ドラッグデリバリーシステム
ドラッグデリバリーシステム(Drug Delivery System, DDS)とは、体内の薬物分布を量的・空間的・時間的に制御し、コントロールする薬物伝達システムのことである。薬物輸送(送達)システムとも呼ばれる。
ロバート・ランガーはDDSの功績によりチャールズ・スターク・ドレイパー賞を受賞した。
目次
1 メリット
2 種類
3 出典
4 参考文献
5 関連項目
6 外部リンク
メリット
この技術を使うことにより期待されることは大きく以下の5つに還元できる。
- 1. 薬物作用の分離
- 特定の作用だけを取り出す、または抑え込む。
- 2. 効果の増強/発現
- 効果がより的確なものとなり、再現性も向上する。投資量の削減や適用拡大(新しい効能の発現など)が期待できる。
- 3. 副作用の軽減
- 安全域の拡大を図ることにより、QOLを改善し、患者の負担を軽減する。また、副作用から製薬化が頓挫した化合物を薬として復活させることもできる。
- 4. 使用性の改善
- 患者および医療従事者の負担を軽くし、薬物の服用指示違反(ノンコンプライアンス:noncompliance)問題の解消につながる。
- 5. 経済性
- 製品のライフサイクルの延長、差別化が図れる。また、医療費や関連費用の削減ができる。研究・開発の効率化が期待できる。
種類
- 薬物を含む粒子(リポソーム[1]やミセル[2])の径によるデリバリーシステム[3]
- 直径150nm以下の小さな粒子を皮下投与すると、毛細血管壁を通過できないが毛細リンパ管には侵入できる。リンパ管は癌転移や細菌感染の主な経路であるので、抗がん剤や抗生物質を投与する際に適している。
- 直径100nm以下の粒子を静脈内に投与すると、腫瘍組織内の新生血管は壁が粗いので、血管壁を通過する。従って粒子が高濃度に腫瘍内に集積する。
- 直径5μm程度の粒子を静脈内投与すると、毛細血管を通過できないので肺に粒子が集積する。
- 抗体等を用いたデリバリーシステム
トランスフェリンレセプターや他の腫瘍特異抗原に結合する物質(トランスフェリンや各種抗体)を粒子表面に固定すると、粒子は目標組織に高濃度に集積する。
- 徐放製剤
- そのままでは短時間で吸収・分解されてしまう薬物を長時間にわたって一定の速度で放出し、体内への供給を持続させるよう工夫された製剤。
- 経皮吸収薬
- そのままでは吸収されにくい薬物をより多く吸収させるためのデリバリーシステムが開発されている[4]。
出典
^ “トランスフェリンを用いたがん細胞へのターゲテイング(Active Targeting)”. 2014年10月9日閲覧。
^ “ミセル化ナノ粒子(高分子ミセル)”. 2014年10月9日閲覧。
^ “患部を狙い撃つためのDDSによるターゲティング”. 2014年10月9日閲覧。
^ “ILTS~独自の経皮製剤技術~”. 2014年10月9日閲覧。
参考文献
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関連項目
- プロドラッグ
- ある薬物に、別の分子を化学的に付加して作られた物質。そのままでは薬効を示さず、付加された分子が体内の酵素によって外れると元の薬物に戻る。直接投与すると吸収されなかったり、副作用が現れる薬物をプロドラッグ化することにより使用性の改善を図っている。
- アンテドラッグ
- 局所に投与して効果が現れたのち、すばやく代謝され副作用の少ない物質に変わる薬物[1]。
- 研究者
- 板井茂
- 迫和博
- 岩尾康範
外部リンク
- 日本DDS学会
^ “薬学用語解説 アンテドラッグ”. 2014年10月19日閲覧。