ワープ









「ワープ / warp」は、空想科学小説及び映画など、サイエンス・フィクションを題材にしたドラマ等で使用される「超光速(FTL/Faster Than Light)航法」の俗称。なお「超光速(FTL/Faster Than Light)航法」という語句も全く同程度に俗称である。




目次






  • 1 概要


  • 2 物理理論


  • 3 フィクションにおけるワープの分類


    • 3.1 空間歪曲型ワープ


    • 3.2 通常推進型ワープ


    • 3.3 並行宇宙型ワープ


    • 3.4 ワームホール型ワープ




  • 4 関連作品


  • 5 関連項目


  • 6 外部リンク


  • 7 脚注





概要


日本では1974年のテレビアニメ『宇宙戦艦ヤマト』のヒットで広く知られるようになったが、アメリカでは1966年開始のテレビドラマ『スタートレック』シリーズの "Warp drive" で知られるようになった用語である。日本においては超光速航法や瞬間移動(テレポーテーション)のことを総じて「ワープ」と呼ぶようになり、多くの超光速航法や瞬間移動などの超力学的で特殊な移動手段を指す言葉として、SFファンにもそうでない人々にも使われている。そのため、ワープという言葉の指すFTL航法は形態・原理ともにSF作品によって大きく異なっている。


英語の発音としては、「戦争」の「ウォー」と同じで、カタカナでは「ウォープ」とするのが近いが、日本の初期のSFで「ワープ」と書かれたうえ、『宇宙戦艦ヤマト』で一般にも広く「ワープ」で定着してしまった。



物理理論


(この節の記述は超光速航法とも重なる)


力学や相対論において、実数や要素が実数であるベクトルで表される質量や速度を負にしたり、複素数にしたりすることによって、数式上は既存の物理理論と整合性を保ったまま、光速を越えることが可能であることが理論的には示される。もっとも「負の質量」や「複素数の速度」を持った物質(エキゾチック物質と総称される。具体的にはタキオンなどのこと)の存在を検証する方法は分かっていない。また単純に、光速を越えることを考えると因果律に反したことが起こるように見える。 アルクビエレ・ドライブは 負の質量によるアインシュタイン方程式の解の例である。



フィクションにおけるワープの分類


(以下の記述は、いずれも学術的なものではない。また多くの作品における本来の設定からの「解釈」が含まれている)



空間歪曲型ワープ


『宇宙戦艦ヤマト』で見られるタイプのワープで、極めて単純に言えば、宇宙空間内のある点AからBへ移動する際に宇宙の「外」へ飛び出して近道をするのがワープである。この原理はしばしば、紙自体を折り曲げて紙の上に書かれた2点を近づけるという例えで説明される。つまり、紙という平面(2次元)での距離は変わらなくても、空間(3次元)内では接近している。ここで紙(宇宙)から飛び出せばずっと短い距離で到達できるというわけである。


『宇宙戦艦ヤマト』の場合、宇宙空間が初めから4次元的に“曲がっている”ことを利用して近道しているが、作品によっては紙を折り曲げるように宇宙空間そのものを歪曲(これがワープの語源である)させて現在位置と目的地を4次元的に近づけることになっているものもある。空間を折り曲げたり突き抜けたりする理論的根拠としては、アインシュタインの唱えた一般相対性理論や量子力学のトンネル効果などが作品中で言及されている。


このワープは出口となる場所にデブリがあった場合、艦に致命的なダメージを与えてしまうため1回のジャンプに対し厳密な測定と計算が必要になるものの、速度的には極めて速く、このワープを繰り返すことでヤマトは148000光年彼方の惑星イスカンダルまで半年程度で到達している。


なお、この種のアイディアには、空間の歪みを利用しない瞬間移動型のものを「リープ航法」「ジャンプ航法」(いずれも「跳躍航法」の意)、高次元空間(ハイパースペース)からショートカットするものを「ハイパー航法」と区別することもある。ジャンプ航法はロバート・A・ハインラインの Starman Jones(1953年)におけるHorst Transitionが初出であり、四次元空間を通り三次元空間でショートカットするハイパー航法はジョン・W・キャンベルのIslands of Space(1931年)で最初にアイデアが小説化された。


『ドラえもん』においては、劇場版『のび太の宇宙開拓史』にてコーヤコーヤ星のロップルの宇宙船がこのタイプのワープで移動中に事故に遭い、宇宙船内のドアとのび太の部屋がつながるというストーリーであった。



通常推進型ワープ


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『スタートレック』シリーズのワープドライブは光速の数百倍の速度で宇宙空間を順当に移動するタイプのワープである。ワープドライブは2063年にアメリカのモンタナ州でゼフレム・コクレーン博士により発明された。


相対性理論によると、この宇宙空間においてあらゆる物体は光速を超えるスピードを出すことができない。もし加速を続けた場合、その物体の質量は速度が光速に近づくほど無限大に向かって増え続け、さらに時間の遅れといった奇妙な現象が発生してしまう(光の速度は観測者がどんな速度で移動していようが常に一定であるため)。そこで『スタートレック』劇中では「亜空間(Subspace)」という架空の場(電磁場のようなもの)を設定している。亜空間の内部では物質の質量は逆に小さくなり、相対性理論が通用しなくなるというものである。


亜空間(Subspace)は宇宙空間(Space)と表裏一体の関係であり、通常は亜空間が表に出ることはなく認知することができないものの、何らかの原因で「亜空間の場(亜空間フィールド)」が自然にも発生し存在する場合もある。さらに亜空間フィールドは亜空間コイル(ワープコイル)という装置にプラズマを注入することで人工的に発生させることができる。加えて亜空間フィールドを1コクレーンのパワーで非対称な泡状に展開すると内部の船はワープ1(光速と等倍速度)の速度で推進する。この「推進型に展開した亜空間フィールドバブル」を「ワープフィールド」と呼ぶ。


宇宙艦のワープナセル(内部にワープコイルが並べられた宇宙艦の翼)から発生したワープフィールドは艦を包み込み、その非対称な形の亜空間の泡は、進行方向に制御可能な微小人工ビッグクランチ(船体前方空間の収縮)、一方、後方でも制御可能な微小人工ビッグバン(船体後方空間の膨張)を発生させることで(川面後方に投石されたボトルシップの如く)推進力を得て光速を突破する。したがってスタートレックの宇宙艦は、光速の数百倍の速度で宇宙空間を純粋に航海する。なおこの時、ワープフィールドが宇宙空間を歪ませ(warp/歪む)ながら推進するため、ワープドライブという名がついた。


また同作ではワープ速度の単位として「ワープファクター(ワープ係数)」という単語が使われる。ワープ係数は宇宙艦が張り出すワープフィールドの枚数によって、その速度が10/3乗ずつ加速していくことから用いられる。ただしワープフィールドは同時に9枚までしか張ることができず、ワープ10は「あらゆる場所に同時に存在する無限大の速度」として不可能領域となっている。なおワープフィールドを多重に張れば張るほど艦のスピードは上がるが、同時にワープコア(ワープエンジン)の負担も指数関数的に増加していく。また係数の小数点以下の数字が大きくなればなるほど同様にエンジン負担は大きくなるため、ワープ1.9での航行よりワープ2での航行のほうがパワー消費は少ない。


よく用いられる巡航ワープ速度は、スタートレック劇中にもっともよく登場する24世紀後期の惑星連邦艦で通常時にワープ5〜6程度、緊急時にワープ9といった運用がされる。最高速度に関しては、ジャン=リュック・ピカード艦長のU.S.S.エンタープライズNCC-1701-Dはワープ9.6の速度を12時間、惑星連邦最速の部類に入るキャスリン・ジェインウェイ艦長のU.S.S.ヴォイジャーNCC-74656はワープ9.975の速度を12時間維持できる。



  • ワープ1(光速の1倍)

  • ワープ2(光速の10倍)

  • ワープ3(光速の39倍)

  • ワープ4(光速の102倍)

  • ワープ5(光速の214倍)/ヘカラス条約による上限速度

  • ワープ6(光速の392倍)

  • ワープ7(光速の656倍)

  • ワープ8(光速の1024倍)

  • ワープ9(光速の1516倍)

  • ワープ9.2(光速の1649倍)

  • ワープ9.6(光速の1909倍)/U.S.S.エンタープライズNCC-1701-Dの最高速度

  • ワープ9.9(光速の3053倍)

  • ワープ9.975(光速の5754倍)/U.S.S.ヴォイジャーNCC-74656の最高速度

  • ワープ9.99(光速の7912倍)

  • ワープ9.9997(光速の198696倍)/亜空間通信速度

  • ワープ9.9999(光速の199516倍)/亜空間通信速度(ブースターリレー使用時)

  • ワープ10(∞)/無限の速度


なおこれらのワープファクターは24世紀が舞台となっている『スタートレック』シリーズ(『新スタートレック』『スタートレック:ディープ・スペース・ナイン』『スタートレック:ヴォイジャー』)に適用されるものである。


22世紀と23世紀とを舞台にしているシリーズ(『スタートレック:エンタープライズ』『スタートレック:ディスカバリー』『宇宙大作戦』)のワープファクターは24世紀式と異なり、ワープスピードは係数の3乗ずつ増加していくというシンプルなものとなっている。これは「旧ワープファクター」と呼ばれており、この場合ワープ10を超える係数が登場する。カーク船長のU.S.S.エンタープライズNCC-1701はTOS69話「無人惑星の謎」で、エンジンのオーバーロードによる過加速で最終的にワープ14.1の速度に達したが、これは24世紀式だとおよそワープ9.7となり、USSヴォイジャーNCC-74656の最高速度ワープ9.975は旧ファクターではおよそワープ18ということになる。



  • 旧ワープ1(光速の1倍)

  • 旧ワープ2(光速の8倍)

  • 旧ワープ3(光速の27倍)

  • 旧ワープ4(光速の64倍)

  • 旧ワープ5(光速の125倍)/22世紀 エンタープライズNX-01の最高速度

  • 旧ワープ5.2(光速の140倍)/エンタープライズNX-01の最高到達速度

  • 旧ワープ6(光速の216倍)

  • 旧ワープ7(光速の343倍)

  • 旧ワープ8(光速の512倍)

  • 旧ワープ9(光速の729倍)/23世紀 U.S.S.エンタープライズNCC-1701の最高速度

  • 旧ワープ10(光速の1000倍)

  • 旧ワープ14.1(光速の2803倍)/U.S.S.エンタープライズNCC-1701の最高到達速度


また『スタートレック』のワープは足が遅いことでも知られ、標準的な巡航速度のワープ6では速度を維持し続けたとしても1年間で392光年しか進むことはできない。50光年の距離の移動に要する時間は、フルインパルス(通常エンジン推力全開)で200年、ワープ6で47日、ワープ9でも12日の旅となる。これは直径10万光年の天の川銀河を旅するどころか、8000光年四方の統治範囲を持つ惑星連邦内の移動にも不十分な速度である。そのため劇中ではワープを遥かに凌駕する速度を実現する夢の技術「トランスワープドライブ」の研究や実験がされる場面をよく目にするが、惑星連邦ではいまだ実現していない。


スタートレック第4のテレビシリーズ『スタートレック:ヴォイジャー』ではこの足の遅い設定を逆手に取り、U.S.S.ヴォイジャーNCC-74656が超常的なパワーで突如、地球から75000光年の彼方の銀河の反対側へ飛ばされ、地球まで70年以上かかる道のりを旅するというロードムービーストーリーとなっている。


ちなみに『スタートレック』のワープは超空間トンネルを通過したり空間をねじ曲げたりするような性質のものではないため、ワープ中の演出は非常にシンプルである。『宇宙大作戦』では通常速度でもワープ中でも宇宙艦の背景の宇宙空間に変化はない。1987年開始のテレビシリーズ『新スタートレック』から2001年開始の『スタートレック:エンタープライズ』では宇宙艦の周囲の宇宙塵や星が針状に変形して後方へ流れていく表現となっている。リブート版初代エンタープライズが登場する劇場版第11〜12作では超空間トンネルを通っているような演出となっているが、つづく第13作と2017年開始のテレビシリーズ『スタートレック:ディスカバリー』においては船体周囲の宇宙空間を歪ませながら高速移動する表現となっている。



並行宇宙型ワープ


一旦、時空の異なる別の並行宇宙へ移動し、また元の宇宙空間へ戻るという物である。時間の流れが異なるため、瞬間移動したように見える。



ワームホール型ワープ


宇宙空間に存在する空間の虫食い穴「量子特異点」を利用することで、はるかに離れた場所に一瞬で移動する超光速移動である。単純に言えば、ブラックホールからホワイトホールへと空間跳躍する航法で、ブラックホールに突入しホワイトホールから出るといったものである。ただしSF作品においては安定性など何らかの問題があるように描かれることが多い。


『スタートレック』シリーズにおいては、『スタートレック:ディープ・スペース・ナイン』にベイジョーワームホールが登場する。主人公のベンジャミン・シスコ中佐指揮の宇宙ステーション・ディープスペースナインのごく近くに発見されたこのワームホールは、宇宙艦を惑星連邦領域のアルファ宇宙域から数万光年離れたガンマ宇宙域まで一瞬で移動させる力を持ち、しかも極めて安定している特別なワームホールであった。ただしこのワームホールはその有用性から、ガンマ宇宙域の危険な種族ドミニオンの侵攻やアルファ宇宙域の交戦的種族カーデシア人らとの長い紛争を招くことになる。


『スタートレック:ヴォイジャー』においては、地球から75000光年彼方のデルタ宇宙域深部に漂流してしまったU.S.S.ヴォイジャーNCC-74656が、帰還を早めるために常にワームホールを探し続けた。VOY7話「ワームホールの崩壊」では地球の属する惑星連邦の隣のロミュラン帝国に通じる直径30cmの微小サイズのワームホールを発見し、転送機での帰還を試みたが、そのワームホールの先は20年前の世界であることが発覚し利用はできなかった。95話「暗黒の汚染空間」では2000光年に渡って星がひとつもない暗黒領域内にて、その領域を一気に飛び越える「渦」を発見し、その利用に成功した。130話「遥か彼方からの声」では、地球の宇宙艦隊技術部のレジナルド・バークレー大尉が、定期的に巡回してくるパルサーにタキオンビームを照射することでマイクロワームホールを一時的に作り出し、それを利用して35000光年離れた位置にいるヴォイジャーへの定期的な通信手段を確立した。



関連作品




  • 宇宙大作戦(スタートレック)


  • 宇宙戦艦ヤマト(ワープ航法)


  • 宇宙の騎士テッカマン(リープ航法)


  • 太陽の牙ダグラム(ワームホール航法)


  • 伝説巨神イデオン(亜空間飛行/DS(デス)ドライブ)


  • トップをねらえ!(次元波動超弦励起縮退半径跳躍重力波超光速航法)


  • To LOVEる -とらぶる-(ぴょんぴょんワープくん)


  • マクロスシリーズ(フォールド航法)


  • 天地無用!(BJ航法)


  • 機動戦艦ナデシコ(ボソンジャンプ)


  • コスモス・エンド(パルスワープ)


  • ロスト・ユニバース(フェイズ・ドライブ)


  • スカーレット・ウィザード(門<ゲート>、ショウ機関(ドライブ))


  • 勇者王ガオガイガー(ESウインドウ、ギャレオリア彗星)


  • 真ゲッターロボ 世界最後の日(ゲッター線を収束させることによるワームホール)


  • 機甲界ガリアン(跳空間転移基「鉄の塔」による「ハイジャンプ」)


  • ミニスカ宇宙海賊(超光速跳躍)


  • ドラえもんの『のび太の宇宙開拓史』でドラえもんとロップルがワープ航法の話をして、のび太が理解できず、ドラえもんは「どこでもドアのようなもの」だと説明していた。藤子・F・不二雄作品では『21エモン』と『キテレツ大百科』で、ワープ航法に関する説明がある。


  • キャサリン・アサロのスコーリア戦史の設定にある超光速航法[1](複素数の速度による特殊相対性理論の解)


  • 銀河英雄伝説(ワープ航法/亜空間跳躍航法)


  • 無責任艦長タイラー(超光速航法/ハイパー・コクーン)


  • 星方武侠アウトロースター(サブイーサドライブ)


  • カウボーイビバップ(位相差空間ゲート)


  • 星界の紋章/星界の戦旗(平面宇宙航法)


  • ギャラクシーエンジェル(クロノ・ドライヴ)


  • スターシップ・オペレーターズ(コヒーレント重力波駆動)


  • シドニアの騎士(亜光速航行)



関連項目



  • SF

  • 超光速航法

  • 瞬間移動

  • 光速


  • 次元
    • 四次元



  • 亜空間  



外部リンク


  • スタートレックのワープ理論:Star Trek科学技術解説


脚注


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  1. ^ キャサリン・アサロ自身による "Complex speeds and special relativity"(1996) が良い解説である。"More on special relativity and complex speeds"(1997) というワークショップでの発表もある。








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