推理小説








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推理小説(すいりしょうせつ)は、小説のジャンルのひとつ。主として殺人・盗難・誘拐・詐欺など、なんらかの事件・犯罪の発生と、その合理的な解決へ向けての経過を描くもの。小説以外にも漫画や映画、ゲームなどさまざまなメディアに展開されるミステリというジャンルの元になった。




目次






  • 1 概要


  • 2 誕生と発展


    • 2.1 推理小説誕生の前提となる社会状況


    • 2.2 推理小説の発展とメディアの越境




  • 3 推理小説の歴史


    • 3.1 ポー以前のミステリ要素を含む文学


      • 3.1.1 旧約・新約聖書


      • 3.1.2 古典文学


      • 3.1.3 アラビアン・ナイト


      • 3.1.4 ポー以前の西洋文学




    • 3.2 欧米


      • 3.2.1 推理小説の誕生


      • 3.2.2 名探偵登場


      • 3.2.3 ホームズとライヴァルたち


      • 3.2.4 怪盗もの、犯罪小説、倒叙など


      • 3.2.5 本格長編の黄金時代


      • 3.2.6 ポスト黄金時代と新本格派


      • 3.2.7 変格もの、スパイ小説とサスペンス


      • 3.2.8 他ジャンルの作家によるミステリ


      • 3.2.9 ハードボイルドの出現


      • 3.2.10 警察小説と業界ミステリ


      • 3.2.11 パロディ・パスティーシュとユーモアミステリ


      • 3.2.12 女性と黒人の探偵たち


      • 3.2.13 様々な名探偵


      • 3.2.14 様々な趣向


      • 3.2.15 二世代・三世代の作家と探偵




    • 3.3 ロシア及び東欧・イスラエル


    • 3.4 中南米・オセアニア


    • 3.5 北・東アジア


      • 3.5.1 中国


      • 3.5.2 朝鮮・韓国


      • 3.5.3 台湾(中華民国)




    • 3.6 日本


      • 3.6.1 捕物帳と探偵小説の黎明期


      • 3.6.2 江戸川乱歩の功績


      • 3.6.3 三大奇書と周辺


      • 3.6.4 戦前の作家たち


      • 3.6.5 本格派の活躍


      • 3.6.6 女流作家の進出


      • 3.6.7 多様化するミステリ


      • 3.6.8 日本の新本格派


      • 3.6.9 ジュヴナイル・ライトノベルとメディアミックス


      • 3.6.10 東京以外の舞台と探偵






  • 4 推理小説の分類


    • 4.1 サブジャンル


      • 4.1.1 本格ミステリ


      • 4.1.2 ハードボイルド


      • 4.1.3 ソフトボイルド


      • 4.1.4 コージー・ミステリ


      • 4.1.5 犯罪心理小説


      • 4.1.6 法廷推理小説


      • 4.1.7 警察小説


      • 4.1.8 時代ミステリ


      • 4.1.9 歴史ミステリ


      • 4.1.10 ホラー


      • 4.1.11 スパイ小説


      • 4.1.12 奇妙な味




    • 4.2 日本独自のサブジャンル


      • 4.2.1 社会派


      • 4.2.2 新本格ミステリ


      • 4.2.3 叙述トリック


      • 4.2.4 メタミステリ


      • 4.2.5 日常の謎


      • 4.2.6 青春ミステリ


      • 4.2.7 トラベル・ミステリ


      • 4.2.8 バカミス


      • 4.2.9 イヤミス






  • 5 推理小説の用語


    • 5.1 探偵役


    • 5.2 ワトスン役


    • 5.3 フーダニット、ハウダニット、ホワイダニット


    • 5.4 クローズド・サークル


    • 5.5 パズル・ミステリ


    • 5.6 倒叙(とうじょ)


    • 5.7 安楽椅子探偵小説


    • 5.8 多重解決


    • 5.9 ファンタジー/SF


    • 5.10 サスペンス


    • 5.11 スリラー




  • 6 「推理小説」というジャンル名


  • 7 推理作家


  • 8 典型的な道具立て


  • 9 推理小説の賞


    • 9.1 日本国内


    • 9.2 海外




  • 10 推理小説の番付を行っている本・雑誌


  • 11 推理小説を主に扱っているレーベル


    • 11.1 四六判


    • 11.2 ノベルズ


    • 11.3 文庫判




  • 12 脚注


  • 13 参考文献


  • 14 関連項目





概要


「推理小説」という名称は、木々高太郎が雄鶏社にて科学小説を含む広義のミステリ叢書を監修した際、江戸川乱歩や水谷準に提案されて命名したものと伝えられる[1]。このほか探偵小説(たんていしょうせつ)、ミステリー小説(ミステリーしょうせつ)、サスペンス小説(サスペンスしょうせつ)という呼び名もあるが、前者の名称は「偵」の字が当用漢字制限を受けたために用いられなくなった[1]。犯罪小説と重なる部分もあるが、完全に同義という訳ではない。



誕生と発展



推理小説誕生の前提となる社会状況


世界初の推理小説は、一般的にはエドガー・アラン・ポーの短編小説「モルグ街の殺人」(1841年[2])であるといわれる。しかし、チャールズ・ディケンズもポーに先立ち、同年1月から連載を開始した半推理・半犯罪小説の『バーナビー・ラッジ』(1841年)を書いているほか、100年ほど前に書かれたヴォルテールの『ザディグ』(1747年)の一編『王妃の犬と国王の馬』も推理に重きが置かれている。さらには『カンタベリー物語』、『デカメロン』、聖書外典『ダニエル書補遺』の『ベルと竜』などにも推理小説のような話が収録されており、どこに端を発するかという議論は尽きない。


ただ、確実に言えるのは、1830年代のイギリスに警察制度が整い、犯罪に対する新しい感覚が生まれたということである。この頃一世を風靡したニューゲート小説は、ニューゲート監獄の発行した犯罪の記録を元に書かれた犯罪小説であり、後の近代推理小説が生まれる基盤を作ったと言える。


権利と義務の体系が整い、司法制度や基本的人権がある程度確立した社会であることも、推理小説に欠かせない要素であろう。


推理小説というジャンルにとって警察組織の存在は大きい。法を手に犯罪者を捕らえる新しい形のヒーローが誕生したからである。その裏側には、急速に都市化が進むイギリスで、一般市民が都市の暗黒部に対し抱く不安が高まっていた、という歴史的事実がある。そして都市化に伴うストレスのはけ口として、「殺人事件」という素材の非日常性が必要とされていたという見方もある。



推理小説の発展とメディアの越境


推理小説が誕生した後、様々なアイデアが生み出されてきた。そして下記に挙げられるようなミステリにおける「基礎・応用などの土台」が作られたのである。また、科学・医学が進歩するにつれて、それらの知識を用いたトリックなどが次々と考え出された。


また、ミステリの手法は小説にとどまらず、映画・ドラマ・舞台・漫画・ゲームなど多様なメディアに波及してきた。



推理小説の歴史



ポー以前のミステリ要素を含む文学



旧約・新約聖書


旧約聖書『列王記略上』第3章にはソロモン王が裁判で名判決を下す話があり、聖書外典『ダニエル書補遺』にも『スザナの物語』『ベルと竜』のようなミステリ仕立ての説話が含まれている[3]



古典文学


ウェルギリウスの『アエネーイス』には、ギリシャ神話の英雄ソクラテスが、盗賊カークスに盗まれた牛を、偽の手がかりを回避しながら見事に探し出す挿話がある。


また、『カンタベリー物語』、『デカメロン』、ヘロドトスの『歴史』などにも推理小説のような話がある。



アラビアン・ナイト


最古の例の探偵小説:『千夜一夜物語』の「3つの林檎の物語」 (The Three Apples) である。



ポー以前の西洋文学


ヴォルテールの『ザディグ』(1747年)の一編『王妃の犬と国王の馬』も推理に重きが置かれている。ボーマルシェ『セヴィリアの理髪師』(1775年)には、謎解き推理小説の要素が含まれる。


ヴィドックの『回想録』(1823年)はポーのデュパン探偵ものに影響を与えた。大デュマ『ポール船長』(1838年)は冒険ミステリの色彩が強く、のちのドイルの一連の海洋奇談ものにも通じる。







欧米



推理小説の誕生


1841年、アメリカのエドガー・アラン・ポーが発表した短編「モルグ街の殺人」が推理小説の始まりだとされる。ディケンズの『バーナビー・ラッジ』も純粋な推理小説ではないが、作中にミステリー要素がある。未完に終わったディケンズ晩年の『エドウィン・ドルードの謎』は、のちに多くの作家が「解決編」の作成を試みている。


1866年、エミール・ガボリオは仏訳されたポーの作品群に影響を受け、世界最初の長編推理小説「ルルージュ事件」を発表。


イギリスではウィルキー・コリンズが、1860年にスリラーの大長編『白衣(びゃくえ)の女』、1862年には謎をテーマにし、ミステリに近い長編『無名(ノーネイム)』を出版した。そして1868年に、「英語で書かれた初の長編推理小説」といわれる『月長石(月神の宝石)』[4] を発表している。


1878年、アンナ・キャサリン・グリーンは、処女長編『リーヴェンワース事件』を出版、世界で初めて長編推理小説を書いた女性と言われている[5]。また、ヴァイオレット・ストレンジというフィクションにおける「世界初の女探偵」(世界初の女刑事はバロネス・オルツィ(オルツィ女男爵)が創造したレディ・モリー)が活躍する短編集でも知られる。


1882年、リチャード・ストックトンは、「女か虎か」を発表し反響を呼ぶ。物語中に謎が提示され、解決は読者に委ねるというリドル・ストーリーの典型として有名である。他の作品に「三日月刀の促進士」などがある。


ガストン・ルルーの『黄色い部屋の秘密』は、フランスの挿絵入り新聞『イリュストラシオン』で連載され、密室殺人ものの古典とされる。続編として『黒衣夫人の香り』が存在する。



名探偵登場


キャロライン・ウェルズは処女長編『手がかり』を皮切りに、フレミング・ストーンという「シリーズものキャラクター探偵」が登場する長編ミステリを70作も出版し、「同一作家による長編への最多登場の探偵」となった。


(法廷ものではE・S・ガードナーのペリー・メイスン弁護士が82長編で最多。ノンシリーズも含めるとジョン・ロードが140長編を越す。14のシリーズ探偵を持つジョン・クリーシー(別名 J・J・マリック John Creasey )は、「トフ氏」シリーズ58長編、「ギデオン警視」シリーズ21長編をはじめ総計562長編[6]


また、ジョン・ラッセル・コリエルは、ニコラス・カーター名義で1886年に「探偵ニック・カーター」が登場する作品を、ニューヨーク・ウィークリー誌で発表。その後、多くの作家がニコラス・カーターのハウスネームでシリーズを書き続けた。100年以上続く探偵ニックものは、その大半が長編である。


同様に、英国でも1893年にハリー・ブリスが探偵「セクストン・ブレイク」の冒険を描く「失踪した百万長者」を発表[7]。ブレイクものは異なった作者により、複数の名義で70年以上書き続けられたが、こちらはニックものとは対照的に短編がほとんどである(アプルビー警部を創作したマイケル・イネスが書いた短編もある)。



ホームズとライヴァルたち


1879年、アーサー・コナン・ドイルは、処女作の短編「ササッサ谷の怪」(ホームズものではないノンシリーズ作品)をチェンバーズ・ジャーナル誌10月号で発表。1887年には、「名探偵」の代表とも言えるシャーロック・ホームズの長編第1作『緋色の研究』を、ワードロック社のピートン誌クリスマス号にて発表。ホームズものは、1927年の短編「ショスコム荘」まで書き続けられた。


ホームズもの作品は長編より短編が圧倒的に多く、同時代には、アーサー・モリスン、アーネスト・ブラマ、ジャック・フットレル、メルヴィル・デイヴィスン・ポースト、オーガスト・ダーレス、ギルバート・キース・チェスタトンなどが独自のキャラクター探偵の活躍する短編を発表し、彼らの創造した探偵は「ホームズのライヴァルたち」とも呼ばれることがある。



怪盗もの、犯罪小説、倒叙など


一方、フランスのモーリス・ルブランが1905年、短編「アルセーヌ・ルパンの逮捕」で探偵とは逆の立場に属する主人公である「怪盗もの」の執筆をはじめ、30年にわたって怪盗ルパンは長短編に登場することとなった。


そしてパトリシア・ハイスミスは、名探偵ではなく「犯人」をシリーズ・キャラクターに起用し、完全犯罪をたくらむ殺人犯リプリー青年が毎回主人公の「太陽がいっぱい」からはじまる長編5作を発表し、映画化もされている[8]


また、「キングコング」で知られるエドガー・ウォーレスは、「正義の四人」を筆頭に、探偵・刑事と殺人者・悪漢の両陣営で十指に余るシリーズ・キャラクターを創造した。


犯人の側から犯罪を描写する「倒叙」ものは、オースティン・フリーマンの短編集「歌う白骨」が有名だが、毎話ごとに当然ながら犯人が変わっており(探偵は毎回同じソーンダイク博士。また殺人犯が逃亡したり、未遂に終わる、被害者側が許すなど、犯人が罰せられない作品もあるのが本作品集の特徴)、フリーマン・ウィルス・クロフツの短編集『殺人者はへまをする』および『クロイドン発12時30分』やロイ・ヴィカーズの「迷宮課」シリーズを経て、現代のレビンソンとリンク共作の『刑事コロンボ』に至るミステリの定番ジャンルのひとつになっている。


「被害者」を主人公に起用したミステリとしては、グラント・アレンの「アフリカの百万長者」が挙げられる[9]


変り種では、いくつもの筆名でシリアスとコミカルの作風を使い分けるドナルド・E・ウェストレイクが「殺人はお好き?」で、「容疑者」を主人公に、事件担当の刑事が抱える別の難事件を次々に解決していく趣向の連作集を発表している。


「語り手(記述者)」が主人公になっている作品としては、ロード・ダンセイニ(ダンセイニ卿)の短編集「スミザーズの話」[10] が挙げられる。ウィルキー・コリンズの長編および中短編では、章や巻ごとに語り手が交代する作品が多い。


「読者」を主人公にする趣向は、フレドリック・ブラウンが連作短編集「真っ白な嘘」で試みている。


「作者」を文体などから読者に当てさせる趣旨のアンソロジーは、エラリー・クイーン編「読者への挑戦」やアイザック・アシモフ編「新・読者への挑戦」がある。



本格長編の黄金時代


短編中心だった推理小説の世界は、1913年にE・C・ベントリーが、長編「トレント最後の事件」でミステリに恋愛要素を盛り込んだ趣向の作品を発表すると、多くの作家により長編推理小説の名作が次々と発表され、のちに「黄金時代」と呼ばれる長編全盛期を迎えた。


アール・デア・ビガーズは1925年に長編「鍵のない家」を発表。中国人探偵チャーリー・チャンは、ケイ・ルークの当たり役となった数十本の映画や、新聞の連続漫画にも登場する人気を獲得した。「ノックスの十戒」で有名なロナルド・ノックスは、保険会社の事件調査員という珍しい設定のマイルズ・ブリードンを探偵役に起用した。


アガサ・クリスティの『オリエント急行の殺人』における旅客列車の車両内、『そして誰もいなくなった』の孤島、『大空の死[11]』の旅客機といった「クローズド・サークル(閉ざされた空間)もの」、ヴァン・ダインの『僧正殺人事件』の「見立て殺人」、エラリー・クイーンの『Xの悲劇』から始まる「ダイイング・メッセージ(死に際の伝言)」、ディクスン・カーが得意とする『三つの棺』に代表される「密室もの」および、『深夜の密使[12]』から書き始められた一連の、過去を舞台にした「歴史ミステリ」など様々なジャンルの長編推理小説が発表され、「本格」「フーダニット(犯人当て)」「パズラー」等と称される傑作群が続いた。


カーの『髑髏城』は、本格ものでは珍しくドイツを舞台にした長編である[13]。ジョルジオ・シェルバネンコ (Giorgio Scerbanenco )の長編『傷ついた女神』はイタリアが舞台になっている。ヤーン・エクストレムは「スウェーデンのカー」とも呼ばれ、『誕生パーティの17人』『うなぎの罠』ほか密室殺人を扱った作品が多い。クロフツの「フローテ公園の殺人」は、南アフリカでの事件を扱っている。


クリスティには「うぐいす荘(ナイチンゲール荘)」のようなスリラー作品もある。彼女の「パーカー・パイン」の初期短編は、コンゲームものの古典ともいわれる。イーデン・フィルポッツはクリスティの隣家に住んでおり、種々の助言をしたという[14]。フィルポッツは58歳で推理小説を書き始め[15]、98歳の「老将の回想」(There Was an Old Man )まで推理長編[16] を執筆し続けた[17]。ドロシー・セイヤーズにも「疑惑」というホラー短編がある。


フィルポッツとは対照的なのがジェイムズ・ヤッフェ(James Yaffe )で、弱冠15歳の時に短編「不可能犯罪課」を発表し、3年後の「喜歌劇殺人事件」まで連作短編6作品を書いた。長編は「メサグランテのママ」シリーズがある。ティモシー・フラーも、ハーバード大学在学中に21歳で「ハーバード大学殺人事件」で作家デビュー。探偵役ジュピター・ジョーンズが、主に同大学やその同窓会で起きた事件を解決するシリーズになっている。



ポスト黄金時代と新本格派


黄金時代からその少し後に登場したトリッキーな作家群を、江戸川乱歩は「新本格派」と命名している[18]


ベルギーのスタニスラス=アンドレ・ステーマン、アイルランドのニコラス・ブレイク、英国のクリスチアナ・ブランド、リチャード・ハル、アントニイ・バークリー、エドマンド・クリスピン(英語版)らが、独自の作風で創意工夫に満ちた異色作を発表した。



変格もの、スパイ小説とサスペンス


「本格」に対して、「変格」といわれる作品の一つが、パトリシア・マガーの「被害者を捜せ!」「探偵を捜せ!」等の、犯人はわかっていて被害者・探偵・目撃者などを推理させるといった、推理小説の枠にとどまらないユニークな形式(変格推理)の長編作品である。マガーは女スパイを主人公にした「セレナ・ミード」ものも著名で映画にもなっている。スパイものでは「ジェームズ・ボンド」シリーズのイアン・フレミングが有名だが、他にエリック・アンブラーの「ディミトリオスの棺」やフレデリック・フォーサイスによる「ジャッカルの日」、グレアム・グリーン「ハバナの男」、ほか多数の日本語訳がある。


さらに、トリックや謎解きよりも主人公や登場人物の心理描写に重点を置く「サスペンス」の作品をコーネル・ウールリッチが多数発表。代表作がウィリアム・アイリッシュ名義の長編「幻の女」で、冒頭の書き出しも有名である。短編「裏窓」は映画の原作に採用された[19]


パトリック・クェンティンのウェッブ主導の初期作品は本格色が強かったが、コンビのうちホイーラー中心の後期はサスペンス色が濃くなった。ルース・レンデルも「ウェクスフォード警部」シリーズの本格推理と、バーバラ・ヴァイン名義でのサスペンスの両系統で傑作群[20] を発表した。 フランスではボワロー=ナルスジャックやカトリーヌ・アルレー、セバスチアン・ジャプリゾなどが「サスペンス」ものを多く発表している。


ジョセフィン・テイは女性の心理描写に長けた作家だが、「時の娘」において舞台は現代ながら探偵役が病院のベッドの上で、文献のみから歴史上の事件を解決する手法を採っている。彼女と混同されがちな「病院殺人事件」など、医療ミステリのジョセフィン・ベル(Josephine Bell )は、イギリス推理作家協会(CCA)の創立当初からのメンバーであり、会長職も務めた。



他ジャンルの作家によるミステリ


のちに児童文学の大家となるアレキサンダー・ミルンは「くまのプーさん」の前に、「赤い館の秘密」ほか数点のミステリを発表している。 ジェームズ・ヒルトンも「チップス先生、さようなら」の前に「学校の殺人」を書いている。SFの巨匠アイザック・アシモフには「黒後家蜘蛛の会」シリーズがある。ヴォードヴィル劇作家のパーシヴァル・ワイルドは、「検屍裁判」をはじめとするリーガル推理長編や、トランプいかさま師パームリーが主人公のカードミステリ「悪党どものお楽しみ」などでも知られる。



ハードボイルドの出現


1928年、ダシール・ハメットが名無しの探偵コンティネンタル・オプの最初の長編「デイン家の呪い」とそれに続き「赤い収穫[21]」を発表。従来の推理小説とは一線を画す「酒、暴力、アクション、恋愛」といった要素の多い「ハードボイルド」と呼ばれる、主としてアメリカの大都会を舞台にした私立探偵ものの嚆矢とされる。ハメットは1930年、もう一人「マルタの鷹」で初登場するサム・スペードも創造した。オプとスペードに続く第3のキャラクター、おしどり探偵ニックとノラの活躍を描く「影なき男」も好評で、映画でシリーズ化された。


ジョン・ダン・マクドナルドの長編は、『濃紺のさよなら』から題名に色の名前がつけられ、シリーズ・キャラクターのトラヴィス・マッギーは、さまざまな作家に影響を与えた。ノンシリーズ作品『恐怖の岬』はグレゴリー・ペックとロバート・ミッチャム、マーティン・バルサムの共演で映画化された[22]


ハードボイルドものの都会的なセンスおよびスリリングな展開と、本格ものの論理的な謎解きを併せ持つ「屠所の羊」のA・A・フェアや「ネロ・ウルフ対FBI」のレックス・スタウト、「処刑6日前」のジョナサン・ラティマー、「シカゴ・ブルース」のフレドリック・ブラウンらの作品群を「ソフトボイルド」と呼ぶ場合もある。


「大いなる眠り」や「長いお別れ」の レイモンド・チャンドラーは、「主流文学(純文学)の中にミステリーを取り入れた」と評され[23]、ロス・マクドナルドは、「動く標的」などに見られる複雑なプロットと、登場人物に関する心理学的な洞察が特徴で、「ハードボイルドと本格の融合」と称される場合がある[24]
マクドナルド(本名:ケネス・ミラー)の妻であるマーガレット・ミラーは、プライ博士とサンズ警部もの長編「見えない虫」「鉄の門」ほかで夫より先に作家として成功を収めており、「これよりさき怪物領域」など心理スリラーの第一人者として活躍。晩年のアラゴン弁護士ものでは、ハードボイルドやサスペンスにユーモアの要素を加えて以前よりマイルドな作風に転じた。



警察小説と業界ミステリ


エド・マクベインは、架空の街アイソラを舞台にの警官たちの活躍を描いた「87分署シリーズ」で、警察小説と呼ばれる新たなジャンルを確立した。かたや「ホープ弁護士シリーズ」は題名が「白雪と赤バラ」「長靴をはいた猫」など童話に因む作品になっている。警察小説では、ヒラリー・ウォー、ジョルジュ・シムノンなどの作品が名高い。


また、ディック・フランシスは障害騎手として活躍した経験を生かし、処女長編「本命」をはじめ、競馬界をめぐる事件を発表し続けた。そして法曹界出身のシリル・ヘアー(Cyril Hare )は、「法律ミステリ」「リーガル本格」とも呼ばれる『法の悲劇』などが知られる。他に経済・化学・会計などのテーマに特化したミステリを書く作家も現われた。



パロディ・パスティーシュとユーモアミステリ


ジョン・L・ブリーンは、ヴァン・ダインの文体を真似た「サークル殺人事件」、ディクスン・カーが書きそうな不可能犯罪「甲高い囁きの館」など、多くの推理作家の巨匠パロディ・パスティーシュを発表した。


アンソニー・ホロヴィッツとジョン・エドマンド・ガードナーは、ホームズの宿敵モリアーティー教授の後日談、及びフレミング財団公認のジェームズ・ボンドシリーズをそれぞれ独自の内容で発表している。


ロバート・ロイド・フィッシュは「シュロック・ホームズの冒険」などのホームズ・パロディの短編集を書く一方、「亡命者」のようなシリアスなサスペンス長編もある。短編の名手エドワード・デンティンジャー・ホックには「第二のまだらの紐」など12短編のホームズ・パスティーシュがあるほか、怪盗ニックやホーソーン医師ら自身のキャラクターとホームズを共演させた。


女流作家の ジョイス・ポーターは、ドーヴァー警部とホンコンおばさんの三枚目キャラクターが、作中でドタバタを繰り広げるユーモア推理作品で人気を博した。
同じく女流のクレイグ・ライスも、自身とその家族をモデルにしたと言われる「スイート・ホーム殺人事件」(1944)や「 時計は三時に止まる」(1939)にはじまるマローン弁護士ものといったユーモア長編を多く発表した。



女性と黒人の探偵たち


サラ・パレツキーは高学歴で元弁護士の女性探偵V(ヴィクトリア)・I・ウォーショースキーが活躍する『サマータイム・ブルース』でデビュー。キャスリーン・ターナー主演で映画化(邦題「私がウォシャウスキー」)。スー・グラフトンは才女ウォーショースキーとは対照的な、「平凡で普通の女性」を探偵役に起用した。「アリバイのA」の主人公キンジー・ミルホーンのシリーズは「作者・探偵・読者」すべて女性である(男性読者もいるが、作風が女性読者向けという事で)「3Fミステリー」[25] との新語も生んだ。「荊の城」のサラ・ウォーターズは、レズビアンのキャラクターを作品に多く登場させている。パトリシア・モイーズ(Patricia Moyes )のシリーズ探偵は男性のヘンリー・ティベット警部だが、明るく聡明な妻のエミーも捜査に協力して、夫婦で事件を解決していく作品が多い。


ジョン・ボールは黒人エリート警官ヴァージル・ティッブスを主人公とする長編「夜の熱気の中で」を発表し、人種の壁を乗り越えて相手
に尊敬される主人公が人気となった。チェスター・ハイムズの書いた「墓掘りジョーンズと棺桶エド」の黒人コンビが登場する「イマベルへの愛」はフランスで話題になったが、生国のアメリカでは不評だったという。



様々な名探偵


その後、女性や黒人の探偵も続いて登場し、珍しくなくなったミステリの世界で、作者たちは、猫(リリアン・ブラウンの「シャム猫ココ」)やねずみ、未来人(ロバート・アーサーの「時間旅行者」)、歴史上の偉人(セオドア・マシスンの「名探偵群像」)、魚やイルカ、機械やロボット、この世の人間ではない人(ハーリ・クイン氏)など、様々な探偵を創造し続けた。


イーヴ・タイタスのねずみの国の「探偵ベイジル」もの、ウィリアム・C・アンダースン(William Charles Anderson ) の人語を話すイルカ「ペネロッピー」シリーズ、ピエール・アンリ・カミの「クリク・ロボット」、魔法使いが主役のランドル・ギャレットの「魔術師を探せ」などは、我が国でも紹介された。



様々な趣向


ジャン・マイケルズ『死のリフレイン』、ジョゼフィン・ケインズ『ステージの悪魔』やビル・S・バリンジャー (Bill Sanborn Ballinger ) 『歯と爪』は解決編を袋綴じにして販売。トマス・チャステイン、ビル・アドラー『誰がロビンズ一家を殺したか?』と続編『ロビンズ一家の復讐』は、懸賞を付けて読者から犯人の回答を募集した。スタンリイ・エリンは長編『鏡よ、鏡』を返金保証つきで出版した。


また、デニス・ホイートリー (Dennis Wheatley )は『マイアミ沖殺人事件』、『誰がロバート・プレンティスを殺したか』、『マリンゼー島連続殺人事件』で、マッチや新聞記事の切れ端など、証拠品の複製を単行本[26] に添付して発行した。


ピエール・バイヤール (Pierre Bayard )は『アクロイドを殺したのはだれか』、『シャーロック・ホームズの誤謬』などで、クリスティの初期作品やドイルの長編で「探偵が作中で指摘した犯人は無罪。真犯人は別にいた。」という内容の評論・改作を続けて発表している。



二世代・三世代の作家と探偵


エイドリアン・コナン・ドイルはディクスン・カーと共作で、ホームズの語られざる作品集 『シャーロック・ホームズの功績』を出版。また、21世紀に入り、カーの孫娘シェリー・ディクスン・カーが『ザ・リッパー 切り裂きジャックの秘密』を発表しミステリ界にデビューしている。


マクドネル・ボドキン(Matthias McDonnell Bodkin )は、私立探偵ポール・ベック、 女探偵ドラ・マールの二大シリーズを持っていたが、彼らを結婚させ二人の息子であるベック2世の作品も創造し、二世代の共演も実現させた。また、ジョン・ピールは1992年からジョン・ヴィンセント(John Vincent )名義で「踊るのは我らだ」(Live And Let's Dance [27] などジェームズ・ボンド・ジュニアのシリーズを書き続けている[28]



ロシア及び東欧・イスラエル


ロシアではアントン・チェーホフが、1884年に長編推理小説『狩場の悲劇』を発表。父親がロシア系ユダヤ人の英国作家イズレイル・ザングウィルは、1892年の『ビッグ・ボウの殺人』連載中に、読者から解決(真相)の予想を募集した。


ハンガリーのアラド(現在はルーマニアのArad郡都)生まれのバルドゥイン・グロラー (Balduin Groller )は、オーストリア=ハンガリー帝国ハプスブルグ朝末期を舞台に「探偵ダゴベルト」もの短編を発表している。


チェコの作家ヨゼフ・シュクヴォレツキー (Josef Škvorecký )には『ノックス師に捧げる10の犯罪』(Hříchy pro pátera Knoxe)という、「犯人は、物語の当初に登場していなければならない」「探偵自身が犯人であってはならない」など「ノックスの十戒」に違反した連作集がある。


トルコのイスタンブールで生まれたアキフ・ピリンチ(Akif Pirinçci)は、トルコ人の若者を主人公にした恋愛小説でデビューしたが、『猫たちの聖夜』(Felidae)でミステリ分野にも参入。『ザ・ドア 交差する世界』は映画化もされた。



中南米・オセアニア


アルゼンチンでは戦前から、探偵小説がかなり書かれており、1940年代には、アメリカのミステリ雑誌『Ellery Queen's Mystery Magazine』に投稿がみられる。第3回短編ミステリ・コンテストにはホルヘ・ルイス・ボルヘス ( Jorge Luis Borges、1899-1986)の「迷路の花園」が入選した[29]。ボルヘスの推理小説およびミステリ風小説は、「死とコンパス」(1942)、「裏切り者と英雄のテーマ」(1944) 、 「エンマ・ツンツ」(1949) などがある。1942年、服役中のドン・イシドロ・パロディという究極の安楽椅子探偵もの連作『ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件 』(Seis problemas para don Isidro Parodi )が 刊行され、オノリオ・ブストス・ドメックと名乗る作者は謎だったが、ボルヘスとアドルフォ・ビオイ・カサレス( Adolfo Bioy Casares )の合作だと後に判明した。


ウルグアイではチャンドラー作品の続編を書いたイベア・コンテリース(Hiber Conteris )の『マーロウ もう一つの事件』、コロンビアの ホルヘ・フランコ (Jorge Franco )の『ロサリオの鋏』など が、本国のほか英訳されて刊行されている[30]


オーストラリアのアーサー・アップフィールド(Arthur Upfield )は、『バラキー牧場の謎』(1929)そして『ボニーと砂に消えた男』(1931)にはじまる、先住民アボリジニとの混血であるボナパルト警部が、豪州の大自然を舞台に活躍する作品群を量産した。また、S・H・コーティア(Sidney Hobson Courtier )は、『謀殺の火』(1967)など、アボリジニの神話や風俗を主題にした作品を発表している。



北・東アジア



中国


中国では、事件の調書や裁判記録など、公的機関が発行した文書のことを公案と呼んでいたが、宋代から元代にかけて、公案を題材にした話芸や戯曲が人気を呼び、明代にはこれをもとにした公案小説という読み物のジャンルが流行している。特に、宋代に実在した政治家の包拯が、様々な講談、戯曲、公案小説において裁判や捜査で事件の真相を明らかにする主人公として登場しており、今日でもテレビドラマなどに翻案されている。






中国では、1885年に発表された知非子(ちひし)『冤獄縁』(えんごくえん)が初の創作探偵小説だとされている。長編では1890年に、作者不明の『狄公案』(てきこうあん) が刊行されている[31]


近代中国で推理小説の嚆矢となった作家は、 程小青(てい しょうせい/チョン シャオチン) (1893 - 1976)が挙げられる。1914年、上海の新聞で短編『灯光人影(とうこうじんえい)』を発表。探偵役の 霍桑 (かくそう/フオサン)はホームズ型の天才探偵で、ワトソン役は包朗(ほうろう/バオラン)。霍桑の探偵談はシリーズ化され30年以上続いた。



朝鮮・韓国


朝鮮では、李海朝(イ・ヘジョ、1869-1927)が1908年に発表した『双玉笛』(そう ぎょくてき)が初の創作探偵小説とされている。大韓帝国末期の1909年旧暦5月29日、平壌(ピョンヤン)近郊の平安南道(ピョンアンナムド)で生まれた 金来成(きんらいせい/キム・ネソン) (1893 - 1976)は、早稲田大学在学中の1935年に日本の探偵小説専門誌『ぷろふいる』でデビューし、のちに朝鮮半島で探偵作家として活躍した。韓国推理小説の創始者とされる。1939年に発表した「魔人」は和訳が出版されている[32]



台湾(中華民国)


余心樂(よ しんらく/ユー シンラー)は、台湾月刊誌「推理雑誌」に作品を発表。林仏児推理小説賞の中編「生死線上」が和訳されている。



日本



捕物帳と探偵小説の黎明期


日本では明治以前から勧善懲悪をテーマとした歌舞伎や講談の演目が存在していた。例えば大岡政談などの政談ものは発生した事件を正しく裁く筋立てが法廷推理小説に等しく、鼠小僧や石川五右衛門を題材とした作品群は犯罪心理小説に通じるものがある。しかし、これらは奉行や犯罪者の物語であり、民間人が犯罪を解決する役回りにはならない(もし民間人が犯罪を解決しようとすると仇討ちや義賊という形になり、民間人ではなく情に厚い犯罪者になってしまう)。日本における探偵小説は、文明開化以降、探偵という概念が西洋から輸入されることで生まれた。


黒岩涙香が明治22年(1889年)に発表した「無惨」(別題「三筋の髪、探偵小説」)が、日本人初の創作推理小説と言われる。涙香は1896年にも「六人の死骸」と題する作品を執筆している。


1917年、岡本綺堂は、アーサー・コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」に影響を受け、「三河町の半七」を主人公にして「半七捕物帳」のシリーズを開始。探偵小説の要素を盛り込んだ時代劇である「捕物帳もの」のさきがけとなる。ほかに、野村胡堂の1931年からはじまる「銭形平次」シリーズは、後年、たびたび映画やテレビドラマ化されている。「旗本退屈男」の佐々木味津三には「むっつり右門」、城昌幸にも「若さま侍」の捕物帳がある。変わったところでは、鳴海丈がセクシー路線の『彦六捕物帖』『柳屋お藤捕物帳』などを書いている。


「捕物帳もの」と並ぶ日本ミステリのジャンルに「奉行もの(お白洲もの)」がある。実在の遠山景元が登場の「遠山の金さん」が一例。「伝七捕物帳」[33] の陣出達朗や『桃太郎侍』で知られる山手樹一郎など複数の作家が、「遠山の金さん」ものを執筆している。


他には、時代小説のイメージが強い山本周五郎だが、『寝ぼけ署長』という連作の探偵小説がある。「木枯し紋次郎」の笹沢左保も多くの捕物帳以外に、現代を舞台にしたミステリを発表した。



江戸川乱歩の功績


日本において探偵という職業を大衆に認知させ、探偵小説・推理小説の知名度を上げたうちの一人に、江戸川乱歩がいる。江戸川乱歩は大正・昭和期、推理小説の黎明期において明智小五郎や少年探偵団が活躍する一連のシリーズで名を挙げ、現在も江戸川乱歩賞にその名を残している。
1947年、江戸川乱歩が探偵作家クラブを設立した(このクラブは現在日本推理作家協会という形で残っている)。



三大奇書と周辺


1935年、日本の探偵小説における三大奇書と呼ばれるうちの二作(夢野久作の「ドグラ・マグラ」、小栗虫太郎の「黒死館殺人事件」)が出版された。1965年には、三大奇書の最後の一作・中井英夫の「虚無への供物」が出版された。時代や作風などに差があるものの、坂口安吾の「不連続殺人事件」や竹本健治の「匣の中の失楽」も三大奇書と絡めて語られる事がある[34]



戦前の作家たち


「支倉事件」の甲賀三郎、「わが女学生時代の罪」の木々高太郎[35]、「振動魔」の海野十三などの諸作品は今日でも再刷が続いている。久生十蘭のような文豪も推理作品を発表した。



本格派の活躍


第二次世界大戦中は探偵小説が禁圧され出版できなかった。戦後はGHQの検閲により、復讐などの要素を含む時代劇が禁止された。横溝正史は当時、捕物帳を始めとした時代小説を書いていたが、GHQの規制を受けて金田一耕助シリーズを執筆し、これが本格推理長編小説の再興に繋がったと言われる。


また、伝奇小説で知られた角田喜久雄は、長編「高木家の惨劇」で本格推理のジャンルに参入、伝奇ロマンとの二枚看板で人気を得た。クロフツに影響を受けた鮎川哲也はアリバイくずしを得意とし、「ペトロフ事件」「黒いトランク」など鬼貫警部を探偵役とする本格推理小説を発表。またアンソロジーの編纂にも力を尽くした。


高木彬光は神津恭介を探偵役とする「刺青殺人事件」他の本格ものを中心に「連合艦隊ついに勝つ」「邪馬台国の秘密」など歴史・SFとも融合したミステリ、「検事 霧島三郎」の法廷もの、「黄金の鍵」から始まる安楽椅子探偵ものと多岐にわたる作品群を発表した。都筑道夫は、長短編はもとより掌編(ショートショート)でも多くの作品を発表、また英米ミステリの紹介者としても功績を残す。



女流作家の進出


1957年には、仁木悦子が自身と同名ヒロインが登場する長編「猫は知っていた」でデビュー、「日本のクリスティー」と呼ばれた[36]。また、夏樹静子はクイーンの悲劇四部作のオマージュともいえる「Wの悲劇」が話題となり、薬師丸ひろ子主演で映画化もされた。


SFや伝奇小説の分野でも多作で知られる栗本薫は、評論では「中島梓」名義を使い分け、クイーンとロスを思わせる中島梓と栗本薫の1人2役対談が、『平凡パンチ』誌上で企画された。推理小説の分野では、作者と同名だが男性の栗本薫が主人公の「ぼくらの時代」はじめ、多くのシリーズとキャラクターを創造した。


トリッキーな連作「妻の女友達」「プワゾンの匂う女」や、倒錯ミステリの長編『ナルキッソスの鏡』が有名な小池真理子は、短編の名手としても知られる。



多様化するミステリ


1960年代以降、推理小説は松本清張の『砂の器』などの作品群や黒岩重吾、西村寿行の「社会派」、西村京太郎の「トラベルミステリ」、森村誠一の「ビジネス・企業もの」「歴史ミステリ」、高橋克彦の「美術ミステリ」、山田正紀や小松左京、豊田有恒、筒井康隆らの「SFミステリ」、志茂田景樹の「恋愛ミステリ」、 館淳一や丸茂ジュンの「官能ミステリ」、 山藍紫姫子の『スタンレー・ホークの事件簿』に代表される「耽美ミステリ」など、様々なサブジャンルに分かれていった。


初期には「古墳殺人事件」など、本格ものでペダンティックな作品を書いていた島田一男は、のちに「事件もの」といわれる記者が活躍する小説に転じた。山田風太郎は「忍法帖シリーズ」が有名だが、青春探偵団が活躍する推理小説もあり漫画化された。お色気に満ちた風俗小説とシリアスな経済小説で作風を使い分ける梶山季之にも、『朝は死んでいた』、『知能犯』など推理作品がある。時代もの・SFと多分野で活躍した多岐川恭も、『濡れた心』をはじめ登場人物の心理描写に優れたミステリの傑作群がある。誘拐事件を扱った天藤真の『大誘拐』は、映画になっている。


そのほか、ハードボイルド(大藪春彦や生島治郎、片岡義男、小鷹信光)、将棋や奇術、音楽、法律、山岳など他の趣味・本業を生かしたミステリ(斎藤栄、泡坂妻夫、戸川昌子、佐賀潜、太田蘭三)、実在する文学者・文学作品(「芥川龍之介の推理」や「川端康成の遺書」などの土屋隆夫)、日常の謎(北村薫、若竹七海)などをテーマや作風とする作家も現れた。佐野洋は「推理日記」のタイトルで、40年にわたりミステリ評論を書き続けた。



日本の新本格派


80年代末から世紀末にかけ、1987年にデビューした綾辻行人を嚆矢とした、有栖川有栖・二階堂黎人・麻耶雄嵩・貫井徳郎・芦辺拓らの海外のクイーンやカーを再現したような「本格」というジャンルに特化した作家群が次々に出現。彼らは「新本格派」または「日本の新本格派」[37] とも呼ばれることがある。また、清涼院流水は、その独特の作風からミステリ界に論争を巻き起こした[38]。大塚英志や舞城王太郎といった作家たちが、清涼院のJDCシリーズと同じ世界観を持つ作品を発表している。



ジュヴナイル・ライトノベルとメディアミックス


南洋一郎はモーリス・ルブランの原作を、少年少女向けに改筆した「怪盗ルパン全集」全30巻[39]の訳者として知られる。第13巻『ピラミッドの秘密』のように、一部にルブラン作品を取り入れてはいるが[40]、ほぼパスティーシュと認定されている作品もある。


70年代後半に各出版社がジュニア向け文庫を立ち上げると、山浦弘靖の「殺人切符はハート色」などトランプ絡みの題名が続く「星子ひとり旅シリーズ」は、コバルト文庫の看板シリーズとなった。


また、「仮題・中学殺人事件」にはじまる辻真先の、「読者」「作者」「編集者」など本来は犯人たりえない人物[41] を扱うシリーズをラインナップに揃えたソノラマ文庫など、ジュヴナイルのミステリが多く刊行された。


学研や旺文社などの学年誌や受験誌に多く連載した小峰元は、ギリシャ哲学者を冠した「アルキメデスは手を汚さない」から始まる「青春ミステリー」で知られる。ラジオの深夜放送や大学受験など、当時の10代から20歳前後の若者の生活や悩みを作中に織り込んだ作風が特徴。最初期の短編集「幽霊列車」では本格要素がかなり強かった赤川次郎だが、角川映画との連携や「三毛猫ホームズ」シリーズのテレビドラマ化で人気が出たことから、若者向けのユーモア・ミステリ路線にシフトした。


『湯殿山麓呪い村』 の山村正夫は、古今東西のミステリをダイジェストにして、年少者やミステリ入門者向けに、クイズ形式とした『トリック・ゲーム』などを著した。また、各種会場での小説教室の指導者として、多数の人材を輩出している。


1980年代から推理小説の漫画化も行われた。1992年には「金田一少年の事件簿」、1996年には「名探偵コナン」が好評を博し、推理漫画が一つのジャンルとして定着した。2002年に「クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い」でデビューした西尾維新は、文芸ものの新書「講談社ノベルス」から発行されているが、ライトノベルとして分類され、また自身もそのようにとらえる場合もある[42]。「掟上今日子の備忘録」や「美少年探偵団 きみだけに光かがやく暗黒星」など多くの作品が漫画化・テレビドラマ化されている。西尾維新に限らず青春ミステリにおいてはライトノベルとの境界が非常に曖昧で、「赤朽葉家の伝説」で日本推理作家協会賞を受賞した桜庭一樹は元々ライトノベル作家であった。



東京以外の舞台と探偵


前項の桜庭一樹は、自身の故郷である鳥取県を舞台にミステリを書いているが、他にも東京や首都圏以外の推理小説を書く作家もいる。
山村美紗の「京都殺人案内」(京都)、東野圭吾の「浪花少年探偵団」(大阪)がその一例である。


内田康夫の「死者の木霊」からはじまる「信濃のコロンボ」シリーズは長野県[43] で起きた事件がメイン。森博嗣の「すべてがFになる」は愛知県[44] で探偵が活躍する。石沢英太郎のシリーズ探偵・牟田刑事官は福岡市など福岡県が主な舞台[45]


海外では海渡英祐が発表した「伯林(ベルリン)一八八八年」が、19世紀のドイツ(Deutsches Reich)を、結城昌治の「ゴメスの名はゴメス」は1960年代のベトナムを舞台にしている。



推理小説の分類


下記の分類は、互いに相反するものとは限らず、一つの作品が複数の項目に当てはまることがある。



サブジャンル



本格ミステリ



推理小説のなかではもっとも一般的でかつ古典的なジャンルである。事件の手がかりをすべてフェアな形で作品中で示し、それと同じ情報をもとに登場人物(広義の探偵)が真相を導き出す形のもの。第二次世界大戦前の日本では、「本格」以外のものは「変格」というジャンルに分類された。なお、本格という呼び方は日本独自のもので、欧米ではフーダニットパズラーと称される(後述)。


本格であるためには、解決の論理性だけではなく手がかりが全て示されること、地の文に虚偽を書かないことが要求される(わざと決定的な事実を明示せず曖昧に表現したり、登場人物の視点から登場人物自身の誤解を記述するのは問題がない)。たとえば、ある作品では列車に乗り合わせた子供の性別が問題になるが、題名にも地の文にも「男の子」「女の子」といった記述は一切なく、伏線として子供の振るまい(特定の玩具に興味を示す)が記述されている。作家はそれが伏線であることを隠蔽する努力も怠っていない。ただし、現代の視点では、ポーの『モルグ街の殺人』には若干アンフェアな記述がある他、アガサ・クリスティの『アクロイド殺し』はフェアかアンフェアかについて、有識者の間で議論を醸した。


エラリー・クイーンの国名シリーズや東野圭吾の『どちらかが彼女を殺した』、『私が彼を殺した』のように「ここまでの部分で、推理に必要な手がかりは全て晒した。さあ犯人(もしくは真相等)を推理してみよ」という「読者への挑戦状」が明示的に含まれる作品もある。密室殺人を始めとした不可能犯罪を扱った作品の多くはこのジャンルに含まれる。



ハードボイルド



「ハードボイルド」と言う言葉そのものは、非常に多面的な意味合いを持つ言葉なのだが、「推理小説」の一ジャンルとして使われる場合には、登場人物(主人公も含めて)の内面描写をあまり行わず、簡潔で客観的な描写を主体とした作品を指す。ダシール・ハメットの作品を嚆矢とする。特徴的なのは、それまでの「推理小説」の主人公は、自ら行動を起こすことはあまりなく、提供されるわずかな手がかりを元に、内面的な思索を深めて事件を解決する、まさに「推理」に重点を置く傾向が強かったのに対して、「ハードボイルド」の主人公は概ね行動的で、自ら率先して捜査を行い、その結果を積み上げて解決に至る傾向にある。そのため、それ以前の「推理小説」と比較して、現実の犯罪捜査に近い。これは、ハメット自身が探偵の経験があり、それを作品に生かしたからだと言われている。私立探偵や、それに類似する職業が主人公に選ばれることが多いためPI(私立探偵)小説と呼ばれることもあるが、必ずしも同じものではない。レイモンド・チャンドラーの作品が有名。



ソフトボイルド


私立探偵や刑事が主人公であっても、ハードボイルドのように非情さを前面に出さない作品のこと。E・S・ガードナーの一部の作品など。



コージー・ミステリ



ハードボイルドの反義語で暴力的表現や非日常性を極力排除した作品。主人公が警察官や私立探偵ではない、素人探偵であるのも大きな特徴。代表作はアガサ・クリスティのミス・マープルシリーズなど。狭義には女性向けの「気楽に読める」内容のコメディミステリをいう。



犯罪心理小説


犯罪者の内面に目を向け、殺人に至る過程を描いたもの。倒叙から派生した。フランシス・アイルズ(アントニー・バークリー)『殺意』、ジム・トンプスン『内なる殺人者』など。



法廷推理小説



法廷が舞台のもの。検事や弁護士が主人公となって、被告人の犯行を立証したり、逆に無実を証明して真犯人を暴きだしたりする過程が描かれる。必ずしも法廷が主要な舞台となるとは限らないため、リーガル・サスペンスとも呼ばれる。E・S・ガードナーが書いたペリー・メイスンシリーズ、和久峻三の『赤かぶ検事奮戦記』シリーズ、ゲームの『逆転裁判』シリーズなど。



警察小説



警察官が主人公であるもの。謎解きそのものより警察の捜査活動の描写に重点が置かれる。警察官でありながら組織に反発する者が主人公だったり警察組織内部の情勢や暗部を題材としたものもある。必ずしも推理小説であるとは限らず、アクション、サスペンスの要素に重点を置くもの、警察組織への風刺をこめたもの、逮捕後に法廷ものへ移行するもの、交番勤務など地味な活動に焦点を当てたものなど様々な作品がある。エド・マクベインの87分署シリーズなど。


科学捜査を主題とした作品では鑑識官や法医学者が科学・医学の知識を元に推理する作品もある。シャーロック・ホームズシリーズでも医師であるワトソンが証拠調べとして補助することはあったが、探偵役となるのは同時期にライバル誌で連載していた法医学者のジョン・イヴリン・ソーンダイクが活躍する作品が初期の例とされる。ジャンルの初期からあるが科学の進歩により新しい捜査手法が登場しており、最新の知見を反映した作品が定期的に発表されている。



時代ミステリ


過去の時代を舞台としたもの。しばしば史実上の実在人物が探偵役やワトスン役、容疑者や犯人役をつとめる。日本では特に江戸時代を舞台にした「名奉行もの(お白州もの)」や「捕物帳」といったジャンルがある。「捕物帳」は岡本綺堂の『半七捕物帳』を嚆矢とし、緊密な構成をもった本格物から江戸風俗の描写に力を入れたものまで幅広い。歴史ミステリと特に区別なく使用されることがしばしばある。


シャーロック・ホームズシリーズのように長く人気を保ち、後代の作家によって続編が書かれつづけた結果、時代ものとしての一面も持つに至った作品もある。



歴史ミステリ


歴史上の謎に、現代の探偵役が資料などを元に取り組むもの。史実における謎を真面目に取り扱った作品も存在するが、多くはフィクションとしての面白さを狙った奇抜な回答が用意されることになる。純粋に歴史上の謎のみを解決することは少なく、ほとんどの作品では探偵役と同時代の犯罪事件の解決も付随している。ジョセフィン・テイの『時の娘』が有名。



ホラー



恐怖を主題としたものを指すが、恐怖の様相を捜査や論理的な推理によって暴き出せば推理小説になりうる。殊にモダンホラーやサイコホラーといった、人間性や異常心理への恐怖を扱ったホラー作品では作例が多い。



スパイ小説



スパイと政府の緊迫した関係を描くもの。エスピオナージュともいう。現実的な国際謀略を描いたものから、荒唐無稽なアクションまで多彩な作品が書かれており、前者の代表例はジョン・ル・カレのスマイリー・シリーズ、ロバート・ラドラムのボーン三部作、トム・クランシーのジャック・ライアン・シリーズ、フレデリック・フォーサイスのドキュメント・スリラー。後者の代表例としてはイアン・フレミングのジェームズ・ボンド・シリーズが有名。



奇妙な味



推理小説とも怪奇小説ともつかない奇妙なもの。推理作家でない作家が書くことが多い。ロアルド・ダールの短編が有名。



日本独自のサブジャンル



社会派



一般に、社会性のある題材を扱い、作品世界のリアリティを重んじる作風を指す。事件そのものに加え、事件の背景を綿密に描くのが特徴。日本では1960年代から長らく主流が続いた。松本清張の作品がその代表とされる。1990年代以降は高村薫がこの代表である。



新本格ミステリ



字義としては「新たな本格」であり、ミステリ史上いくつかの使用例があるが、日本では特に、1980年代後半から90年代にかけてデビューした一部の若手作家による作品群を指すことが多い。綾辻行人、有栖川有栖、法月綸太郎等がこの代表である。各作家による差異はあるが、一般に古典的ミステリに倣った作風を特徴とする。ただし「新本格」という用語にはこれ以前にも別の用例があり、またミステリの拡散状況もあって、現在では歴史的な用語に近くなっている。



叙述トリック


小説という形式自体の暗黙の前提や偏見を利用したトリック(→トリック (推理小説)#叙述トリック)。下記メタミステリとの関係が深い。日本では折原一が好んで用いている。



メタミステリ


推理小説の形式自体を題材にした、あるいは利用した推理小説。曖昧に使われているが、広くいえば言語の自己言及性そのものに謎を見出す作品。小説中にAとBの2つの部分が交互に現れ、Aに現れる登場人物がBを、Bに現れる登場人物がAを執筆しているという合わせ鏡的プロットや、作中作を利用した再帰的構造の一番奥の部分が、全体の枠組みに言及する循環構造プロット、「読者が犯人」「著者が犯人」「出版者が犯人」など商品としての書物自体を含んだプロットなどが挙げられる。メタフィクション参照。


本格作品(前述)の〈手がかりをすべて作中に示す〉ことが作中でどのように保証されるかを問題にしたプロット(「本格」としての解決の後、それが実は作中作であって、後日談があって、新たな捜査の進展があって、意外な真相がさらに明らかにされる、など)も含まれ、この種の推理小説自体の枠組みに対し疑念を呈する作品を「アンチ・ミステリー」(反推理小説)と呼ぶことがある。



日常の謎



法律に触れるような犯罪ではなく、日常生活の中でふと目にした不思議な現象などについて、その理由・真相を探るもの。代表的な作家に北村薫、加納朋子等がいる。



青春ミステリ



主人公もしくはそれに近い人物に、思春期・青年期を迎えた人物を配したミステリー。多くは小説の進行に伴って、主人公及びその周辺の人物の成長が描かれる。学園ミステリーの多くを包含する。当初ライトノベルやジュブナイル小説として発表された推理小説は、多くがここに属す。古典的な代表作に赤川次郎の『セーラー服と機関銃』、小峰元『アルキメデスは手を汚さない』、栗本薫『ぼくらの時代』等があり、2000年代以降の書き手では米澤穂信、辻村深月などが著名である。


米澤穂信の「〈小市民〉シリーズ」、「〈古典部〉シリーズ」のようなコミカルな「日常の謎」系の作品から桜庭一樹の『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』のように陰惨なテーマを扱ったもの、ごく普通の少女だった主人公が如何に推理力を育てたかを描く松岡圭祐の『万能鑑定士Qの事件簿』シリーズまで、作風は幅広く存在している。


児童文学との境界が曖昧で、はやみねかおるの「名探偵夢水清志郎事件ノートシリーズ」や松原秀行の「パソコン通信探偵団事件ノートシリーズ」は特に低年齢層に支持されている。推理要素を持つ海外の作品にはエーリッヒ・ケストナーの『エーミールと探偵たち』、ドナルド・ソボルの「少年探偵ブラウンシリーズ」などがあるが、一般に児童文学に分類される。







トラベル・ミステリ


広義には、有名な観光地を舞台にするなど、探偵役が何らかの形で観光に関わる作品を指す。旅先の情景や風土といった旅行記的な要素も人気の一因で、テレビドラマや映画など、映像化に適したジャンルでもあり、その面での傑作も多い。日本では特に西村京太郎の多作によって、人気ジャンルの一つになっている。


狭義には、鉄道や航空機などの交通手段を用い、その運行予定表の裏をかいたアリバイ工作の登場する作品。「時刻表トリック」「時刻表もの」などとも言う。日本では鉄道を始め、公共輸送機関の定時性が極めて高く、国民の間で広く利用されていることが、このジャンルの成立と人気を支えている(逆に、公共輸送機関があまり利用されず、その定時性も低い欧米ではあまり普及していない)。


松本清張は社会派とされるが、代表作のひとつ、「点と線」は、時刻表ミステリの先駆的作品といえる。



バカミス



日本における分類の1つで、リアリズムを意図的に無視したトリックなど結末の「バカバカしさを重視するミステリー」と、結末を知って「そんなバカな!!と驚くようなミステリー」の二つを意味が混在している。前者の意味での代表作は蘇部健一の『六枚のとんかつ』など。



イヤミス


読むと嫌な気分になるミステリー、後味の悪いミステリーのこと。代表的な作家に湊かなえ、沼田まほかる、真梨幸子、秋吉理香子、歌野晶午らがいる。イヤミスという言葉を最初に使ったのは、霜月蒼とされ[46]、『本の雑誌』2007年1月号で「このイヤミスに震えろ!」というタイトルの連載がスタートしている[47]



推理小説の用語



探偵役


犯人を捜したり推理する人物を指す用語。


推理小説には、いわゆる「名探偵」が登場して事件を解決することが多いが、専業の探偵の登場しない推理小説も多い。このため、警察官や検事、弁護士なども含めて、推理小説における謎を解決する人物の総称として「探偵役」と表記する場合もある。特にその探偵役が主婦や学生などの場合は、(いわゆる「日常の謎」派の探偵をのぞき)「素人探偵」と呼ぶことがある。



ワトスン役


探偵役の助手や相棒、物語の語り部となる人物を指す用語。語源は『シャーロック・ホームズシリーズ』において、探偵役のシャーロック・ホームズの相棒であり語り部でもあるジョン・H・ワトスンから。


シャーロック・ホームズシリーズが商業的に成功した理由の一つとして、ホームズの奇抜な行動や核心となる手がかりをワトスンの視点で描写することにより、ホームズが推理を披露するまで読者の興味を引きつけたままに出来たことがあげられる。この形式はシャーロック・ホームズシリーズ以後、多くの推理小説で踏襲されたため「ワトスンと同等の役割」から「ワトスン役」と呼ばれることとなった。


探偵役と違い必須の役回りではないため、ワトスン役が存在しない作品も多い。一方で、シリーズ作品の中には普段ワトスン役の人物が探偵役となるエピソードや、探偵役が主人公でワトスン役は毎回別人、逆にワトスン役が主人公で探偵役が毎回別人など、変則的な設定の作品も存在する。(ワトスン役が毎回同じで、犯人も毎回同じなのはロード・ダンセイニ(ダンセイニ卿)の初期シリーズ作品[48])。



フーダニット、ハウダニット、ホワイダニット


事件の解明に必要な要素である犯人、犯行方法、動機のうち、どれの解明を重視するかによる分類。この3つの分類は、推理小説の興味の対象が、単なる犯人当てからトリックの面白さへと移り変わり、そして社会派へつながる動機重視に変わっていく、という推理小説の発展史と重なる。



フーダニット (Whodunit = Who (had) done it)


犯人は誰なのかを推理するのに重点を置いていること。

探偵役が多数の容疑者から真犯人を探り当てる過程を重視した形式で、クローズド・サークル(後述)における犯人当てや、警察小説での聞き込み捜査などが当てはまる。

ハウダニット (Howdunit = How (had) done it)


どのように犯罪を成し遂げたのかを推理するのに重点を置いていること。

犯人探しではなくトリックの解明を推理する過程を重視した形式で、法廷推理小説におけるアリバイ崩しやトラベル・ミステリにおける時刻表を利用したトリックの解明などが当てはまる。

ホワイダニット (Whydunit = Why (had) done it)


なぜ犯行に至ったのかを推理するのに重点を置いていること。

犯行方法ではなく犯人像のプロファイリングや動機の解明を重視した形式で、犯罪者である主人公の内面描写を重視した犯罪心理小説や、犯罪捜査の描写を重視した警察小説などが当てはまる。また警察小説や法廷推理小説には物語途中で犯人が捕まり、取り調べや裁判における動機の解明を主題とする作品もある。


これらは相反する要素ではなく、二つもしくは全てを追求する作品もある。特に「密室もの」では、密室を構成するトリックの解明と犯行に及んだ人物の推理を平行して行う作品が多い。



クローズド・サークル



なんらかの事情で外界とは隔絶された状況下で事件が起こるストーリー。過去の代表例から「嵐の孤島もの」「吹雪の山荘もの」などとも呼ばれる。アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』が代表作。


孤立した環境下ということで現実的な警察機関の介入、科学的捜査を排し、また容疑者の幅を作中の登場人物に限定できることから、より純粋に「犯人当て」の面白味を描ける利点があり、本格派(上述)志向の作者や読者から好まれる傾向がある。一方で探偵役やワトスン役も含めて、登場人物はみな、警察機関の保護を頼れないまま殺人犯(かもしれない人物)と過ごすことになり、そうした心理サスペンスを盛り込んだ作品も多い。


「犯人が自分の犯行に気付いた相手をやむをえず殺害することになる」などの理由付けによって、連続殺人事件へ発展する場合が多い。その場合、犯行が進むにつれ、生存者が減少し、その中に犯人がいる(はずである)こともサスペンスを呼ぶ。


逆に言えば犯人にとっては「容疑者が限定される状況」で犯行を繰り広げるということであるため、なぜわざわざそうした危険を冒すのかという批判もあるが、それにいかに「合理的な動機」を与えるかもこのジャンルの醍醐味といえる。ストーリーによっては途中で殺害された人間の中に自殺した犯人がいて、その後の犯行は機械的なブービートラップなどにより行われた、といったものもある。


“誰が犯人なのか”も醍醐味の一つであるが、クローズド・サークル最大の特徴は大きな恐怖やスリル感であるために、それを如実に表すことのできる映画やテレビドラマなどの映像作品でも多用される。また、「素人探偵が警察を差し置いて犯人探しに取り組む」ことの理由付けが容易であることもあってか、「金田一少年の事件簿」や「名探偵コナン」など、少年探偵の活躍するコミック作品にも多く見られる。



パズル・ミステリ


事件そのものの推理よりも暗号やパズルなどの謎解きに重点が置かれるもの。論理クイズ(ロジックパズル)をそのまま小説にしたような作品も多い。そのため、舞台設定や状況は謎解きのオマケで重要な要素ではなく、謎を成立させるために非現実的なことがしばしばある(たとえば、1人は必ず嘘をつき、もう1人は必ず真実を話す双子など)。アイザック・アシモフの『ユニオンクラブ奇談』シリーズが代表的である。[要出典]


なお、英語圏での分類である「パズラー(Puzzler)」「パズル・ストーリー(Puzzle Story)」は、ここでいうパズル・ミステリではなく、日本語での分類に則せば「本格」に近い(しばしば同一のものと見なされる)。



倒叙(とうじょ)


通常の推理小説では、まず犯行の結果のみが描かれ、探偵役の捜査によって犯人と犯行(トリック)を明らかにしていく。しかし倒叙形式では、初めに犯人を主軸に描写がなされ、読者は犯人と犯行過程がわかった上で物語が展開される。その上で、探偵役がどのようにして犯行を見抜くのか(犯人はどこから足が付くのか)、どのようにして犯人を追い詰めるのか(探偵と犯人のやり取り)が物語の主旨となる。また、先に犯人にスポットが当たることにより、一般的に尺が短くなりがちな動機の描写において、何故、犯行に至ったのかという点を強く描写することが可能である。さらに映像作品では「大物俳優に犯人役を演じさせたくても、下手をすれば配役だけで犯人がわかってしまう」、連続ドラマでは「俳優の演技に影響しないようにするために、(真相が明らかになる)最終回まで犯人が誰かを俳優達に明らかにしないことで、犯人とされた登場人物の役の俳優の演技が最終回とそれ以前とで矛盾が生じる」というジレンマを解決できる。英語ではinverted detective story(逆さまの推理小説の意)、howcatchem(how catch them:どうやって彼(ら)を捕まえるかの意)と呼ばれる。倒叙のうち、犯人は示されるがそのトリックや動機などが最後まで明かされないものを「半倒叙」と呼ぶことがある。


オースティン・フリーマンの短編集『歌う白骨』でこの手法が初めて用いられた。ただし、ポーも倒叙ミステリとしても読める『黒猫』や『告げ口心臓』を著しているなど、推理小説そのものの歴史と同様に、その最初をどこに置くかについては、諸説ある。


1920年代から1930年代に全盛期を迎え、なかでもフランシス・アイルズ(アントニー・バークリー)の『殺意』、F・W・クロフツの『クロイドン発12時30分』、リチャード・ハルの『伯母殺人事件』は倒叙三大名作と呼ばれた。テレビドラマ作品では『刑事コロンボシリーズ』や『古畑任三郎シリーズ』などがある。



安楽椅子探偵小説



探偵が事件現場に赴くことなく、情報として与えられた手がかりのみで事件を解決する作品を安楽椅子探偵(アームチェア・ディテクティブ)という。構造的にメロドラマ要素を描く必要がなく、論理的推理に特化することができるため、推理小説の極北とも言われるが、厳密にデータのみで勝負している作品は少ない。バロネス・オルツィの「隅の老人」シリーズ、アイザック・アシモフの「黒後家蜘蛛の会」シリーズ、レックス・スタウトの「ネロ・ウルフ」シリーズなどが代表作[要出典]



多重解決


1つの事件に対して、何通りもの解決が並立的に与えられる趣向。どんでん返しの一種。代表作として、アントニー・バークリー『毒入りチョコレート事件』などがある。通常は複数の探偵によって異なる解決が与えられるが、三津田信三『刀城言耶シリーズ』などのように、単独の探偵による場合もある[49][50]。芥川龍之介の『藪の中』もある種の多重解決である。



ファンタジー/SF



魔術師や超能力者が存在する状況、死者が甦る状況、宇宙の果てを航行する宇宙船の中、人類と異なる思考体系の知性体との共同社会など、現実世界ではありえない状況・環境を許容する世界観の中で発生した事件について、その世界観の下で論理的な捜査と考察を行えば推理小説になりうる。ロボットの殺人を禁じたロボット工学三原則を逆手に取ったアシモフの『鋼鉄都市』や、同じ一日を9回繰り返してしまうという特異体質の持ち主である少年が主人公の「七回死んだ男」や「神麻嗣子の超能力事件簿」シリーズなどで著名の西澤保彦の諸作がSFミステリの好例である。ファンタジーミステリとしては、密室で魔法使いが殺されたという事件を扱ったランドル・ギャレットの『魔術師が多すぎる』、国内作家としては、『ソード・ワールド短編集』の、マジックアイテムを用いた殺人事件を「嘘看破」の呪文を駆使して捜査する山本弘の「死者は弁明せず」「ゴーレムは証言せず」、ドワーフの自称名探偵が事件に首を突っ込む高井信の「迷探偵デュダ」シリーズ等がある。



サスペンス



読者の不安感を煽るもの。スパイ小説も広くはここに含まれる。必ずしも推理小説であるとは限らない。ウィリアム・アイリッシュ『幻の女』など。



スリラー



サスペンスよりも恐怖感を煽るもの。ホラー小説も広くはここに含まれる。サスペンス同様必ずしも推理小説とは限らない。



「推理小説」というジャンル名


日本ではかつて英語の“Detective Novel”、“Detective Fiction”の訳語として探偵小説が用いられていたが、第二次大戦後、「偵」の字が当用漢字に入れられなかったため、「探てい小説」と混ぜ書きで書くことになった。しかし、これを「みっともない」として「推理小説」という言葉が作られ、一般的になった[要出典]。1946年に雄鳥社が「推理小説叢書」を発刊した時に、その監修者の木々高太郎が命名したという説もある。「偵」の字は1954年の当用漢字補正案で当用漢字に入れられたが、既に「推理小説」という言葉が広まっており、「探偵小説」に戻されることはなかった。「探偵小説」は、ジャンル名としては廃れていったものの、ロマン的な響きを持つため、未だ愛用している者も多い。または「名探偵」による推理と解決が中心であった時期の作品に限定して使う事もある。


また、「ミステリー小説」(あるいは「ミステリ小説」)、もしくは単に「ミステリー(ミステリ)」とも呼ばれる。



推理作家



推理小説を著す作家は、推理作家、ミステリ作家などと呼ばれる。推理小説を専業にする作家と、他のジャンルの小説をも同時に手がける作家との2つに大きく分けられる。近年では、作家本人は推理小説を書いている意識がないのにもかかわらず、読者や評論家から推理作家に分類される場合があるなど、書き手と読み手との意識のずれもみられる。著名な作家については推理作家一覧を参照のこと。



典型的な道具立て



  • トリック


  • 密室
    • 密室殺人


  • ダイイング・メッセージ

  • アリバイ

  • クローズド・サークル

  • 見立て殺人



推理小説の賞




日本国内



年間最優秀作品の表彰



  • 日本推理作家協会賞

  • 本格ミステリ大賞

  • 翻訳ミステリー大賞


  • 大藪春彦賞(推理小説に限らない)




個人に対する表彰


  • 日本ミステリー文学大賞



公募新人賞



  • 長編

    • 江戸川乱歩賞

    • 横溝正史ミステリ大賞

    • 鮎川哲也賞

    • 日本ミステリー文学大賞新人賞

    • 『このミステリーがすごい!』大賞

    • ばらのまち福山ミステリー文学新人賞

    • アガサ・クリスティー賞


    • 松本清張賞(募集は推理小説に限らない)


    • メフィスト賞(募集は推理小説に限らないが、推理小説の受賞が多い)



  • 短編

    • 小説推理新人賞

    • ミステリーズ!新人賞

    • 北区 内田康夫ミステリー文学賞







海外


海外における推理小説の賞あるいは推理作家団体が主催する賞については、
「推理小説の賞#日本以外」もしくは「推理作家#推理作家の団体」を参照



推理小説の番付を行っている本・雑誌



  • このミステリーがすごい!

  • 本格ミステリ・ベスト10

  • 本格ミステリこれがベストだ!


  • 本格ミステリー・ワールド(黄金の本格)

  • ミステリが読みたい!

  • 週刊文春ミステリーベスト10

  • 文庫翻訳ミステリー・ベスト10



推理小説を主に扱っているレーベル



四六判



  • ミステリ・フロンティア

  • ハヤカワ・ミステリワールド

  • ミステリー・リーグ



ノベルズ



  • 講談社ノベルス

  • カッパ・ノベルス

  • ハヤカワ・ポケット・ミステリ

  • ジョイ・ノベルス



文庫判




  • 講談社文庫 - メフィスト賞受賞作家の作品などが収められる。


  • 宝島社文庫 - 『このミステリーがすごい!』大賞受賞作家の作品などが収められる。

  • 創元推理文庫

  • ハヤカワ文庫



脚注



  1. ^ ab山村正夫『推理文壇戦後史』p.87(双葉社、1973年)


  2. ^ 『グレアムズ・マガジン』1841.4


  3. ^ 早川書房「名探偵登場1」巻末解説(ハヤカワポケットミステリ250、1956年)


  4. ^ 厳密には、作中に登場する「ムーンストーン」は月長石ではなく、黄色い透明のダイヤモンドである。


  5. ^ シーリー・リジェスター著「The Dead Letter」(1866)が先という異説あり


  6. ^ 「トフ氏と黒衣の女」論創社 論創海外ミステリ1('04)裏表紙解説。クリーシーは12のペンネームを使い、短編集と非ミステリの普通小説も合わせると、出版された作品は600冊を超す


  7. ^ 「ハーフペニー・マーベル(Halfpenny Marvel)」誌6号(1893年12月10日)


  8. ^ 『太陽がいっぱい』(1960年)および『リプリー』(1999年)


  9. ^ 詐欺師のクレイ大佐のシリーズとも言えるが、表題は騙される大富豪チャールズ・ヴァンドリフトを指し、物語も被害者側からの視点で語られている。


  10. ^ 表題は調味料セールスマン(行商人)のスミザーズが語る物語を意味する。彼が出会った殺人や、引退した警部から聞いた事件を語るもの。日本では第一短編「二壜の調味料」が多くのアンソロジーに収録。


  11. ^ 英米版で原題が異なるため、「雲をつかむ死」の邦題もあり。


  12. ^ 1934年の最初の歴史ミステリ Devil Kinsmere を後年書き直した長編


  13. ^ ドイツ・北欧ミステリが流行するのは21世紀(早川書房で翻訳が増え、ミステリマガジンで特集)


  14. ^ 「アガサ・クリスティー自伝 上 」(ハヤカワ文庫 クリスティー文庫)など


  15. ^ それまでは、「ダートムア小説」とも呼ばれる一連の「田園小説」で有名。推理もの第一長編「灰色の部屋」の前に、ミステリ要素のある「吝嗇家の隠し金」(1920年)があるが未訳


  16. ^ Twentieth Century Crime & Mystery Writers 」by John M. Reilly (St James Guide 1980)


  17. ^ 「大統領殺人事件」を書いたジョルジュ・ミシェルの100歳が最高齢と言われる(「赤毛のレドメイン家」解説:長谷部史親・折原一)


  18. ^ 20世紀末の日本で綾辻行人を嚆矢とした、海外のクイーンやカーを再現したような「本格」派を、海外作家と区別して「日本の新本格派」とも呼ばれることがある


  19. ^ アルフレッド・ヒッチコック監督「裏窓」('54)


  20. ^ バーバラ・ヴァイン名義のサイコスリラー長編はCWA賞ゴールド・ダガー賞を複数回受賞している。


  21. ^ 直訳は「赤い収穫」だが、「血の収穫」の邦題もあり。


  22. ^ グレゴリー・ペックとロバート・ミッチャム、マーティン・バルサムはリメイクの『ケイプ・フィアー』で、前作とは正反対の役でカメオ出演している


  23. ^ 近年の翻訳が村上春樹の訳である事も一つの要因(「さよなら、愛しい人」解説)でもある


  24. ^ Pronzini, Bill and Adrian, Jack (editors)(1995). Hard-Boiled, An Anthology of American Crime Stories, Oxford University Press, Inc., 1995, p.169.


  25. ^ 「3F」のFは「female」を指す。


  26. ^ 日本語訳では文庫本も同様の趣向(中央公論社)


  27. ^ フレミングの「死ぬのは奴らだ」(Live And Let Die )のもじり。


  28. ^ フレミング原作から引き続きDr.No と、007映画から殺し屋「ジョーズ」などがシリーズを通じて悪役で登場。「ジェームズ・ボンドJr」としてアニメ化。Marvel Comicsで漫画化。


  29. ^ 島田一男「世界の四隅」(『探偵作家クラブ会報』第27号(1949年8月)


  30. ^ 早川書房「非英語圏ミステリ」(『ミステリマガジン』2011年9月号)


  31. ^ 江戸川乱歩「探偵作家クラブ会報第33号(1950年2月)」


  32. ^ 論創社「魔人」(祖田 律男・訳、論創海外ミステリ127、2014年)


  33. ^ 複数の作家による合同企画で1951年(昭和26年)3月から京都新聞に連載された『黒門町の傳七捕物帳』が基になっており、その「新作」として陣出が『伝七捕物帳』を執筆しているため、完全なオリジナル作品ではない。


  34. ^ 探偵小説専門誌『幻影城』での中井英夫による記事など


  35. ^ 木々高太郎が考案した「頭脳パン」も今日でも製造、販売されている。


  36. ^ 第3回江戸川乱歩賞での選考委員であった乱歩の選評


  37. ^ クリスチアナ・ブランドやニコラス・ブレイク、エドマンド・クリスピンらポスト黄金時代のトリッキーな作家群を江戸川乱歩は「新本格派」と命名している。


  38. ^ 『コズミック 水』 講談社文庫、2000年5月15日、p.546 解説より


  39. ^ 第26巻以降は、ボワロー=ナルスジャック原作のルパンもの。


  40. ^ モーリス・ルブランの短編「地獄のわな」と「麦わらのストロー」のプロットやトリックが物語の導入部にある。


  41. ^ 作者は前書きや物語の冒頭で、「意外な犯人」を書くことを宣言している。


  42. ^ 『このライトノベルがすごい!2006』27頁。


  43. ^ 作者は東京出身だが、内田の父が長野県長野市出身。


  44. ^ 舞台は愛知県にある妃真加島(ひまかじま)。主人公の犀川創平はN大学(テレビアニメでは国立那古野大学)で教えている設定。


  45. ^ テレビドラマ『牟田刑事官事件ファイル』では、主役の牟田警視は神奈川県警察本部に所属し、横浜市内の警察署に勤務する設定に変更されている。


  46. ^ アガサ・クリスティー攻略作戦 第七十七回(執筆者・霜月蒼)


  47. ^ 本の雑誌2007年1月 湯豆腐転覆号 - 今月の本の雑誌


  48. ^ 調味料セールスマン(行商人)のスミザーズが語るシリーズだが、わが国では最初の「二壜の調味料」(The Two Bottles of Relish )のみ知られている。次の「スラッガー刑事の射殺」は前作の事件を捜査し、語り手とともに現場を訪れた警察官が被害者になっている。


  49. ^ シリーズ 本格ミステリ入門 海外編 | 習志野高校図書館ホームページ連載企画


  50. ^ 学生ファンの主張 第1限:エンタメ小説 東京大学 新月お茶の会 | SUGOI JAPAN Award2016



参考文献



  • 畔上道雄『推理小説を科学する-ポーから松本清張まで』(『ブルーバックス』B-532)、講談社、1983年4月。ISBN 4-06-118132-7

  • 権田萬治・新保博久監修『日本ミステリー事典』(『新潮選書』)、新潮社、2000年2月。ISBN 4-10-600581-6

  • 権田萬治監修『海外ミステリー事典』(『新潮選書』)、新潮社、2000年2月。ISBN 4-10-600582-4


  • 高橋哲雄『ミステリーの社会学-近代的「気晴らし」の条件』(『中公新書』940)、中央公論社、1989年9月。ISBN 4-12-100940-1

  • 森英俊編著『世界ミステリ作家事典[本格派篇]』、国書刊行会、1998年1月。ISBN 4-336-04052-4

  • 森英俊編『世界ミステリ作家事典[ハードボイルド・警察小説・サスペンス篇]』、国書刊行会、2003年12月。ISBN 4-336-04527-5

  • ハワード・ヘイクラフト編(仁賀克雄編・訳)『ミステリの美学』、成甲書房、2003年3月。ISBN 4-88086-143-X



関連項目




  • 推理作家(推理作家一覧)

  • 世界の推理小説雑誌一覧

  • 英語版Wikipedia - 日本語版Wikipedia「推理小説」に対応する項目

    • en:Crime fiction


    • en:Detective fiction(Crime fictionの1つで、プロアマ問わず探偵役が登場するもの)


    • en:Mystery fiction(Crime fictionと重なるが、狭義にはDetective fictionの中で、謎の論理的解決に重点のあるものを指す(ハードボイルドなどと対比して))
      • en:Japanese detective fiction








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