金融経済学



























金融経済学(きんゆうけいざいがく、英: Financial economics)とは、金融商品の価格形成や投資家の投資行動、企業の財務調達や資本構成を分析対象とする、経済学の分野である。金融経済学は更に2つの分野に大別することができ、金融商品の価格形成や投資家行動を取り扱う資産価格理論(英: asset pricing theory)、証券投資論(英: investment theory)と企業の財務に関わる事柄を取り扱うコーポレートファイナンス(英: corporate finance)がある。政府の金融政策を取り扱うマクロ経済学や銀行などの金融機関を分析する金融論とは別個の分野と見なされている[1]。学際的な傾向が強い学問分野であり、マクロ経済学、会計学、経営学などの社会科学における既存の学問分野の他に、確率論の応用分野としての数理ファイナンス、物理学の手法を用いる経済物理学、心理学の知見を取り入れた行動ファイナンスなどの新興の学問分野とも密接に関連している。




目次






  • 1 概念


    • 1.1 完全市場


    • 1.2 裁定取引


    • 1.3 市場の完備性


    • 1.4 市場の情報効率性


    • 1.5 効率的市場仮説




  • 2 理論


    • 2.1 モジリアーニ=ミラーの定理


    • 2.2 確率的割引ファクターとリスク中立確率


    • 2.3 現代ポートフォリオ理論と資本資産価格モデル(CAPM)


    • 2.4 ブラック=ショールズ方程式


    • 2.5 資産価格付けの基本定理


    • 2.6 ノートレード定理




  • 3 論争・未解決問題


    • 3.1 価格の予測可能性と効率的市場仮説


      • 3.1.1 時系列方向の予測可能性


      • 3.1.2 期待リターンのクロスセクション構造




    • 3.2 エクイティ・プレミアム・パズル


    • 3.3 超過ボラティリティパズル


    • 3.4 金融危機と金融経済学




  • 4 金融計量経済学


  • 5 行動ファイナンス


  • 6 脚注


  • 7 参考文献


  • 8 関連項目


  • 9 外部リンク





概念


以下で金融経済学で用いられる概念について列挙する。



完全市場


金融経済学において完全市場とは以下の条件を満たす金融市場をいう[2]




  1. 取引手数料が課せられない。


  2. 利益に対する課税がない。


  3. 情報は無費用で瞬時に経済主体に伝達される。


  4. 金融資産は無限に分割可能で空売り可能である。


古典的な金融経済学の理論的結果の多くが完全市場の仮定に基づいているが、これらの仮定を緩めた場合の研究も多く存在している[3]



裁定取引


裁定取引とは、初期時点においては無費用であり、ある時点において必ず損をすることはなく、更に正の確率で収益を上げられる金融市場においての取引戦略のことを言う[4]。特に金融市場に裁定取引が存在しないことを仮定した金融資産に対する価格付けの理論を無裁定価格付け理論という。標準的な経済モデルにおいて、経済主体がより多く消費することを望む選好を持つならば、裁定取引が存在しないことがその経済主体の選択問題に解が存在するための必要条件の一つとなる。なぜならば、もし裁定取引が存在するならば、そのような経済主体は裁定取引を行うことで自身の効用を無限に増加させることが出来るので、その経済主体の効用最大化問題の解が存在しなくなるからである[5]。裁定取引の非存在は資産価格付けの基本定理と呼ばれる定理に関連している。資産価格付けの基本定理は金融経済学や数理ファイナンスで中心的な役割を果たす定理の一つである。



市場の完備性


将来の状態が有限かつ離散的であると仮定した時、市場が完備(英: complete)であるとは1次独立な収益・損失をもたらす市場の金融資産の数が将来の状態数と等しい場合を言う[6]。ここで言う1次独立とは、市場の金融資産のそれぞれの状態における収益・損失を並べてユークリッド空間上のベクトルと見なした場合の線形代数における1次独立性を指す。また数理ファイナンスの文脈において市場が完備であるとは、ある期日にペイオフが確定する派生証券を考えた時に、全てのそのような派生証券のペイオフが既存の金融資産の組み合わせによって複製可能である場合をいう[7]。どちらの定義でもその意図するところは同じで、経済主体が考慮する将来のあらゆる不確実な資金変動を既存の金融資産についての取引戦略を立てることで(費用を無視すれば)複製できるということを意味している。市場の完備性は資産価格付けの第2基本定理と呼ばれる定理に関連付けられる。



市場の情報効率性


金融市場が(情報的に)効率的(英: informationally efficient)であるとは、その市場における全ての金融資産の価格が利用可能な全ての情報を常に完全に反映している時をいう[8]。経済学において効率性というと市場の情報効率性の他にパレート効率性などで測られる配分の効率性の概念があるが[9]、金融経済学の文脈において単に市場の効率性と言った場合は市場の情報効率性を指す場合が多い。



効率的市場仮説


現実の金融市場が情報的に効率的であるという仮説を効率的市場仮説(英: efficient market hypothesis)という。


ユージン・ファーマはHarry Roberts の提言を受けて、1970年の彼の論文において市場効率性を3つの段階に分別した[10]


一つがウィーク型の効率性(英: weak-form efficiency)で現在の価格は少なくとも過去の価格のヒストリカルデータによる情報をすべて反映しているという意味での効率性である。次がセミストロング型の効率性(英: semi-strong-form efficiency)で現在価格が過去の価格のヒストリカルデータに加えて、会計情報や株式分割情報などの公開情報をすべて反映しているという意味での効率性である。最後がストロング型の効率性(英: strong-form efficiency)で、公開情報に加えインサイダー情報や有料のアナリスト情報などの非公開情報も含めた全ての情報を反映しているという意味での効率性である[11]


さらに同論文においてユージン・ファーマは結合仮説問題(英: joint hypothesis problem)と呼ばれる効率的市場仮説の実証研究を行うにあたっての問題を提起した。もしある資産価格モデルを仮定して統計学的な仮説検定を行い、その検定が棄却されたならば、市場が情報的に非効率であることと仮定した資産価格モデルが間違っていることの二つが考えられる[12]。よって価格変動が想定した資産価格モデルで予想される程度から逸脱し、それが予測可能であったとしても、必ずしも市場が非効率であることを意味しているのではなく、モデルが間違っている可能性もあるということを指摘している[13]



理論


以下で金融経済学の理論的成果について列挙する。



モジリアーニ=ミラーの定理



モジリアーニ=ミラーの定理とは、完全市場の下で企業価値は資金調達の方法(負債か資本か)によらないという定理である。1958年にフランコ・モジリアーニとマートン・ミラーにより発表された[14]


企業の最適資本構成に関する現代的理論の出発点となる定理であり[15]、コーポレートファイナンスや会計学、経営学などにおいて大きな影響を及ぼしている。


モジリアーニ=ミラーの定理の導出という業績によりフランコ・モジリアーニは1985年に、マートン・ミラーは1990年にノーベル経済学賞を受賞している。



確率的割引ファクターとリスク中立確率



標準的な経済学モデルにおける仮定の下で、裁定取引が存在しないとすると、株式価格は次のように決定される[16]


Pi,t=∑t+1(s)mt+1(s)(Pi,t+1(s)+di,t+1(s))=Et[mt+1(Pi,t+1+di,t+1)]{displaystyle P_{i,t}=sum _{s}pi _{t+1}(s)m_{t+1}(s)(P_{i,t+1}(s)+d_{i,t+1}(s))=E_{t}[m_{t+1}(P_{i,t+1}+d_{i,t+1})]}P_{{i,t}}=sum _{{s}}pi _{{t+1}}(s)m_{{t+1}}(s)(P_{{i,t+1}}(s)+d_{{i,t+1}}(s))=E_{t}[m_{{t+1}}(P_{{i,t+1}}+d_{{i,t+1}})]

ここで Pi,t{displaystyle P_{i,t}}P_{{i,t}}Pi,t+1{displaystyle P_{i,t+1}}P_{{i,t+1}} は株式 i{displaystyle i}i のそれぞれ t,t+1{displaystyle t,t+1}t,t+1 時点における価格であり、
di,t+1{displaystyle d_{i,t+1}}d_{{i,t+1}}t+1{displaystyle t+1}t+1 時点における株式 i{displaystyle i}i の配当である。そして πt+1(s){displaystyle pi _{t+1}(s)}pi _{{t+1}}(s)t+1{displaystyle t+1}t+1 時点において状態 s{displaystyle s}s が生起する t{displaystyle t}t 時点までの情報による条件付き確率となる。また Et{displaystyle E_{t}}E_{{t}}t{displaystyle t}t 時点までの情報による条件付き期待値を表す。上述の式における株式 i{displaystyle i}i に依存しないファクター mt+1{displaystyle m_{t+1}}m_{{t+1}}t+1{displaystyle t+1}t+1 時点における確率的割引ファクター(英: stochastic discount factor)と言う。


配当を金融資産を保持する事による将来のキャッシュフローと捉えると、株式のみではなくあらゆる金融資産に対して上述の式が成立する事が言える。特に安全資産の利子率を Rf{displaystyle R_{f}}R_{{f}} とすると以下の式が成立する[17]


Et[mt+1]=∑t+1(s)mt+1(s)=11+Rf{displaystyle E_{t}[m_{t+1}]=sum _{s}pi _{t+1}(s)m_{t+1}(s)={frac {1}{1+R_{f}}}}E_{t}[m_{{t+1}}]=sum _{{s}}pi _{{t+1}}(s)m_{{t+1}}(s)={frac  {1}{1+R_{f}}}

さらに確率的割引ファクター mt+1{displaystyle m_{t+1}}m_{{t+1}} について、新たな確率 πt+1∗{displaystyle pi _{t+1}^{*}}pi _{{t+1}}^{{*}}


πt+1∗(s)=(1+Rf)mt+1(s)πt+1(s)=mt+1(s)πt+1(s)/∑s′mt+1(s′t+1(s′){displaystyle pi _{t+1}^{*}(s)=(1+R_{f})m_{t+1}(s)pi _{t+1}(s)=m_{t+1}(s)pi _{t+1}(s)/sum _{s^{prime }}m_{t+1}(s^{prime })pi _{t+1}(s^{prime })}pi _{{t+1}}^{{*}}(s)=(1+R_{{f}})m_{{t+1}}(s)pi _{{t+1}}(s)=m_{{t+1}}(s)pi _{{t+1}}(s)/sum _{{s^{prime }}}m_{{t+1}}(s^{prime })pi _{{t+1}}(s^{prime })

として定義する。すると次の式が得られる[18]


Pi,t=∑t+1(s)mt+1(s)(Pi,t+1(s)+di,t+1(s))=∑t+1∗(s)Pi,t+1(s)+di,t+1(s)1+Rf=Et∗[Pi,t+1+di,t+11+Rf]{displaystyle P_{i,t}=sum _{s}pi _{t+1}(s)m_{t+1}(s)(P_{i,t+1}(s)+d_{i,t+1}(s))=sum _{s}pi _{t+1}^{*}(s){frac {P_{i,t+1}(s)+d_{i,t+1}(s)}{1+R_{f}}}=E_{t}^{*}{Big [}{frac {P_{i,t+1}+d_{i,t+1}}{1+R_{f}}}{Big ]}}P_{{i,t}}=sum _{{s}}pi _{{t+1}}(s)m_{{t+1}}(s)(P_{{i,t+1}}(s)+d_{{i,t+1}}(s))=sum _{{s}}pi _{{t+1}}^{{*}}(s){frac  {P_{{i,t+1}}(s)+d_{{i,t+1}}(s)}{1+R_{f}}}=E_{{t}}^{{*}}{Big [}{frac  {P_{{i,t+1}}+d_{{i,t+1}}}{1+R_{f}}}{Big ]}

Et∗{displaystyle E_{t}^{*}}E_{{t}}^{{*}} は確率 πt+1∗{displaystyle pi _{t+1}^{*}}pi _{{t+1}}^{{*}} の下での期待値を指す。ここで定義された新たな確率 πt+1∗{displaystyle pi _{t+1}^{*}}pi _{{t+1}}^{*}リスク中立確率(英: risk-neutral probability)、または同値マルチンゲール測度(英: equivalent martingale measure)と言う。確率的割引ファクターのリスク中立確率としての表現は後述の資産価格付けの基本定理において重要になる。



現代ポートフォリオ理論と資本資産価格モデル(CAPM)



1952年にハリー・マーコビッツは危険回避的な経済主体を想定し、平均分散分析(英: mean-variance analysis)と呼ばれる完全市場の下でのポートフォリオ選択理論を考案した[19][20][21]。その後、ジェームズ・トービンにより平均分散分析と期待効用最大化の関係が検討され[22]分離定理(英: separation theorem)(もしくは投資信託定理(英: mutual fund theorem))と呼ばれる、ある特定の平均分散的に効率的なポートフォリオ(接点ポートフォリオ)と安全資産への投資比率を変化させるだけで効率的フロンティアを再現できるという定理が示された[23]


さらに平均分散分析を行うリスク回避的な経済主体による完全市場の下での一般均衡モデルとして資本資産価格モデル(英: capital asset pricing model, CAPM)がウィリアム・シャープ[24]John Lintner(英語版)[25]Jan Mossin(英語版)[26]により独立に発表された。


CAPMによれば任意の金融資産 i{displaystyle i}i の収益率 Ri{displaystyle R_{i}}R_{{i}} は次の式に従う[27]


E[Ri]−Rf=βi(E[Rm]−Rf){displaystyle E[R_{i}]-R_{f}=beta _{i}{Big (}E[R_{m}]-R_{f}{Big )}}E[R_{{i}}]-R_{{f}}=beta _{{i}}{Big (}E[R_{{m}}]-R_{f}{Big )}

ここで Rf{displaystyle R_{f}}R_{{f}} は安全資産の利子率であり、Rm{displaystyle R_{m}}R_{{m}} は市場ポートフォリオと呼ばれるポートフォリオの収益率となる。実証研究においては、市場ポートフォリオにはS&P500などの時価総額加重平均型株価指数が用いられることが多い。βi{displaystyle beta _{i}}beta _{i} は資産 i{displaystyle i}iベータと呼ばれ、CAPMは資産 i{displaystyle i}i のリスクプレミアムが市場ポートフォリオのリスクプレミアムの線形関数となっていることを述べている。資産 i{displaystyle i}i のベータは次の式を満たす。


βi=Cov(Ri,Rm)Var(Rm){displaystyle beta _{i}={frac {mathrm {Cov} (R_{i},R_{m})}{mathrm {Var} (R_{m})}}}beta _{{i}}={frac  {{mathrm  {Cov}}(R_{{i}},R_{{m}})}{{mathrm  {Var}}(R_{{m}})}}

上述の式のようにCAPMの下では安全資産の存在が仮定されているが、1972年にフィッシャー・ブラックは安全資産の存在を仮定せずともCAPMが成り立つというゼロベータCAPMを導出した[28]


またウィリアム・シャープは1966年に平均分散分析の観点に従ってポートフォリオのパフォーマンスを測る指標としてシャープレシオ(英: Sharpe ratio)を提案した[29]。シャープレシオ S{displaystyle S}S はポートフォリオの収益率を Rp{displaystyle R_{p}}R_{{p}} として次で定義される。


S=E[Rp]−RfVar(Rp){displaystyle S={frac {E[R_{p}]-R_{f}}{sqrt {mathrm {Var} (R_{p})}}}}S={frac  {E[R_{{p}}]-R_{{f}}}{{sqrt  {{mathrm  {Var}}(R_{{p}})}}}}

CAPMは静学的な収益率の関係を記述しているが、動学的構造を加味したモデルとしてロバート・マートンが1973年に発表した異時点間CAPM(英: intertemporal capital asset pricing model, ICAPM)がある[30]


またCAPMの共通リスクファクターは市場ポートフォリオだけであるが、複数の共通リスクファクターを持つ場合を考えた裁定価格理論(英: arbitrage pricing theory, APT)がStephen Ross(英語版)によって1976年に考案されている[31][32]


さらに経済主体の消費を用いてCAPMと確率的割引ファクターを結びつけたモデルとして消費CAPM(英: consumption capital asset pricing model, CCAPM)がある[33]


CAPMの開発後も多数の資産価格モデルが考案されたが、CAPMは依然として最も重要な資産価格モデルであり、
実務上も事前的なポートフォリオ選択のみならず事後的なパフォーマンス評価にも用いられている[34]


現代ポートフォリオ理論に関する功績からジェームズ・トービンは1981年に、ハリー・マーコビッツとウィリアム・シャープは1990年にノーベル経済学賞を受賞している。



ブラック=ショールズ方程式



1973年にフィッシャー・ブラックとマイロン・ショールズは完全かつ完備な市場の下でのヨーロピアン型コールオプションについての価格付けに対する論文を発表した[35]。同論文中のオプション価格を決定する偏微分方程式をブラック=ショールズ方程式(英: Black-Scholes equation)と言う。


完全市場の下で、配当が無く価格変動が幾何ブラウン運動に従う株式と利子率が時間を通じて一定な債券を想定する。この時、株式を原資産とする満期 T{displaystyle T}T、行使価格 K{displaystyle K}K のヨーロピアン型コールオプションの t{displaystyle t}t 時点における株価 x{displaystyle x}x の下での価格 C(t,x){displaystyle C(t,x)}C(t,x) は裁定取引が存在しないという条件の下で次の偏微分方程式の解となる[36]


rC=∂C∂t+rx∂C∂x+12σ2x2∂2C∂x2{displaystyle rC={frac {partial C}{partial t}}+rx{frac {partial C}{partial x}}+{frac {1}{2}}sigma ^{2}x^{2}{frac {partial ^{2}C}{partial x^{2}}}}rC={frac  {partial C}{partial t}}+rx{frac  {partial C}{partial x}}+{frac  {1}{2}}sigma ^{{2}}x^{{2}}{frac  {partial ^{{2}}C}{partial x^{{2}}}}

r{displaystyle r}r は債券の利子率で σ{displaystyle sigma }sigma はボラティリティと呼ばれる株価の値動きの激しさを表すパラメータである。境界条件は



  • C(T,x)=max{x−K,0}{displaystyle C(T,x)=max{x-K,0}}C(T,x)=max{x-K,0}

  • C(t,0)=0{displaystyle C(t,0)=0}C(t,0)=0

  • limx→{C(t,x)−(x−e−r(T−t)K)}=0{displaystyle lim _{xrightarrow infty }left{C(t,x)-{Big (}x-e^{-r(T-t)}K{Big )}right}=0}lim _{{xrightarrow infty }}left{C(t,x)-{Big (}x-e^{{-r(T-t)}}K{Big )}right}=0


である。この偏微分方程式をブラック=ショールズ方程式と言う。ブラック=ショールズ方程式の導出に当たっては、数学者の伊藤清らによって発展した確率微分方程式の理論が中心的な役割を果たしている。ブラック=ショールズ方程式は後退放物型方程式と呼ばれる偏微分方程式に当たるので[37]解析的に解くことができ、その解は


C(t,x)=xN(d+(T−t,x))−Ke−r(T−t)N(d−(T−t,x)){displaystyle C(t,x)=xN(d_{+}(T-t,x))-Ke^{-r(T-t)}N(d_{-}(T-t,x))}C(t,x)=xN(d_{+}(T-t,x))-Ke^{{-r(T-t)}}N(d_{-}(T-t,x))

となる。ただし


,x)=1στ[log⁡xK+(r±σ22)τ],N(y)=12πye−z22dz{displaystyle d_{pm }(tau ,x)={frac {1}{sigma {sqrt {tau }}}}left[log {frac {x}{K}}+left(rpm {frac {sigma ^{2}}{2}}right)tau right],quad N(y)={frac {1}{sqrt {2pi }}}int _{-infty }^{y}e^{-{frac {z^{2}}{2}}}dz}d_{{pm }}(tau ,x)={frac  {1}{sigma {sqrt  {tau }}}}left[log {frac  {x}{K}}+left(rpm {frac  {sigma ^{{2}}}{2}}right)tau right],quad N(y)={frac  {1}{{sqrt  {2pi }}}}int _{{-infty }}^{{y}}e^{{-{frac  {z^{{2}}}{2}}}}dz

である[38]


多くの派生証券のペイオフがヨーロピアン型オプションを用いて複製可能なことから、ブラック=ショールズ方程式が登場して以降、多数の派生証券について無裁定価格付け理論を用いた価格付けがなされた[39]。その意味でブラック=ショールズ方程式は数理ファイナンスという学問分野の起点となった。


ブラック=ショールズ方程式はフィッシャー・ブラックとマイロン・ショールズによる1973年の論文によって導出されたが、その核となる無裁定価格付け理論はロバート・マートンの1973年の論文により現れている[40]。よってオプションの価格付けに対する功績についての功績を称えた1997年のノーベル経済学賞はマイロン・ショールズとロバート・マートンの2名に与えられた(フィッシャー・ブラックは1995年に亡くなっており、ノーベル賞は物故者には授与されない)[41]



資産価格付けの基本定理



資産価格付けの基本定理(英: the fundamental theorems of asset pricing)とは、Michael Harrison、デイヴィッド・クレプス、Stanley Pliska らによって示された裁定機会の非存在と市場の完備性の同値条件を述べる定理である[42][43][44]。数理ファイナンスにおける様々な派生証券の価格付け理論で中心的な役割を果たしている定理である。


金融市場の数学的定式化の違いにより定理の内容が若干異なるが[45][46]、通常以下のように言及される。


  • 資産価格付けの第1基本定理

金融市場に裁定取引が存在しない必要十分条件は少なくとも1つ以上のリスク中立確率が存在することである。


  • 資産価格付けの第2基本定理

金融市場に裁定取引が存在しないと仮定する。この時、金融市場が完備である必要十分条件はリスク中立確率が一意に定まることである。


確率的割引ファクターの項目で見たように、リスク中立確率とは金融資産の価格を利子率で割り引いたものがマルチンゲールになるような確率である[47]。よって価格変動の確率的性質が既知の金融資産を用いてリスク中立確率を一度計算してしまえば様々な金融資産の現在価格を計算することが出来る。資産価格付けの基本定理はこのような数学的操作によって導かれる現在価格に対し、無裁定価格付け理論という金融経済学としての価格付けに対する基礎を与える定理となる。



ノートレード定理


ノートレード定理(英語版)(英: no trade theorem)とは、ある状況下において、たとえ投資家が金融資産についてのインサイダー情報などの私的情報を得たとしても、均衡では金融資産の取引が発生しないという定理である。ポール・ミルグロム とナンシー・ストーキーにより1982年に発表され[48]、多数の拡張がなされている。


ミルグロムとストーキーの論文におけるノートレード定理とは、事前的な富の配分がパレート効率的であり、全ての投資家は合理的で、この二つの事実が投資家の間でロバート・オーマンの1976年の論文[49]の意味での共有知識になっている時に、情報に対する確率的な解釈が一致している(英: concordant beliefs)リスク回避的な投資家の間では、たとえ追加的な私的情報が投資家にもたらされようとも取引が起こらない、ということを述べている[50]


定理が成立するための仮定は非現実的だが、私的情報を得ても取引が起こらないという直観に反した結果になっている。



論争・未解決問題



価格の予測可能性と効率的市場仮説


利用可能な情報を用いて資産価格が予測可能かどうかは古くから主要な論点の一つになっている[51]



時系列方向の予測可能性


価格の予測可能性についての研究は1900年のルイ・バシュリエの研究成果にさかのぼることが出来る[52]。バシュリエの研究はブノワ・マンデルブロやポール・サミュエルソンにより現代的な形式に定式化された[53][54][55]。短期的な価格の予測可能性についてユージン・ファーマは1960年代に行った一連の研究[56][57]により、株式には短期的に若干の正の自己相関が見られることを発見した[58]。しかし、その程度は非常に弱く、取引コストを考えればその相関を利用して計画的に利益を上げることは不可能だとし、金融市場は短期的には効率的な状況に近いということが学界でのコンセンサスになっている[59]


しかし年単位となるような長期的な価格の予測可能性については短期と異なり取引コストを加味しても利益を上げられるような予測が可能であるという研究成果がある。ロバート・シラーは1984年に配当利回りが1年後の株式のリターンに説明力を持つことを発見した[60]。この研究は行動ファイナンスの先駆けとして重要視されている研究の一つである[61]。またロバート・シラーはJohn Campbell(英語版)との共同研究で企業の実質利益が価格に説明力を持つこと[62]や配当利回りが将来の配当成長率に正の影響を持つこと[63]を実証した[64]。特にロバート・シラーは前者の研究結果からPERを改良したCAPEレシオ(英: cyclically adjusted price-to-earnings ratio, CAPE ratio)を考案している。



期待リターンのクロスセクション構造


1950年代から1960年代にかけて発展したCAPMは期待リターンのクロスセクション構造を分析するにあたってのベースラインモデルとなった。1970年代までにおいてCAPMは概ね成立しているとの結果が得られていたが[65][66][67]、1970年代の終わりからCAPMの実証方法に対する批判[68]やCAPMで説明できないアノマリーが多く発見されるようになる[69]。このようなアノマリーの例として時価総額が小さい株式の方が高い期待リターンを得られるという小型株効果[70]や、簿価時価比率(PBRの逆数)が高い割安株の方が高い期待リターンを得られるというバリュー株効果などがある[71][72][73]


1992年にユージン・ファーマとKenneth French(英語版)は米国株式市場のクロスセクション分析を行い、時価総額、簿価時価比率、レバレッジ比率、E/P(PERの逆数)の当時認識されていた4つのアノマリー要因は時価総額と簿価時価比率の2つに集約されることを統計的に実証した論文を発表した[74]。彼らは同論文でRay Ball(英語版)が1978年の論文[75]で述べた仮説に同意し、時価総額と簿価時価比率のアノマリーはCAPMで説明できない投資家のリスクファクターから生じているという仮説を立てている。さらに彼らはこの研究を発展させ、1993年の論文[76]においてファーマ=フレンチ3ファクターモデルと呼ばれる期待リターンの決定モデルを提示した。ファーマ=フレンチ3ファクターモデルにおいては期待リターンのクロスセクションの決定要因としてCAPMで取り入れられていた市場ポートフォリオのリスクプレミアムに加え、時価総額が捉えるリスクの代理指数としてのSMB(small-minus-big)と簿価時価比率が捉えるリスクの代理指数としてのHML(high-minus-low)が含まれている。


このようなリスクファクターとしての解釈が難しいアノマリーとしてモメンタム効果がある。モメンタム効果とは過去に高いリターンを得られた金融資産は将来も高いリターンが得られ、逆に過去にリターンが低かった金融資産は将来のリターンも低くなるという効果である。Narasimhan Jegadeesh とSheridan Titman(英語版)はクロスセクション分析により、米国の株式市場に短期から中期にかけてのモメンタム効果が存在することを実証した論文を1993年に発表した[77]。さらにモメンタム効果はファーマ=フレンチ3ファクターモデルでは説明されない[78][79]。その後、1997年にはファーマ=フレンチ3ファクターモデルにJegadeesh とTitman のモメンタム効果を捉えるファクターを追加したCarhartの4ファクターモデルが発表されている[80]


ユージン・ファーマとロバート・シラーは2013年に資産価格の実証分析についての貢献からノーベル経済学賞を受賞した。



エクイティ・プレミアム・パズル



エクイティ・プレミアム・パズル(英: equity premium puzzle)とは実際の市場で観測される株式のリスクプレミアムが新古典派経済学の標準的なモデルにおけるリスクへの対価で正当化され得る範囲より大きいという問題のことである。


Rajnish Mehra(英語版)とエドワード・プレスコットが1985年に発表した論文[81]により広く知られるようになった。


エクイティ・プレミアム・パズルは新古典派経済学のあらゆる分野で広く用いられる相対的危険回避度一定(CRRA)型効用関数を用いた場合に生じる。経済主体のリスクへの相対的な忌避度を表す相対的危険回避度は様々な研究より10以下が妥当であるとされているが、CRRA型効用関数において相対的危険回避度を10として株式のリスクプレミアムを計算すると1.4%となる。これは1889年から1978年にかけての米国株式のリスクプレミアムの平均が6.18%であることを考えると著しく小さい[82]


この問題を説明する為に様々な理論モデルが提案されているが、統一的な説明がなされていない未解決問題である。


新古典派経済学における資産価格モデルの実証的問題点を明らかにしたその他の研究として、一般化モーメント法(英: generalized method of moments, GMM)と呼ばれる計量経済学の手法[83]を用いてCCAPMの実証を行いCCAPMを統計的に棄却したラース・ハンセンとKenneth Singleton(英語版)の研究[84][85]やリスクフリーレートパズル(英: risk-free rate puzzle)を唱えたPhilippe Weil の研究[86]、ラース・ハンセンとRavi Jagannathan(英語版)によって導かれたハンセン=ジャガナサン境界(英: Hansen-Jagannathan bound)についての研究[87]などがある。


資産価格の実証研究への貢献により、ラース・ハンセンは2013年のノーベル経済学賞を受賞している。



超過ボラティリティパズル


超過ボラティリティパズル(英: excess volatility puzzle)とは金融商品の価格変動がそのファンダメンタルズの価値の変動に比べて激しいという問題である。


ロバート・シラーによる一連の研究[88][89]により広く知られるようになった。


金融経済学の標準的な理論においては価格変動の分散はファンダメンタルズの分散より小さくなることが知られている。そこでロバート・シラーは1981年の論文において事後的に配当から株式のファンダメンタルズの価値とその分散を計算し、実際の株式の分散と比較した。するとファンダメンタルズの分散に比べ価格変動の分散は著しく大きく、統計的に有意であることが示された[90]。この問題もエクイティ・プレミアム・パズル同様に未解決問題である。



金融危機と金融経済学


2007年からの世界金融危機は金融経済学においても大きなインパクトを残した。金融危機後の金融経済学の学問的な潮流の変化として、今までは無視されがちであった実体経済や金融仲介機関の影響を加味した研究が増加している[91]。例としてMarkus Brunnermeier(英語版)Lasse Heje Pedersen(英語版) による金融仲介機関のバランスシート効果が金融商品の流動性やファンドの資金の枯渇を招くという理論的研究[92]などがある。



金融計量経済学


金融市場の実証研究の進展と共に計量経済学における時系列分析の手法も発達してきた。特に金融に関連する時系列データに対する統計手法を研究する学問を金融計量経済学(英: financial econometrics)と言う。主要な成果としてロバート・エングルとクライヴ・グレンジャーによる共和分(英: cointegration)分析[93]、ロバート・エングルによるARCHモデル[94]、ARCHモデルの発展形としてのGARCHモデル[95]や確率的ボラティリティモデル、ジェームス・ハミルトンによるマルコフ・スイッチングモデル[96]などがある。また日中のティックデータなどの高頻度データの解析法として高頻度時系列分析も発展している[97]


特にロバート・エングルとクライヴ・グレンジャーは2003年のノーベル経済学賞を受賞している。



行動ファイナンス



経済主体の合理性を仮定した古典的な金融経済学とは異なるアプローチとして、経済主体の非合理性が金融市場にもたらす効果に着目した行動ファイナンス(英: behavioral finance)がある。行動ファイナンスには大別して2つのアプローチがあり、心理学的バイアスを持つ経済主体の振る舞いが市場にもたらす効果を分析する方法と、合理的な投資家が何らかの制約により非合理な投資家の取引行動がもたらした裁定機会を消化できないことで市場がどのように変化するかを分析する裁定の限界(英: limits to arbitrage)と呼ばれる手法がある[98]。心理学的バイアスに着目した研究として、ダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーにより提唱されたプロスペクト理論を用いてエクイティ・プレミアム・パズルの行動ファイナンス的説明を試みた Shlomo Benartzi とリチャード・セイラーの研究[99]や、投資家に代表性ヒューリスティックと保守性バイアスを仮定することで数値シミュレーションにより株式のモメンタム効果を再現する事に成功したNicholas Barberis(英語版)、アンドレ・シュライファー、Robert Vishny(英語版) の研究[100]などがある。裁定の限界についての研究として、ノイズトレーダーと呼ばれる非合理な投資家がもたらした裁定機会をヘッジファンドなどの裁定投資家が顧客から預かっている資金量についての制約の為に消化できないという理論的な結果を導き出したアンドレ・シュライファーと Robert Vishny の研究[101]などがある。



脚注





  1. ^ 政府の金融政策についての研究分野(monetary economics)も金融経済学と呼ばれることがあるが、英語版wikipediaでもen:monetary_economicsとen:financial_economicsと別個の項目となっている。


  2. ^ 池田 2000, p. 60


  3. ^ 池田 2000, p. 61


  4. ^ Shreve 2004, p. 230


  5. ^ Dybvig and Ross 2003, p. 613


  6. ^ 池田 2000, p. 122


  7. ^ Øksendal, Bernt (2003), Stochastic differential equations (6 ed.), Springer-Verlag Berlin Heidelberg, p. 282, ISBN 9783540047582 


  8. ^ Fama 1970


  9. ^ Dybvig and Ross 2003, p. 620


  10. ^ The economic sciences prize committee of the royal Swedish academy of sciences 2013, p. 10


  11. ^ Fama 1970


  12. ^ Ferson, Wayne E. (2003), “Tests of multifactor pricing models, volatility bounds and portfolio performance”, in Constantinides, George M.; Harris, Milton; Stulz, René M., Handbook of the Economics of Finance 1, Elsevier, pp. 743-802, doi:10.1016/S1574-0102(03)01021-5, ISBN 9780444513632 


  13. ^ The economic sciences prize committee of the royal Swedish academy of sciences 2013, p. 9


  14. ^ Modiliani, Franco; Miller, Merton H. (1958), “The cost of capital, corporation finance and the theory of investment”, American Economic Review 48 (3): 261-297, JSTOR 1809766, http://jstor.org/stable/1809766 


  15. ^ Myers, Stewart C. (2003), “Financing of corporations”, in Constantinides, George M.; Harris, Milton; Stulz, René M., Handbook of the Economics of Finance 1, Elsevier, pp. 215-253, doi:10.1016/S1574-0102(03)01008-2, ISBN 9780444513625 


  16. ^ The economic sciences prize committee of the royal Swedish academy of sciences 2013, p. 5


  17. ^ The economic sciences prize committee of the royal Swedish academy of sciences 2013, p. 4


  18. ^ Dybvig and Ross 2003, p. 616


  19. ^ 池田 2000, p. 34


  20. ^ Dybvig and Ross 2003, p. 624


  21. ^ Markowitz, Harry M. (1952), “Portfolio selection”, The Journal of Finance 7 (1): 77-91, doi:10.1111/j.1540-6261.1952.tb01525.x 


  22. ^ Tobin, James (1958), “Liquidity preference as behavior towards risk”, Review of Economic Studies 25 (2): 65-86, doi:10.2307/2296205 


  23. ^ 池田 2000, p. 54


  24. ^ Sharpe, William F. (1964), “Capital asset prices: A theory of market equilibrium under conditions of risk”, The Journal of Finance 19 (3): 425-442, doi:10.1111/j.1540-6261.1964.tb02865.x 


  25. ^ Lintner, John (1965), “The valuation of risk assets and the selection of risky investments in stock portfolios and capital budgets”, The Review of Economics and Statistics 47 (1): 13-37, JSTOR 1924119, http://jstor.org/stable/1924119 


  26. ^ Mossin, Jan (1966), “Equilibrium in a capital asset market”, Econometrica 34 (4): 768-783, JSTOR 1910098, http://jstor.org/stable/1910098 


  27. ^ 池田 2000, p. 82


  28. ^ Black, Fischer (1972), “Capital market equilibrium with restricted borrowing”, The Journal of Business 45 (3): 444-455, JSTOR 2351499, http://jstor.org/stable/2351499 


  29. ^ Sharpe, William F. (1966), “Mutual fund performance”, The Journal of Business 39 (1): 119-138, JSTOR 2351741, http://jstor.org/stable/2351741 


  30. ^ Merton, Robert C. (1973), “An intertemporal capital asset pricing model”, Econometrica 41 (5): 867-887, JSTOR 1913811, http://jstor.org/stable/1913811 


  31. ^ Dybvig and Ross 2003, pp. 633-634


  32. ^ Ross, Stephen A. (1976), “The arbitrage theory of capital asset pricing”, Journal of Economic Theory 13 (3): 341-360, doi:10.1016/0022-0531(76)90046-6 


  33. ^ Dybvig and Ross 2003, pp. 621-622


  34. ^ Dybvig and Ross 2003, p. 624


  35. ^ Black, Fischer; Scholes, Myron (1973), “The pricing of options and corporate liabilities”, Journal of Political Economy 81 (3): 637-654, JSTOR 1831029, http://jstor.org/stable/1831029 


  36. ^ Shreve 2004, p. 157


  37. ^ Shreve 2004, p. 158


  38. ^ Shreve 2004, p. 159


  39. ^ Whaley, Robert E. (2003), “Derivatives”, in Constantinides, George M.; Harris, Milton; Stulz, René M., Handbook of the Economics of Finance 1, Elsevier, pp. 1129-1206, doi:10.1016/S1574-0102(03)01028-8, ISBN 9780444513632 


  40. ^ Merton, Robert C. (1973), “Theory of rational option pricing”, The Bell Journal of Economics and Management Science 4 (1): 141-183, JSTOR 3003143, http://jstor.org/stable/3003143 


  41. ^ Shreve 2004, p. 189


  42. ^ Harrison, J. Michael; Kreps, David M. (1979), “Martingales and arbitrage in multiperiod securities markets”, Journal of Economic Theory 20 (3): 381-408, doi:10.1016/0022-0531(79)90043-7 


  43. ^ Harrison, J. Michael; Pliska, Stanley R. (1981), “Martingales and stochastic integrals in the theory of continuous trading”, Stochastic Processes and their Applications 11 (3): 215-260, doi:10.1016/0304-4149(81)90026-0 


  44. ^ Harrison, J. Michael; Pliska, Stanley R. (1983), “A stochastic calculus model of continuous trading: complete markets”, Stochastic Processes and their Applications 15 (3): 313-316, doi:10.1016/0304-4149(83)90038-8 


  45. ^ Shreve 2004, pp. 224-234


  46. ^ Dybvig and Ross 2003, p. 614


  47. ^ Shreve 2004, p. 228


  48. ^ Milgrom, Paul R.; Stokey, Nancy (1982), “Information, trade and common knowledge”, Journal of Economic Theory 26 (1): 17-27, doi:10.1016/0022-0531(82)90046-1 


  49. ^ Aumann, Robert J. (1976), “Agreeing to disagree”, The Annals of Statistics 4 (6): 1236-1239, JSTOR 2958591, http://jstor.org/stable/2958591 


  50. ^ Brunnermeier, Markus K. (2001), Asset pricing under asymmetric information: Bubbles, crashes, technical analysis, and herding, Oxford University Press, p. 35, ISBN 9780198296980 


  51. ^ The economic sciences prize committee of the royal Swedish academy of sciences 2013, p. 1


  52. ^ Bachelier, Louis. "Théorie de la Speculation," Paris, 1900.


  53. ^ Mandelbrot, Benoît B. (1963), “The variation of certain speculative prices”, The Journal of Business 36 (4): 394-419, JSTOR 2350970, http://jstor.org/stable/2350970 


  54. ^ Samuelson, Paul A. (1965), “Proof that properly anticipated prices fluctuate randomly”, Industrial Management Review 6 (2): 41-49 


  55. ^ The economic sciences prize committee of the royal Swedish academy of sciences 2013, p. 9


  56. ^ Fama, Eugene F. (1963), “Mandelbrot and the stable Paretian hypothesis”, The Journal of Business 36 (4): 420-429, JSTOR 2350971, http://jstor.org/stable/2350971 


  57. ^ Fama, Eugene F. (1965), “The behavior of stock market prices”, The Journal of Business 38 (1): 34-105, JSTOR 2350752, http://jstor.org/stable/2350752 


  58. ^ The economic sciences prize committee of the royal Swedish academy of sciences 2013, pp. 10-11


  59. ^ The economic sciences prize committee of the royal Swedish academy of sciences 2013, pp. 14-15


  60. ^ Shiller, Robert J. (1984), “Stock prices and social dynamics”, Carnegie Rochester Conference Series on Public Policy 1984 (2): 457-510, doi:10.2307/2534436 


  61. ^ The economic sciences prize committee of the royal Swedish academy of sciences 2013, pp. 30-31


  62. ^ Campbell, John Y.; Shiller, Robert J. (1988), “Stock prices, earnings, and expected dividends”, The Journal of Finance 43 (3): 661-676, doi:10.1111/j.1540-6261.1988.tb04598.x 


  63. ^ Campbell, John Y.; Shiller, Robert J. (1988), “The dividend-price ratio and expectations of future dividends and discount factors”, The Review of Financial Studies 1 (3): 195-228, doi:10.1093/rfs/1.3.195 


  64. ^ The economic sciences prize committee of the royal Swedish academy of sciences 2013, pp. 17-19


  65. ^ Jensen, Micheal C. (1968), “The performance of mutual funds in the period 1945-1964”, The Journal of Finance 23 (2): 389-416, doi:10.1111/j.1540-6261.1968.tb00815.x 


  66. ^ Black, Fischer; Jensen, Micheal C.; Scholes, Myron (1973), “The capital asset pricing model: Some empirical tests”, in Jensen, Micheal C., Studies in the theory of capital markets, Praeger, http://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=908569 


  67. ^ Fama, Eugene F.; MacBeth, James D. (1973), “Risk, return and equilibrium: Empirical tests”, Journal of Political Economy 81 (3): 607-636, JSTOR 1831028, http://jstor.org/stable/1831028 


  68. ^ Roll, Richard (1977), “A critique of the asset pricing theory's tests Part I: On past and potential testability of the theory”, Journal of Financial Economics 4 (2): 129-176, doi:10.1016/0304-405X(77)90009-5 


  69. ^ The economic sciences prize committee of the royal Swedish academy of sciences 2013, p. 38


  70. ^ Banz, Rolf W. (1981), “The relationship between return and market value of common stocks”, Journal of Financial Economics 9 (1): 3-18, doi:10.1016/0304-405X(81)90018-0 


  71. ^ Stattman, Dennis (1980), “Book values and stock returns”, The Chicago MBA: A Journal of Selected Papers 4 (1): 25-45 


  72. ^ Rosenberg, Barr; Reid, Kenneth; Lanstein, Ronald (1985), “Persuasive evidence of market inefficiency”, The Journal of Portfolio Management 11 (3): 9-16, doi:10.3905/jpm.1985.409007 


  73. ^ Chan, Louis K. C.; Hamao, Yasushi; Lakonishok, Josef (1991), “Fundamentals and stock returns in Japan”, The Journal of Finance 46 (5): 1739-1764, doi:10.1111/j.1540-6261.1991.tb04642.x 


  74. ^ Fama, Eugene F.; French, Kenneth R. (1992), “The cross-section of expected stock returns”, The Journal of Finance 47 (2): 427-465, doi:10.1111/j.1540-6261.1992.tb04398.x 


  75. ^ Ball, Ray (1978), “Anomalies in relationships between securities' yields and yield-surrogates”, Journal of Financial Economics 6 (2-3): 103-126, doi:10.1016/0304-405X(78)90026-0 


  76. ^ Fama, Eugene F.; French, Kenneth R. (1993), “Common risk factors in the returns on stocks and bonds”, Journal of Financial Economics 33 (1): 3-56, doi:10.1016/0304-405X(93)90023-5 


  77. ^ Jegadeesh, Narasimhan; Titman, Sheridan (1993), “Returns to buying winners and selling losers: Implications for stock market efficiency”, The Journal of Finance 48 (1): 65-91, doi:10.1111/j.1540-6261.1993.tb04702.x 


  78. ^ The economic sciences prize committee of the royal Swedish academy of sciences 2013, p. 41


  79. ^ Fama, Eugene F.; French, Kenneth R. (1996), “Multifactor explanations of asset pricing anomalies”, The Journal of Finance 51 (1): 55-84, doi:10.1111/j.1540-6261.1996.tb05202.x 


  80. ^ Carhart, Mark M. (1997), “On persistence in mutual fund performance”, The Journal of Finance 52 (1): 57-82, doi:10.1111/j.1540-6261.1997.tb03808.x 


  81. ^ Mehra, Rajnish; Prescott, Edward C. (1985), “The equity premium: A puzzle”, Journal of Monetory Economics 15 (2): 145-161, doi:10.1016/0304-3932(85)90061-3 


  82. ^ Mehra, Rajnish; Prescott, Edward C. (2003), “The equity premium in retrospect”, in Constantinides, George M.; Harris, Milton; Stulz, René M., Handbook of the Economics of Finance 1, Elsevier, pp. 889-938, doi:10.1016/S1574-0102(03)01023-9, ISBN 9780444513632 


  83. ^ Hansen, Lars P. (1982), “Large sample properties of generalized method of moments estimators”, Econometrica 50 (4): 1029-1054, JSTOR 1912775, http://jstor.org/stable/1912775 


  84. ^ Hansen, Lars P.; Singleton, Kenneth J. (1982), “Generalized instrumental variable estimation of nonlinear rational expectations models”, Econometrica 50 (5): 1269-1286, JSTOR 1911873, http://jstor.org/stable/1911873 


  85. ^ The economic sciences prize committee of the royal Swedish academy of sciences 2013, p. 23


  86. ^ Weil, Philippe (1989), “The equity premium puzzle and the risk-free rate puzzle”, Journal of Monetory Economics 24 (3): 401-421, doi:10.1016/0304-3932(89)90028-7 


  87. ^ Hansen, Lars P.; Jagannathan, Ravi (1991), “Implications of security market data for models of dynamic economies”, Journal of Political Economy 99 (2): 225-262, JSTOR 2937680, http://jstor.org/stable/2937680 


  88. ^ Shiller, Robert J. (1979), “The volatility of long term interest rates and expectations models of the term structure”, Journal of Political Economy 87 (6): 1190-1219, JSTOR 1833329, http://jstor.org/stable/1833329 


  89. ^ Shiller, Robert J. (1981), “Do stock prices move too much to be justified by subsequent changes in dividends?”, The American Economic Review 71 (3): 421-436, JSTOR 1802789, http://jstor.org/stable/1802789 


  90. ^ The economic sciences prize committee of the royal Swedish academy of sciences 2013, pp. 15-17


  91. ^ Fox, Justin (2013), “What we've learned from the financial crisis”, Harvard Business Review 2013 (11): 94-101, https://hbr.org/2013/11/what-weve-learned-from-the-financial-crisis 


  92. ^ Brunnermeier, Markus K.; Pedersen, Lasse H. (2009), “Market liquidity and funding liquidity”, The Review of Financial Studies 22 (6): 2201-2238, doi:10.1093/rfs/hhn098 


  93. ^ Engle, Robert F.; Granger, Clive W. J. (1987), “Co-integration and error correction: representation, estimation, and testing”, Econometrica 55 (2): 251-276, JSTOR 1913236, http://jstor.org/stable/1913236 


  94. ^ Engle, Robert F. (1982), “Autoregressive conditional heteroscedasticity with estimates of the variance of United Kingdom inflation”, Econometrica 50 (4): 987-1007, JSTOR 1912773, http://jstor.org/stable/1912773 


  95. ^ Bollerslev, Tim (1986), “Generalized autoregressive conditional heteroskedasticity”, Journal of Econometrics 31 (3): 307?327, doi:10.1016/0304-4076(86)90063-1 


  96. ^ Hamilton, James D. (1989), “A new approach to the economic analysis of nonstationary time series and the business cycle”, Econometrica 57 (2): 357-384, JSTOR 1912559, http://jstor.org/stable/1912559 


  97. ^ Andersen, Torben G.; Bollerslev, Tim; Diebold, Francis X.; Labys, Paul (2003), “Modeling and forecasting realized volatility”, Econometrica 71 (2): 579-625, doi:10.1111/1468-0262.00418 


  98. ^ Barberis, Nicholas C.; Thaler, Richard H. (2003), “A survey of behavioral finance”, in Constantinides, George M.; Harris, Milton; Stulz, René M., Handbook of the Economics of Finance 1, Elsevier, pp. 1053-1128, doi:10.1016/S1574-0102(03)01027-6, ISBN 9780444513632 


  99. ^ Benartzi, Shlomo; Thaler, Richard H. (1995), “Myopic loss aversion and the equity premium puzzle”, The Quarterly Journal of Economics 110 (1): 73-92, doi:10.2307/2118511 


  100. ^ Barberis, Nicholas C.; Shleifer, Andrei; Vishny, Robert W. (1998), “A model of investor sentiment”, Journal of Financial Economics 49 (3): 307-343, doi:10.1016/S0304-405X(98)00027-0 


  101. ^ Shleifer, Andrei; Vishny, Robert W. (1997), “The limits of arbitrage”, The Journal of Finance 52 (1): 35-55, doi:10.1111/j.1540-6261.1997.tb03807.x 




参考文献


複数回参照したもののみを列挙する。




  • 池田昌幸 『金融経済学の基礎』 朝倉書店〈ファイナンス講座〉、2000年。ISBN 9784254545524。 


  • Dybvig, Philip H.; Ross, Stephen A. (2003), “Arbitrage, state prices and portfolio theory”, in Constantinides, George M.; Harris, Milton; Stulz, René M., Handbook of the Economics of Finance 1, Elsevier, pp. 605-637, doi:10.1016/S1574-0102(03)01019-7, ISBN 9780444513632 


  • Fama, Eugene F. (1970), “Efficient capital markets: A review of theory and empirical work”, The Journal of Finance 25 (2): 383-417, doi:10.1111/j.1540-6261.1970.tb00518.x 


  • Shreve, Steven E. (2004), Stochastic calculus for finance II: Continuous-time models, New York: Springer, ISBN 9780387401010 

  • Scientific Background on the Sveriges Riksbank Prize in Economic Sciences in Memory of Alfred Nobel 2013 UNDERSTANDING ASSET PRICES (PDF)”. The economic sciences prize committee of the royal Swedish academy of sciences (2013年10月14日). 2015年5月26日閲覧。



関連項目



  • コーポレート・ファイナンス

  • 数理ファイナンス

  • 金融工学

  • 行動ファイナンス



外部リンク



  • 主要学術雑誌


    • The Journal of Finance (en:The Journal of Finance) アメリカファイナンス学会が発行。


    • Journal of Financial Economics (en:Journal of Financial Economics) エルゼビアが発行。


    • The Review of Financial Studies (en:The Review of Financial Studies) オックスフォード大学出版局が発行。



  • 国際学会


    • アメリカファイナンス学会(American Finance Association) (en:American Finance Association)


    • ウェスタンファイナンス学会(Western Finance Association) (en:Western Finance Association)



  • 日本の学会

    • 日本金融学会

    • 日本経営財務研究学会

    • 日本ファイナンス学会

    • 日本金融・証券計量・工学学会







Popular posts from this blog

Full-time equivalent

さくらももこ

13 indicted, 8 arrested in Calif. drug cartel investigation