ソーラーアナログ




ソーラーアナログは、太陽に似た恒星の分類である。太陽との類似性が高いものをソーラーツイン、比較的低いものをソーラータイプと呼ぶ。


惑星の居住可能性で言及されている適切な恒星系の基準のひとつである。




目次






  • 1 太陽との類似性


  • 2 ソーラータイプ


  • 3 ソーラーアナログ


  • 4 ソーラーツイン


  • 5 潜在的な居住可能性


  • 6 参考文献


    • 6.1 深く知りたい人向け




  • 7 関連項目





太陽との類似性


太陽との類似性による3つのカテゴリの定義は天文観測技術の進歩を反映したものである。まず、ソーラータイプの定義が可能となった。ついで計測技術の精度が向上し表面温度等のディティールを高い精度で観測可能になったことでソーラーアナログを定義できるようになり、さらに技術の進歩によって太陽との一致性が非常に高いカテゴリとしてソーラーツインが定義されるようになった。


太陽との類似性は、いくつかの物理量(例えば色指数から読み取れる表面温度)を、唯一表面温度がはっきりしている恒星である太陽と比較することで判定できる。
太陽と似ていない恒星についてはクロスチェックが行えない[1]



ソーラータイプ


広い意味で太陽に似ている恒星である。これらは 色指数 (B-V) が0.48から0.80の間にある主系列星である。太陽の色指数 (B-V) は0.65である。


スペクトル型を用いて分類する場合にはF8VからK2Vにある主系列星とする。この場合は色指数 (B-V) は0.5から1.00の範囲となる。


ソーラータイプの恒星は自転速度と彩層活動(カルシウムのH線、K線など)、そしてコロナ活動(X線放射など)に高い相関がある。この相関から、主系列期にあるソーラータイプ恒星の、磁気減速による自転速度低下がその年齢を示す。Mamajek & Hillenbrand (2008)[2] は太陽から16パーセク内に存在する108のソーラータイプ(F8V-K2V)主系列恒星について彩層活動に基づいて(カルシウムのHおよびK線計測により)年齢推定を行った。


下の表は今日の観測に基づく、50光年以内に存在するソーラータイプ恒星のうちソーラーアナログの基準をほぼ満たすもののサンプルである。













































































































































ソーラータイプ恒星のサンプル
名称
座標[3]
距離[3]
(光年)

スペクトル分類[3]
光球面温度
(K)
金属量
(dex)
惑星数
Notes

赤経

赤緯

くじら座τ星
01h 44m 04.1s
−15° 56′ 15″
11.9
G8V
5,344
–0.52
5
[4]

エリダヌス座ο2星 A
04h 15m 16.3s
−07° 39′ 10″
16.5
K1V
5,126
–0.31
0
[4]

くじゃく座δ星
20h 08m 43.6s
−66° 10′ 55″
19.9
G8IV
5,604
+0.33
0
[5]

HR 7722 = グリーゼ785
20h 15m 17.4s
−27° 01′ 59″
28.8
K0V
5,166
–0.04
2
[5]

グリーゼ 86 A
02h 10m 25.9s
−50° 49′ 25″
35.2
K1V
5,163
−0.24
1
[4]

うお座54番星
00h 39m 21.8s
+21° 15′ 02″
36.1
K0V
5,129
+0.19
1
[6]

HD 14412 = グリーゼ95
02h 18m 58.5s
−25° 56′ 45″
41.3
G5V
5,432
−0.46
0
[6]

HD 172051= グリーゼ722
18h 38m 53.4s
−21° 03′ 07″
42.7
G5V
5,610
−0.32
0
[6]

ヘルクレス座72番星
17h 20m 39.6s
+32° 28′ 04″
46.9
G0V
5,662
−0.37
0
[6]

HD 196761
20h 40m 11.8s
−23° 46′ 26″
46.9
G8V
5,415
-0.31
0
[5]

おおかみ座ν2
15h 21m 48.1s
−48° 19′ 03″
47.5
G4V
5,664
−0.34
3
[5]


ソーラーアナログ


光学観測上、以下の条件を満たす太陽に似ている恒星である。


太陽との表面温度差500K以内(およそ5,200Kから6,300K)。
金属量が太陽の50%以上200%以下。太陽系形成時と類似した原始惑星系円盤が形成されるための条件。
公転周期10日程度、あるいはそれ以下の近接伴星が存在しないこと。このような伴星は恒星の活動に影響を与える。
50光年以内のソーラーアナログで、ソーラーツインの条件に当てはまらないもののリストを太陽から近い順で、以下に示す。






























































































































































































































































































































































































名称
座標[3]
距離[3]
(光年)

スペクトル分類[3]
光球面温度
(K)
金属量
(dex)
惑星数
Notes

赤経

赤緯

ケンタウルス座α星 A
14h 39m 36.5s
−60° 50′ 02″
4.37
G2V
5,847
+0.24
0
[7]

ケンタウルス座α星 B
14h 39m 35.0s
−60° 50′ 14″
4.37
K1V
5,316
+0.25
1
[7]

へびつかい座70番星 A
18h 05m 27.3s
+02° 30′ 00″
16.6
K0V
5,314
–0.02
0
[8]

りゅう座σ星
19h 32m 21.6s
+69° 39′ 40″
18.8
K0V
5,297
–0.20
0
[9]

カシオペヤ座η星 A
00h 49m 06.3s
+57° 48′ 55″
19.4
G0V
5,941
–0.17
0
[10]

うお座107番星
01h 42m 29.8s
+20° 16′ 07″
24.4
K1V
5,242
–0.04
0

[11][6]

りょうけん座β星
12h 33m 44.5s
+41° 21′ 27″
27.4
G0V
5,821
−0.30
0
[6]

おとめ座61番星
13h 18m 24.3s
−18° 18′ 40″
27.8
G5V
5,558
–0.02
2 +1?
[5]

きょしちょう座ζ星
00h 20m 04.3s
–64° 52′ 29″
28.0
F9.5V
5,956
–0.14
0
[4]

オリオン座χ1星 A
05h 54m 23.0s
+20° 16′ 34″
28.3
G0V
5,902
–0.16
0
[6]

かみのけ座β星
13h 11m 52.4s
+27° 52′ 41″
29.8
G0V
5,970
–0.06
0
[6]

HR 4523 A= グリーゼ442 A
11h 46m 31.1s
–40° 30′ 01″
30.1
G5V
5,629
–0.29
1
[5]

おおぐま座61番星
11h 41m 03.0s
+34° 12′ 06″
31.1
G8V
5,483
–0.12
0
[6]

HR 4458 A = グリーゼ432 A
11h 34m 29.5s
–32° 49′ 53″
31.1
K0V
5,629
–0.29
0
[5]

HR 511 = グリーゼ75
01h 47m 44.8s
+63° 51′ 09″
32.8
K0V
5,333
+0.05
0
[6]

テーブルさん座α星
06h 10m 14.5s
–74° 45′ 11″
33.1
G5V
5,594
+0.10
0
[4]

レチクル座ζ1
03h 17m 46.2s
−62° 34′ 31″
39.5
G3-5V
5,733
−0.22
0
[4]

レチクル座ζ2
03h 18m 12.8s
−62° 30′ 23″
39.5
G2V
5,843
−0.23
0
[4]

かに座55番星 A = かに座ρ1星 A
08h 52m 35.81s
+28° 19′ 51″
40.3
G8V
5,235
+0.25
5
[10]

HD 69830 = グリーゼ302
08h 18m 23.9s
−12° 37′ 56″
40.6
K0V
5,410
−0.03
3
[4]

HD 10307 = グリーゼ67
01h 41m 47.1s
+42° 36′ 48″
41.2
G1.5V
5,848
−0.05
0
[6]

HD 147513 = Woolley 9559 A
16h 24m 01.3s
−39° 11′ 35″
42.0
G1V
5,858
+0.03
1
[5]

エリダヌス座58番星
04h 47m 36.3s
−16° 56′ 04″
43.3
G3V
5,868
+0.02
0
[4]

アンドロメダ座υ星 A
01h 36m 47.8s
+41° 24′ 20″
44.0
F8V
6,212
+0.13
4
[4]

HD 211415 A = グリーゼ853 A
22h 18m 15.6s
–53° 37′ 37″
44.4
G1-3V
5,890
−0.17
0
[4]

おおぐま座47番星
10h 59m 28.0s
+40° 25′ 49″
45.9
G1V
5,954
+0.06
3
[4]

ろ座α星 A
03h 12m 04.3s
−28° 59′ 21″
46.0
F8IV
6,275
−0.19
0
[4]

へび座ψ星 A
15h 44m 01.8s
+02° 30′ 55″
47.9
G5V
5,636
−0.03
0
[6]

HD 84117
09h 42m 14.4s
–23° 54′ 56″
48.5
F8V
6,167
–0.03
0
[4]

HD 4391
00h 45m 45.6s
–47° 33′ 07″
48.6
G3V
5,878
–0.03
0
[4]

こじし座20番星
10h 01m 00.7s
+31° 55′ 25″
49.1
G3 V
5,741
+0.20
0
[6]

ほうおう座ν星
01h 15m 11.1s
–45° 31′ 54″
49.3
F8V
6,140
+0.18
0
[4]

ペガスス座51番星
22h 57m 28.0s
+20° 46′ 08″
50.9
G2.5IVa
5,804
+0.20
1
[4]


ソーラーツイン


下記の条件を満たす、よりいっそう太陽に似ている恒星である。


太陽との表面温度差50K以内(5,720K以上5,830K以下)。
金属量が太陽の89-112%(精度± 0.05)。太陽系形成時と非常に類似した原始惑星系円盤が形成されるための条件。
伴星を持たないこと(太陽が単独恒星であるため)。
太陽との年齢差10億歳以内(35億歳から56億歳)。


ソーラーツインのリストを以下に示す。太陽は比較のために記した。










































































































































名称
座標[3]
距離[3]
(光年)

スペクトル分類[3]
光球面温度
(K)
金属量
(dex)
年齢
(10億年)
惑星数
Notes

赤経

赤緯

太陽


0.00
G2V
5,778
+0.00
4.6
8
[12]

さそり座18番星
16h 15m 37.3s
–08° 22′ 06″
45.1
G2Va
5,835
+0.04
3.4
0
[13]

HD 44594
06h 20m 06.1s
−48° 44′ 29″
84
G3V
5,840
+0.15
4.1
0
[14]

HD 138573
15h 32m 43.7s
+10° 58′ 06″
101
G5IV-V
5,710
–0.03
7.8
0
[15]

HD 142093
15h 52m 00.6s
+15° 14′ 09″
103
G2V
5,841
–0.15
5.0
0
[15]

HD 98618
11h 21m 29.1s
+58° 29′ 04″
126
G5V
5,851
+0.03
4.7
0
[13]

HD 143436
16h 00m 18.8s
+00° 08′ 13″
141
G0
5,768
+0.00
3.8
0
[15]

HD 129357
14h 41m 22.4s
+29° 03′ 32″
154
G2V
5,749
–0.02
8.2
0
[15]

HD 133600
15h 05m 13.2s
+06° 17′ 24″
171
G0
5,808
+0.02
6.3
0
[13]

HD 101364
11h 40m 28.5s
+69° 00′ 31″
217
G5V
5,783
+0.01
4.7
0

[13][16]



  • HD 44594 = HIP 30104


  • HD 195034 = HIP 100963



潜在的な居住可能性


ソーラーツインには「居住可能な星」と言う意味もある。光度変化、質量、年齢、金属量、近接伴星の有無においてこれらの特性を持つ恒星は地球に似た惑星を持つ可能性が信じられている
[17]



  • 30億歳以上であること

  • 主系列星であること

  • 変光星でないこと

  • 地球型惑星が存在する可能性があること

  • 動的に安定なハビタブルゾーンがあること


30億歳以上と言う条件は、高温限度であるF型主系列星の質量上限によって定まる。これらの恒星は主系列の末期には太陽より2.5等級上、8.55倍の輝度となる。


輝度変化は1%以内であることが求められているが、有効データの限界により実際的な限度は3%以内となっている。
楕円軌道を持つ伴星による、ハビタブルゾーンでの輻射量変動についても関心がもたれている。[17]


3つ以上の複数の恒星を持つ星系においては地球型惑星は長期安定軌道を持たない。ハビタブルゾーンに安定軌道があるのは、広く離れた連星の片方を巡る場合と、近接連星を巡る周連星軌道の場合である。
エキセントリック・プラネットはハビタブルゾーンの惑星軌道を破壊する。


地球型惑星が形成されるためには金属量81%以上が必要となる。金属量が高いとホット・ジュピターが形成されるが、ホット・ジュピターが恒星に落下した後でも地球型惑星は形成されうること、またハビタブルゾーンにガス惑星が存在する場合には地球型衛星が存在しうるために、絶対的な上限はない。



参考文献





  1. ^ D. R. Soderblom; J. R. King (1998年). “Solar-Type Stars: Basic Information on Their Classification and Characterization”. Solar Analogs : Characteristics and Optimum Candidates. http://www.lowell.edu/users/jch/workshop/drs/drs-p1.html 2008年2月26日閲覧。. 


  2. ^ E. E. Mamajek; L. A. Hillenbrand (2008年). “Improved Age Estimation for Solar-Type Dwarfs Using Activity-Rotation Diagnostics”. Astrophysical Journal 687: 1264. doi:10.1086/591785. http://adsabs.harvard.edu/abs/2008ApJ...687.1264M 2008年12月28日閲覧。. 

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  5. ^ abcdefghSousa, S. G.; et al. (2008年8月). “Spectroscopic parameters for 451 stars in the HARPS GTO planet search program. Stellar [Fe/H] and the frequency of exo-Neptunes”. Astronomy and Astrophysics 487 (1): 373–381. Bibcode 2008A&A...487..373S. doi:10.1051/0004-6361:200809698.  See VizieR catalogue J/A+A/487/373.

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  15. ^ abcdKing, Jeremy R.; Boesgaard, Ann M.; Schuler, Simon C. (2005年11月). “Keck HIRES Spectroscopy of Four Candidate Solar Twins”. The Astronomical Journal 130: 2318–2325. Bibcode 2005AJ....130.2318K. doi:10.1086/452640. 


  16. ^ Vázquez, M.; Pallé, E.; Rodríguez, P. Montañés (2010). “Is Our Environment Special?”. The Earth as a Distant Planet: A Rosetta Stone for the Search of Earth-Like Worlds. Astronomy and Astrophysics Library. Springer New York. pp. 391–418. doi:10.1007/978-1-4419-1684-6. ISBN 978-1-4419-1683-9.  See table 9.1.

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深く知りたい人向け




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関連項目



  • 惑星の居住可能性

  • 宇宙移民

  • Terrestrial Planet Finder

  • G型主系列星

  • K型主系列星

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