄美群島以南に生育する集団を亜種オキナワジイ (ssp. lutchuensis) と分類することがあり(後述の近縁種と亜種)、この場合基亜種スダジイ (ssp. sieboldii) の南限はトカラ列島である[3][4][5]



北限付近の各群落

本種は温暖多湿な環境を好むため、冬季に冷涼な地域では個体数が少なく、群落を形成することが少ないことから、新潟県や福島県、栃木県など北限周辺の群落は、各県のレッドリストおよび天然記念物に指定されることが多い(後述の保全状況評価)。
  • 新潟県の各群落


佐渡島は、他の生育地と比較して高緯度であるが、対馬海流の影響で比較的温暖なため本種の巨木が多い。その中でも御島石部神社のシイ樹叢は、本種の純林として珍しく、かつ日本海沿岸の本種樹叢の北限であり、県の天然記念物に指定されている[6]

  • 福島県の各群落


福島県沿岸部(浜通り)は太平洋岸における本種の北限域である。原町市・初発神社のスダジイ群落は県の天然記念物に指定されている[7]

  • 栃木県の各群落


栃木県では、唐沢山のスダジイ群落河井八幡宮のスダジイ群落高館山のスダジイ群落綱神社のスダジイ群落及び太平山のスダジイ群落が栃木県版レッドリストに指定されている[8]




南限付近の各群落

本種の南限である沖縄県の沖縄島北部や西表島などの森林の優占種として林冠部を形成する。国頭村与那にある琉球大学の演習林における天然林での毎木調査結果では、イタジイの本数は約2300個体/ha(個体数の割合は32%)で最も多い[9]。なお、沖縄県では本種のことをイタジイと呼ぶことが一般的である[10]



近縁種と亜種


同属のツブラジイ(コジイ、C. cuspidata)に比べてスダジイの方が細長い堅果(ドングリ)をつけること、樹皮に縦割れを生じることなどいくつかの点で区別されるが、判断の難しい場合もある。スダジイの方が北まで分布し、コジイは関東以南に分布するので、関東以北では単に「シイ」と呼ぶ場合は本種を指す場合が多い。より南部では海岸部にスダジイが、内陸部にコジイが分布する。


奄美大島以南のに分布する集団を亜種オキナワジイ (ssp. lutchuensis) として区別する場合がある。基亜種スダジイとの差異は、スダジイが堅果(どんぐり)の殻斗(から)の先端が離れているのに対し、オキナワジイが殻斗の先端は完全に合着する点である[3][4]



利用


公園樹、街路樹、庭木などとして植栽される。果実はアク抜き不要で食用となる。木材は木炭やシイタケ栽培のホダ木になる。


また、タンニンに富む樹皮を黄八丈の黒色部の染料に用いる。




保全状況評価



  • 国指定植物天然記念物


    • 東京都大島町 - シイノキ山のシイノキ群叢


    • 石川県金沢市 - 堂形のシイノキ


    • 愛知県西尾市 - 神明社の大シイ


    • 鳥取県東伯郡琴浦町 - 伯耆の大シイ



  • 地方公共団体レッドデータブック(レッドリスト)


    • 新潟県 - 地域個体群


    • 山梨県 - 絶滅危惧II類


    • 栃木県 - 5つのスダジイ群落が植物群落(単一群落)に選定されており、やや不良〜壊滅(極悪)に評価されている。


    • 鹿児島県 - 分布重要(スダジイ及びオキナワジイ)




脚注




  1. ^ 総説:日韓海峡域の植物と植生の地理学長崎大学教養部紀要 自然科学篇 38(1), pp.25-51; 1997


  2. ^ 沼田ら (1996) 「岡山県の極相林」より再引用

  3. ^ ab島袋敬一編著 『琉球列島維管束植物集覧【改訂版】』 九州大学出版会、1997年、p.120、ISBN 4-87378-522-7

  4. ^ ab大野照好監修・片野田逸郎著 『琉球弧・野山の花 from AMAMI』 株式会社南方新社、1999年、p.157、ISBN 4-931376-21-5


  5. ^ ただし、「鹿児島県環境生活部環境保護課編 『鹿児島県の絶滅のおそれのある野生動植物-鹿児島県レッドデータブック植物編-』 財団法人鹿児島県環境技術協会、2003年、p.491、ISBN 4-9901588-1-4」では、オキナワジイの北限が奄美群島であるとしながらも、種子島からトカラ列島の集団はスダジイとオキナワジイの中間の形質をもっているとして、その集団を便宜的にオキナワジイに含めている。


  6. ^ 新潟県指定 天然記念物


  7. ^ はらまちの文化財 1南相馬市指定文化財一覧


  8. ^ レッドデータ選定結果一覧表(栃木県版レッドリスト) 植物群落(単一群落)レッドデータブックとちぎ


  9. ^ 平田永二 『与那演習林の天然生林の林分構造』 琉球大学農学部附属演習林創設40周年記念誌、1994年、pp.54-65.


  10. ^ 初島住彦・天野鉄夫 『増補訂正 琉球植物目録』や島袋敬一編著 『琉球列島維管束植物集覧【改訂版】』 などの目録の他、沖縄県での論文等ではイタジイが一般的に使われている。



参考文献



  • 大野照好監修・片野田逸郎著 『琉球弧・野山の花 from AMAMI』 株式会社南方新社、1999年。

  • 川原勝征著 『南九州・里の植物』 株式会社南方新社、2001年。

  • 多和田真淳監修・池原直樹著 『沖縄植物野外活用図鑑 第6巻 山地の植物』 新星図書出版、1979年。

  • 林弥栄編 『山溪カラー名鑑 日本の樹木』 株式会社山と溪谷社、1985年、ISBN 4-635-09017-5。












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