センブリ

















センブリ

センブリ(2013年10月12日、伊吹山)
センブリ(2013年10月・伊吹山)


分類







































:

植物界 Plantae


:

被子植物門 Magnoliophyta


:

双子葉植物綱 Magnoliopsida


:

リンドウ目 Gentianales


:

リンドウ科 Gentianaceae


:

センブリ属 Swertia


:

センブリ S. japonica


学名

Swertia japonica (Schult.) Makino[1][2]

シノニム


  • Ophelia japonica (Schult.) Griseb.[1]


和名
センブリ(千振)

変種

  • ヒロハセンブリ S. japonica (Schult.) Makino var. latifolia Konta[3]


センブリ(千振、学名:Swertia japonica (Schult.) Makino[2])は、リンドウ科センブリ属の二年草[1]。薬草として利用され、生薬名及び別名[4]当薬(とうやく)という。




目次






  • 1 分布


  • 2 特徴


  • 3 利用


  • 4 センブリの生産


  • 5 「センブリ」にまつわる話


  • 6 種の保全状況評価


  • 7 脚注


    • 7.1 注釈


    • 7.2 出典




  • 8 参考文献


  • 9 関連項目


  • 10 外部リンク





分布


中国、朝鮮半島、日本に分布する[4]


日本では、北海道西南部、本州、四国、九州にかけて広く分布し、日当たりの良く、やや湿り気のある山野の草地に生育する[1][4][5]。田中澄江は『花の百名山』の著書で、高鈴山を代表する花として紹介し[注釈 1][6]、『新・花の百名山』の著書で熊野路を代表する花として紹介した[7]



特徴


草丈は普通5-30 cm。茎は薄紫色を帯び[1]、太さは1-2 mmで断面は四角く、直立し根元から数本に分かれて生える。1-3 cmほどの細長い線形の葉が対生する[5]。発芽した芽がロゼット状の根生葉となりそのまま越冬し、翌年[5]に多数の花を咲かせる[4]

花期は8-11月で、白い花冠は深く5裂し、縦に紫色の線があり[5]、基部に蜜腺溝がある[1]。蜜腺の周囲には細い毛が生える[1]。5枚の萼片は、線形で尖り[5]、長さは5-11 mm[1]。朔果は花冠よし少し長く、種子はやや円い[1]。根は黄色を帯びる[5]

花、葉、茎、根はすべて苦い[4]

葉の幅が広い変種のヒロハセンブリ(学名:Swertia japonica (Schult.) Makino var. latifolia Konta)が東京都の八丈島で確認されている[3]。花冠が薄紫色の近縁種のムラサキセンブリ(紫千振、学名:Swertia pseudochinensis H.Hara[8])がある[5]




利用





































センブリ
生薬・ハーブ
効能
健胃薬
原料
センブリ
成分
KEGG参照
臨床データ
法的規制

  • 成分本質 (原材料) が専ら医薬品


投与方法
経口(粉末、湯液)
識別
KEGG
E00030 D04385
別名
トウヤク

1856年に飯沼慾斎は『草木図説』でセンブリについて、「邦人採テ腹痛ヲ治シ、又ヨク虫ヲ殺ス」と書いている。


薬には開花期の全草が用いられる[4]。乾燥させ、煎じてまたは粉末にして飲む。薬効は、胃腸虚弱、下痢、腹痛、発毛[9][10]など。マスカラや眉墨などの化粧品に配合されている[9]。日本薬局方に収載されている苦味チンキやセンブリ末の材料のひとつである[1]。ゲンノショウコ、ドクダミと共に日本の三大民間薬の一つとされていて[11]、最も身近な民間薬の一つである[9]


センブリの名前の由来は「出してもまだ苦い」ということからつけられたとされている[5]。その由来の通り非常に苦味が強く、最も苦い生薬(ハーブ)といわれる。苦味成分はスウェルチアマリン (swertiamarin)、スエロサイド (sweroside)、アマロゲンチン (amarogentin)、アマロスエリン (amaroswerin)、ゲンチオピクサロイド (gentiopicroside)、などの苦味配糖体(くみはいとうたい)である[9]。中でもアマロスエリンは天然物で屈指の苦い物質である。


ドクダミやゲンノショウコと共に有名な薬草である。生薬名「当薬」も和語である。日本固有の生薬であり、漢方薬には用いられない。観光地のおみやげ店などで、乾燥したものが売られていることを見かけるが、乾燥品は医薬品と見なされるので、医薬品医療機器等法の許可なく販売すると同法違反になる。センブリを使ったセンブリ茶は非常に苦い。


山野草として苗が市販されている。



センブリの生産


医薬品などに利用されているセンブリは全量日本国内で生産されている。従来は野生の株の採集のみを行っていたが、昭和50年台初頭から長野県で本格的な生産が始まり、その当時の価格は1 kgあたり30,000円ほどであった[9]。1973年(昭和48年)から長野県の野菜花き試験場佐久支場で、発芽技術などのセンブリの栽培技術研究が開始された[12][13]。1981-2002年の国内総生産は年間30 t程度が最大で、長野県と高知県の農家で契約栽培されている[14]。2007年には、長野県ではセンブリさび病[15](学名は Uredo sp. だが未確定[16])などにより生産量が大幅に減少した[14]



「センブリ」にまつわる話


当薬を胃薬に用いるようになったのは、蘭学に影響しているといわれている。シーボルトが、近江路の製薬所で俵に入ったセンブリを「ゲンチアナ」と間違えたという有名な逸話がある。ヨーロッパでは、ゲンチアナのような苦い薬を、胃腸薬に使用していた。


しかし、上記の苦味配糖体以外には、特に薬効成分は含まれておらず、苦味が舌を刺激して、食欲増進などに効果があると言われるほかには、特に胃の疾患には効果がない。それでも胃の万能薬としてもてはやされているのには、「苦ければ胃によく、漢方薬である」という誤解が氾濫しているからだと考えられる[要出典]


しかし近年、センブリのもつ胃腸への作用は、センブリの成分であるスウェルチアマリンがドーパミンD(2)レセプターを阻害することで起こるということが研究によりわかっている。http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21571047
また、センブリのメタノール抽出物は抗コリン作用で胃腸に働きかける。その効果を詳細に調査するためにカラムクロマトグラフィーで分画し、その成分を調べたところ30%のスウェルチアマリンが含まれていることが報告されている。http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1943170



種の保全状況評価


日本の以下の都道府県で、レッドリストの指定を受けている[17]。多数の都道府県で、草地の開発[18]、森林開発、生育環境の自然遷移、園芸目的の採集、薬草の採集[12][19]などにより減少傾向にある[20][21]。阿蘇くじゅう国立公園、瀬戸内海国立公園、耶馬日田英彦山国定公園、祖母傾国定公園などの指定植物であり、その採集は禁止されている[19]




  • 絶滅 (EX) - 東京都区部(北多摩地区は絶滅危惧IA類、南多摩地区は絶滅危惧IB類、西多摩地区と伊豆諸島は絶滅危惧II類)[22]

  • 絶滅危惧II類 (VU) - 埼玉県[23]

  • 準絶滅危惧 (NT) - 石川県[20]、山梨県、香川県[21]、大分県[19]、宮崎県
    • 一般保護生物 (D) - 千葉県[注釈 2][24]


  • その他

    • 要注目種 - 京都府[18]

    • 分布重要 - 鹿児島県





脚注


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注釈





  1. ^ 田中澄江の『花の百名山』は、1980年(昭和55年)に第32回読売文学賞(随筆・紀行賞)を受賞した作品。


  2. ^ 千葉県のレッドリストのカテゴリーの一般保護生物 (D) は、環境省の準絶滅危惧 (NT) 相当。




出典




  1. ^ abcdefghij佐竹 (1981)、35頁

  2. ^ ab米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Swertia japonica (Schult.) Makino”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2013年10月19日閲覧。

  3. ^ ab近田 (2005)、63-65頁

  4. ^ abcdef高村 (2005)、239頁

  5. ^ abcdefgh林 (2009)、254頁


  6. ^ 田中 (1997)、33-36頁


  7. ^ 田中 (1995)、317-319頁


  8. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Swertia pseudochinensis H.Hara”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2013年10月19日閲覧。

  9. ^ abcde兼子 (2013)、8頁


  10. ^ “センブリ”. 武田薬品工業. 2013年10月19日閲覧。


  11. ^ “シーボルトによる日本民間薬の調査”. 長崎大学薬学部. 2013年10月19日閲覧。

  12. ^ ab兼子 (2013)、9頁


  13. ^ 宮沢 (1975)、153頁

  14. ^ ab兼子 (2013)、10-11頁


  15. ^ 藤永 (1999)、411頁


  16. ^ センブリさび病


  17. ^ “日本のレッドデータ検索システム「マネキグサ」”. エンビジョン環境保全事務局. 2013年10月19日閲覧。 - 「都道府県指定状況を一覧表で表示」をクリックすると、出典元の各都道府県のレッドデータブックのカテゴリー名が一覧表示される。

  18. ^ ab“京都府レッドデータブック・センブリ”. 京都府 (2002年). 2013年10月19日閲覧。

  19. ^ abc“レッドデータブックおおいた・センブリ”. 大分県 (2011年). 2013年10月19日閲覧。

  20. ^ abいしかわレッドデータブック植物編2010・センブリ (PDF)”. 石川県 (2010年). 2013年10月19日閲覧。

  21. ^ ab“香川県レッドデータブック・センブリ”. 香川県 (2004年3月). 2013年10月19日閲覧。


  22. ^ 東京都の保護上重要な野生生物種(本土部)2010年版 (PDF)”. 東京都. pp. 32 (2010年). 2013年10月19日閲覧。


  23. ^ 埼玉県レッドデータブック2011植物編 (PDF)”. 埼玉県. pp. 142 (2011年). 2013年10月19日閲覧。


  24. ^ 千葉県レッドデータブック-植物・菌類編(2009年改訂版) (PDF)”. 千葉県. pp. 324 (2009年). 2013年10月19日閲覧。




参考文献



  • 兼子まや「薬用植物センブリ・ミシマサイコ 生産の効率化に関する研究 (PDF) 」、千葉大学、2013年1月

  • 高村忠彦(監修) 『季節の野草・山草図鑑―色・大きさ・開花順で引ける』 日本文芸社〈実用BEST BOOKS〉、2005年5月。ISBN 4537203676。

  • 田中澄江 『新・花の百名山』 文藝春秋、1995年6月。ISBN 4-16-731304-9。

  • 田中澄江 『花の百名山』 文春文庫、1997年6月。ISBN 4-16-352790-7。


  • 近田 文弘 (2005年6月22日). “東京都八丈島で見出されたセンブリの新変種ヒロハセンブリ” (英語) (PDF). Bulletin of the National Science Museum. Series B, Botany (国立科学博物館) 31 (2). NAID 110004665680. http://ci.nii.ac.jp/els/110004665680.pdf?id=ART0007395244&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1382240062&cp=. 

  • 藤永真史、佐藤豊三、柳沢一馬、荒井好郎「Uredo sp. によるセンブリさび病(新称) (PDF) 」 、『日本植物病理學會報』第65巻第3号、日本植物病理学会、1999年6月25日、 NAID 110002733518。

  • 『日本の野生植物 草本III合弁花類』 佐竹義輔、大井次三郎、北村四郎、亘理俊次、冨成忠夫、平凡社、1981年10月。ISBN 4582535038。

  • 林弥栄 『日本の野草』 山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、2009年10月。ISBN 9784635090421。

  • 宮沢洋一、萩原博司「センブリの栽培研究(第1報) : 発芽について (PDF) 」 、『生薬学雑誌』第29巻第2号、日本生薬学会、1975年12月20日、 NAID 110008907765。



関連項目











  • センブリ属

  • 民間薬

  • 生薬一覧





外部リンク




  • 伝統医薬データベース・センブリ 富山大学和漢医薬学総合研究所


  • センブリ 公益財団法人東京生薬協会


  • 薬草たちの横顔・センブリ(リンドウ科) Swertia japonica Makino 揖斐川町


  • せんぶりSwertia japonica MAKINOより得られる人工塩基について 藥學雜誌 Journal of the Pharmaceutical Society of Japan. Vol.86, No.12 (19661225) pp. 1202-1204


  • センブリ トウヤクの標本(鹿児島県上甑島里村で1973年11月1日に採集)(千葉大学附属図書館)




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