エリスロポエチン
































































EPO
Erythropoietin.png







PDBに登録されている構造
PDB オルソログ検索: RCSB PDBe PDBj



識別子
記号
EPO, EP, MVCD2, erythropoietin, Erythropoietin, ECYT5, DBAL
外部ID OMIM: 133170 MGI: 95407 HomoloGene: 624 GeneCards: EPO


















遺伝子の位置 (ヒト)
7番染色体 (ヒト)
染色体 7番染色体 (ヒト)[1]

7番染色体 (ヒト)
EPO遺伝子の位置

EPO遺伝子の位置

バンド データ無し 開始点 100,720,800 bp[1]
終点 100,723,700 bp[1]























RNA発現パターン

PBB GE EPO 217254 s at fs.png

PBB GE EPO 207257 at fs.png
さらなる参照発現データ















オルソログ
ヒト マウス
Entrez





Ensembl





UniProt





RefSeq
(mRNA)



NM_000799




NM_007942
NM_001312875

RefSeq
(タンパク質)



NP_000790




NP_001299804
NP_031968

場所
(UCSC)
Chr 7: 100.72 – 100.72 Mb Chr 7: 137.48 – 137.53 Mb

PubMed検索
[3] [4]
ウィキデータ



閲覧/編集 ヒト 閲覧/編集 マウス

エリスロポエチン(英語: Erythropoietin; 略称: EPO)とは、赤血球の産生を促進する造血因子の一つ(ホルモンともサイトカインとも)。分子量は約34000、165個のアミノ酸から構成されている。血液中のエリスロポエチン濃度は、貧血、赤血球増加症などの鑑別診断に用いられる。腎性貧血の治療に主に使用されているが、ドーピングにも使用され問題となっている。




目次






  • 1 概要


  • 2 合成と医療での利用


  • 3 ドーピング


  • 4 調節機構


  • 5 分子構造


  • 6 脚注


  • 7 関連項目


  • 8 外部リンク





概要


主に腎臓の尿細管間質細胞で生成され、補助的に肝臓でも作られる。多くが腎臓で産生されていることから、慢性腎不全等の腎機能低下状態になると、エリスロポエチンの不足により腎性貧血に陥る。なお、近年までEPOの産生部位について議論があり、傍糸球体装置や近位尿細管、血管内皮細胞などが候補に挙がっていたが、遺伝子組み換えマウスの解析から尿細管間質細胞と判明した。エリスロポエチンは骨髄中の赤芽球系前駆細胞に作用し、赤血球への分化と増殖を促進することが知られている。



合成と医療での利用




エポエチン ベータ ペゴル


他のタンパク質同様に全合成は困難だったが、2012年にサミュエル・ダニシェフスキーらがネイティブケミカルライゲーション(英語版)を用い、糖鎖を簡略化した形ではあるが初めて全合成に成功した[5]。これらのエリスロポエチン類似化合物は、赤血球造血刺激因子製剤(ESA)と呼ばれる。医薬品としては、エポエチンアルファ(商品名エスポー)、エポエチンベータ(商品名エポジン)といった遺伝子組換えによるエリスロポエチン製剤があり、腎性貧血に用いられる。日本では保険適応上、腎性貧血にのみ用いられているが、欧米では各種悪性疾患にともなう貧血などにも使用される。エポエチン ベータに直鎖メトキシポリエチレングリコール(PEG)分子を化学的に結合させること(PEG化)で長時間の持続作用を実現した製剤も開発されている(ミルセラ:エポエチン ベータ ペゴル)。



ドーピング


エリスロポエチン(EPO)は赤血球の増加効果を持つことから、筋肉への酸素供給量を高め持久力を向上させる目的で、長距離系スポーツ(自転車ロードレース、クロスカントリースキーなど)のドーピングに使用されている[6]。2009年には複数の自転車競技選手からEPOが検出された[7]。また2013年1月には、ツール・ド・フランスで7回優勝したランス・アームストロングがオプラ・ウィンフリーとのインタビューで、かつてEPOを使ったドーピングを行なっていたことを認めた[8]


元来体内に存在する自然物質でその使用の判別が難しいため、ヘマトクリット(血液中に占める血球の容積率)、ヘモグロビン、網状赤血球数などを用いてドーピングのスクリーニングを行っている場合が多い。スクリーニング検査による疑い例は、尿を検体として電気泳動法によって遺伝子組換えEPOを検出している。



調節機構


エリスロポエチンの産生は、血液中の酸素分圧によって調節されている。EPOの転写調節機構はいくつか報告されているが、低酸素応答転写因子であるHIF (hypoxia inducible factors) が代表的なものである。HIFは酸素濃度が高いときには分解され、低酸素のときには核内に移行してEPOの転写を促進する。つまり、慢性的な低酸素状態となった時にEPOの産生が促進されるのである。したがって、貧血などでもEPOの産生は促進される。


EPOは赤血球上のエリスロポエチン受容体(英語版) (EpoR) に結合し、ヤーヌスキナーゼ2(JAK2)を活性化する。このEpoRは多くの骨髄細胞、白血球、末梢・中枢神経に発現しており、Epoに結合することで細胞内のシグナル伝達に関わっている。



分子構造















分子式 C809H1301N229O229S5
分子量 18,235.96
配列構造

APPRLICDSRVLERYLLEAKEAENITTGCA
EHCSLNENITVPDTKVNFYAWKRMEVGQQA
VEVWQGLALLSEAVLRGQALLVNSSQPWEP
LQLHVDKAVSGKRSKTTLLRALGAQKEAIS
PPDAASAAPLRTITADTFRKLFRVYSMFLR
GKLKLYTGEACRTGDR



実際には、24, 38, 83番目の太字の3つのN(アスパラギン)残基にはN結合型糖鎖が、126番目の斜体字のS(セリン)残基にはO結合型糖鎖が付加しており、分子量は遙かに大きい。また、糖鎖を除去するとEPOの活性はなくなる。さらに7と161番目のC(システイン)残基間と29と33番目のシステイン残基間にはジスルフィド結合が形成されている。



脚注




  1. ^ abcGRCh38: Ensembl release 89: ENSG00000130427 - Ensembl, May 2017

  2. ^ abcGRCm38: Ensembl release 89: ENSMUSG00000029711 - Ensembl, May 2017


  3. ^ "Human PubMed Reference:". 


  4. ^ "Mouse PubMed Reference:". 


  5. ^ 【全合成】At Last: Erythropoietin as a Single Glycoform、ChemASAP、2012年12月7日、2015年3月30日閲覧


  6. ^ “ドーピングとの闘いー事例紹介”. 財団法人 日本分析センター. 2013年7月25日閲覧。


  7. ^ Lee Rodgers (2009年12月15日). “アンチ・ドーピング専門家「選手たちは新型EPOが検出不可能だと間違って信じている」”. cyclingtime.com. 2013年7月25日閲覧。


  8. ^ “アームストロング氏、更なる訴訟に直面”. AFP (2013年3月2日). 2013年7月25日閲覧。




関連項目



  • 顆粒球コロニー刺激因子

  • トロンボポエチン



外部リンク


  • トップアスリートの赤い闇 血液ドーピングなしには勝てない








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