揚水発電






揚水発電所 発電機室





関西電力・奥吉野発電所(左・下池旭ダムと右・上池瀬戸ダム


揚水発電(ようすいはつでん、英語: Pumped-storage hydroelectricity)は、夜間・休日昼間などの需要の少ない時間帯に電力系統の電力・周波数・電圧・力率の調整のため、他の発電所の余剰電力で下部貯水池(下池)から上部貯水池(上池ダム)へ水を汲み上げておき、平日昼間・夕方電灯点灯時などの需要が増加する時に、上池ダムから下池へ水を導き落とすことで発電する水力発電方式である[1]


数分以内に揚水・発電の切り替えができるため、大規模電源脱落・需要の予測以上の増加に備えた予備力、大規模停電時の電力系統復旧用の初期電源として重要である。また、原子力発電・大規模汽力発電・流れ込み水力発電所・地熱発電・太陽光発電・風力発電など調整力の小さい電源の占める割合の大きな需要の少ない時間帯に、即応性の調整力として利用されている。




目次






  • 1 概要


    • 1.1 役割


      • 1.1.1 アンシラリーサービス


      • 1.1.2 需給制御


      • 1.1.3 経済運用




    • 1.2 現状と課題


    • 1.3 揚水発電の効率




  • 2 揚水発電の種類


    • 2.1 河川利用による分類


      • 2.1.1 混合揚水発電


      • 2.1.2 純揚水発電




    • 2.2 発電機の配置による分類


      • 2.2.1 別置式


      • 2.2.2 タンデム式


      • 2.2.3 可逆式




    • 2.3 電動機の始動方式による分類


      • 2.3.1 半電圧起動方式


      • 2.3.2 同期始動方式


      • 2.3.3 ポニーモーター始動方式


      • 2.3.4 サイリスタ始動方式




    • 2.4 可変速揚水発電




  • 3 世界各地の揚水発電


    • 3.1 ヨーロッパ


    • 3.2 日本




  • 4 揚水機の運転


  • 5 新しい技術


    • 5.1 海水揚水発電


    • 5.2 スプリッタランナ




  • 6 脚注


  • 7 参考文献


  • 8 関連項目


  • 9 外部リンク





概要



役割


揚水発電の役割は、大容量電力貯蔵である。電力需要・供給の平準化を狙う蓄電を目的した、ダムの水を用いて、電力を位置エネルギーとして蓄える巨大な蓄電池、あるいは蓄電所と言うべきものである。


電力需要は、夏季の昼間の冷房需要・冬季の夕方の電灯点灯と暖房の同時使用などの時に最高となり、深夜に最低となる。そのため、高負荷時は電力供給力、低負荷時は調整力が問題となる。また、太陽光発電所など再生可能エネルギーの割合の高い休日昼間の調整力が特に問題となっている。


揚水式発電は、発電で電力供給力・揚水で調整力供給するため、深夜・休日昼間に揚水、夏季の昼間・冬季の夕方に発電する[2]


揚水発電は世界的にも行われているが、電力系統が他国から独立し、電力需要のピークとオフピークの差が大きい日本で特に普及した蓄電方法である。



アンシラリーサービス


アンシラリーサービスは、電力系統の電力需要と発電量を一致させ、電力・周波数・電圧・力率を調整するともに、供給信頼度を確保することである。



  • 周波数制御数 : 数秒以下の変動に対してははずみ車効果によって、数秒~1分程度の変動に対してはガバナ制御によって、1分~数分程度の変動に対しては負荷周波数制御によってそれぞれ制御することができる。

  • 電圧制御 : 調相運転によって無効電力、自動電圧調整で電圧、自動力率調整で力率を調整する。

  • 潮流調整 : 大規模電源脱落・系統連系設備事故時の過負荷に対し、瞬時に揚水遮断・発電出力調整し、系統の安定度の維持・過負荷の解消・大規模停電の防止を行う。

  • ブラックスタート : 広範囲停電が発生した場合の系統復旧用の初期電源

  • 試験負荷 : 大容量発電所の遮断試験

  • 環境規制がある場合の火力発電の代替 : 大気汚染警報時など



需給制御


ボイラーを使用する火力発電や原子炉を使用する原子力発電では電力需要に応じた出力調整が難しい[1]。かつては火力発電やを常時稼働させ、昼夜の電力調整を水力発電で補う火主水従と呼ばれる電力構成が用いられたこともあった[1]。しかし産業の発展とともに水力発電だけでは補いきれなくなった[1]。電力の安定供給のため、停止していても数分以内に最大電力供給できる出力調整が容易な施設である揚水式発電が導入された。



経済運用


一般的に電気は1日の昼間に多く消費され、夜間は需要が小さくなるため、ピークとオフピークには大きな差ができる。しかし、電力エネルギーは発電と消費がほぼ同時であり貯蔵しておくことが難しいエネルギーである[1]。そのため電力会社は仮にピークの時間が僅かであっても、そのピークに対応できる発電設備を保有しなくてはならない。それゆえピークに備えた電力設備は大部分の時間で利用されないため、設備利用率は一般的に低く、設備投資の削減の観点からもピークとオフの差は小さいことが望ましい。


設備利用率が特に悪化する夜間に既存発電設備の発電する電力で水をくみ上げ、需要がピークとなる昼間に発電を行うことで、ピークとオフピークの差を埋めることができ、設備利用率の全体的な向上が図れる。



現状と課題


2014年11月、経済産業省は同省が実施した集計により、2013年度の揚水発電所設備利用率が全国でわずか3%にしか達していないことが判明したと発表した[3][4]


日本国内に40ヶ所以上、総出力2,600万kWと世界最大規模の施設がありながら、100%フル稼働で運転したと仮定した際の発電量と実発電量を比較したところ設備利用率がわずか3%で、2010年以降の利用率はほぼ横ばいのままほとんど変化していないことがわかった。この3%という値はアメリカやドイツの利用率10%と比較すると非常に低い値である。


これは、日本の揚水発電所が総出力においては世界最大規模ではあるものの、個々の貯水量に関しては欧米のそれに比べ小規模であるため、設備利用率において欧米レベルの運用を実施することが物理的に不可能なためである。


(同じ10万kWの揚水発電所でも、貯水量に3倍の差があれば当然ながら設備利用率も3倍の差がつく)



揚水発電の効率


100%の揚水電力に対して、予測効率及び変換効率は70%程度、総合効率(正味のエネルギー効率)は25%程度になる。


ηT=ηTG×ηTP×Hg/Hp{displaystyle eta _{T}=eta _{TG}times eta _{TP}times H_{g}/H_{p}}{displaystyle eta _{T}=eta _{TG}times eta _{TP}times H_{g}/H_{p}}




  • ηT{displaystyle eta _{T}}{displaystyle eta _{T}}: 総合効率


  • ηTG{displaystyle eta _{TG}}{displaystyle eta _{TG}}: 発電運転時総合効率


  • ηTP{displaystyle eta _{TP}}{displaystyle eta _{TP}}: 揚水運転時総合効率


  • Hg{displaystyle H_{g}}{displaystyle H_{g}}: 有効落差


  • Hp{displaystyle H_{p}}{displaystyle H_{p}}: 全揚程



揚水発電の種類




上池として皿状の人造湖を設けた純揚水発電所の例(国土交通省、国土画像情報(カラー空中写真)より作成した電源開発沼原発電所(1976年11月18日および22日撮影))




タンデム式揚水機




可逆式揚水機



河川利用による分類



混合揚水発電


混合揚水発電は、流域面積が広く年間流量の多い貯水池を上池に持っているもので、揚水運転をしなくても自然流量だけでもそれなりに発電できるものである。多くの場合は、貯水池式水力発電へ揚水発電機を追加したような形で、豊水期には自然流量だけを使い、渇水期には揚水運転を併用することで年間を通じてピーク発電に対応するものである。基本的には自然流量を使う貯水池式発電であるため、20万〜40万キロワット程度の出力で設計される。



純揚水発電


純揚水発電は、流域面積が非常に狭く年間流量が殆ど無い貯水池を上池に持っているもの。発電運転を行うためには揚水運転が必須となる。短時間のピーク調整に特化するために落差と使用水量を非常に大きく確保してあるので、出力は発電所全体で最大100万〜200万キロワットと非常に大きい。しかし、6〜10時間の発電運転で上池の水は底をついてしまう。貯水池を小さくするため、高揚程化が進められている。



発電機の配置による分類



別置式


別置式は、同じ揚水発電所において、発電機と発電用水車とで構成する発電専用機とは別に、電動機とポンプとで構成する揚水専用機を配置したもの。
建設費用が高く、現在はほとんど用いられていない。



タンデム式


タンデム式は、発電機としても揚水機としても運転できる1台の発電電動機を、軸を同じくして発電用水車と揚水ポンプとで共有するもの。
ヨーロッパで発展した方式で、発電時・揚水時とで発電用水車・揚水ポンプとを使い分けるので総合的に効率がよく、早期より高落差にも対応できていた。


2004年に着工した、オーストリアのKops II 揚水発電所は、ポンプで汲み上げた水の一部を発電用水車に供給することで、発電側+100%から揚水側-100%までの出力調整を行っている。



可逆式


可逆式は、発電電動機と、発電用水車としてもポンプとしても利用できるポンプ水車とで構成したもの。ポンプ水車としてはフランシス形ポンプ水車が広く採用されているほか、一部の低落差揚水発電所ではデリア形ポンプ水車も利用されている。
アメリカ合衆国で発展した方式で、日本でも多く採用されている。もともと別置式・タンデム式に比べ建設費用が安価であったポンプ水車は改良を重ね効率が向上し、さらに高落差にも対応し現在の主流となっている。



電動機の始動方式による分類


揚水機の多くは三相同期電動機が使われる。汲み上げ時に電動機を停止状態から同期速度まで回転させるために以下のような始動装置が必要であり、仮に停止状態で給電すれば揚水機のコイルが過熱する恐れがある。揚水発電所では、各揚水機ごとに異なった始動方式を採用する場合もある。


全方式に共通なのは、揚水運転開始時に水車が水中にある状態では非常に大きな始動トルクが必要となり、容易には始動できない。このため、始動時にはガイドベーンを全閉にして、圧縮空気を注入し、水車を空気中で定格回転数にしたのちにガイドベーンを開放して揚水運転を開始している。



半電圧起動方式


半電圧起動方式は、専用の断路器による結線の組み換えなどにより、系統から受電した電圧を半減させ、その電力で揚水機を電動機として加速させて始動する方式。
技術的には簡易なため、昭和30-40年代前半辺りでは用いられていたが、系統に与える影響が大きいので、電圧変動に対する要求が厳しくなったそれ以降では、新規には用いられなくなった。



同期始動方式


同期始動方式は、電動機に始動用発電機を電気的に接続し、発電機を停止状態から徐々に回転させていくことで電動機に低周波の交流電力を供給し、始動する方式。その後は発電機の回転数を上昇させ、電動機を同期速度に達するまで牽引する。電動機が電力系統への並列を完了したのち、発電機は切り離される。電動機の並列までは発電機・電動機ともに電力系統からは独立しているので、電力系統に及ぼす影響が少ないのが特長であるが、起動時電動機とは別に同クラスの発電機を必要とする制約がある。このため、複数台揚水発電機がある発電所では、コスト削減の面からポニーモーター始動方式と同期起動方式とをコンビにして、ポニーモーター始動方式の揚水発電機で同期始動させる方式を採用している所もある。



ポニーモーター始動方式


ポニーモーター始動方式は、電動機を、軸を同じくして設けられた始動用電動機(ポニーモーター)によって始動する方式。並列時の電力系統への影響は少なく別の発電機も必要ないが、ポニーモーターの電源は電力系統から受電する必要があり結構大きい電力が必要なため、通常の受電設備よりも増強された設備が必要になる。



サイリスタ始動方式


サイリスタ始動方式は、サイリスタ周波数変換器(VVVFインバータ)によって低周波の交流電力を電動機の電機子に供給して始動、その後は徐々に周波数を上昇させ定格速度まで加速する方式。



可変速揚水発電


可変速揚水発電(かへんそくようすいはつでん)は、ポンプ水車を可変速発電電動機で駆動し、揚水時の消費電力を可変とするものである [5]


原子力発電・大規模石炭汽力発電などの割合の増加、昼間と夜間の消費電力の差の増大などで夜間の調整能力の余裕が少なくなっている。回転数・揚程(落差)・ポンプ水車の3要素で揚水に必要な電力が決まるため、回転数が一定の同期機である従来の揚水機は、起動した際の急激な系統負荷の変動が問題となってきた。


軽負荷時の出力調整力として、可変速揚水機は、コンバインドサイクル発電などと比較して、出力変化速度が大きく・調整可能幅も大きい。火力発電の調整力供給用稼働を減らし、燃料費の低減が可能となる。


その他に可変速揚水機の利点としては、ポンプ水車の効率が最高となる回転数が発電運転時と揚水運転時で異なるので、運転時の損失を少なくすることができる。


一般的な同期機は直流励磁の回転子で固定回転数・固定周波数であるが、可変速機はインバータ/コンバータもしくはサイクロコンバータにより低い周波数の交流を得て三相巻線の回転子を励磁し、可変回転数・固定周波数を実現している。


1981年(昭和56年)に、日立製作所と関西電力が共同で開発を始め、1987年(昭和62年)に成出発電所(富山県)で実証プラントを建設(22MW)して世界で初めて実用化し、その後、大河内発電所向けに世界最大の容量(400MW)の発電機を設置している[6]

































回転子励磁の比較
方式
概要
半導体
無効電力
高電圧化
部品点数
発電電動機の容量
インバータ/コンバータ 一旦直流に変換 自励式 消費しない 工夫を要す 小さくできる
サイクロコンバータ 直接交流に変換 他励式 消費する 容易 大きくなる





















































従来型と可変速システムの比較
システム
ダム容量利用
地下発電所の空洞体積
電機分コスト
水車効率
運転範囲
出力変化速度
発電時
揚水時
通常運転
過渡時
定速機 100% 100% 基準 50-100% 一定 0-100%
/60秒
不能
可変速 より低水位で運転可能 105% 140% 最大出力時0.5%増
中間負荷時2.5%増
30-100% 70-100% 0-100%
/60秒
20MW
/0.1秒
可変速の備考 回転子
変換器
ロータ
励磁装置
回転速度を変えることで
高効率運転が可能
水車の特性向上 入力は速度の三乗に比例 電気的に制御 慣性エネルギーを電気エネルギーに高速変換可能


世界各地の揚水発電



ヨーロッパ


1892年、スイスのチューリッヒに、発電機と発電用水車からなる水車発電機と、電動機とポンプからなる揚水機を別々に配置した(別置式)世界初の揚水発電所 Lettern 発電所が完成した。


1910年代、発電機と電動機を可逆とし兼用する発電電動機に、発電用水車とポンプを組み合わせたタンデム式が開発され、イタリアの Vivone 発電所に採用された。


1931年、イタリア Lago Baiton 発電所およびドイツ Baldeney 発電所に、発電用水車とポンプを兼用するポンプ水車を導入した。その後はポンプ水車の高効率化が進み、揚水機は大容量化への道を歩むことになる。



日本


日本初の揚水発電所は、1934年4月に完成した長野県、野尻湖のほとりにある池尻川発電所である。その1か月後、富山県で1931年に完成している既設の普通水力発電所、小口川第三発電所に揚水ポンプが追加別置され、揚水発電所として運転開始した。


以下は日本に建設された揚水発電所の一覧である。









































































































































































































































































































































































































































































































































































発電所名
 [備 1]
認可出力
[備 2](kW)
水系
上池
下池
種類
 [備 3]
運用開始
 [備 4]
所在地
 [備 5]
事業者

001/新冠

0,200,000

新冠川

新冠ダム

下新冠ダム


1974年

01北海道

北海道電力

002/高見

0,200,000

静内川
新冠川
沙流川

高見ダム

静内ダム
混可

1983年

01北海道
北海道電力

003/朱鞠内[7]

0,001,120

石狩川

雨竜第一ダム
三股取水堰
混可

2013年

01北海道
北海道電力

004/京極

0,400,000
(600,000)

尻別川
上部調整池

京極ダム
純可

2014年

01北海道
北海道電力

005/池尻川

0,002,340

関川

野尻湖

池尻川調整池


1934年

20長野県

東北電力

006沼沢沼

0,043,700/(43,700)

阿賀野川

沼沢湖

宮下ダム


1952年

07福島県
東北電力

007/第二沼沢

0,460,000
阿賀野川
沼沢湖
宮下ダム


1982年

07福島県
東北電力

008/矢木沢

0,240,000

利根川

矢木沢ダム

須田貝ダム
混可

1965年

10群馬県

東京電力

009/安曇

0,623,000

信濃川

奈川渡ダム

水殿ダム


1969年

20長野県
東京電力

010/水殿

0,245,000
信濃川

水殿ダム

稲核ダム

1969年

20長野県
東京電力

011/新高瀬川
1,280,000
信濃川

高瀬ダム

七倉ダム


1979年

20長野県
東京電力

012/玉原
1,200,000

利根川

玉原ダム

藤原ダム


1981年

10群馬県
東京電力

013/今市
1,050,000
利根川

栗山ダム

今市ダム


1988年

09栃木県
東京電力

014/塩原

0,900,000

那珂川

八汐ダム

蛇尾川ダム
純可

1994年

09栃木県
東京電力

015/葛野川
1,200,000
(1,600,000)

相模川

上日川ダム

葛野川ダム
純可

1999年

19山梨県
東京電力

016/神流川

0,940,000
(2,820,000)

利根川

南相木ダム

上野ダム


2005年

10群馬県
東京電力

017/畑薙第一

0,137,000

大井川

畑薙第一ダム

畑薙第二ダム


1962年

22静岡県

中部電力

018/高根第一

0,340,000

木曽川

高根第一ダム

高根第二ダム

1969年

21岐阜県
中部電力

019/馬瀬川第一

0,288,000
木曽川

岩屋ダム

馬瀬川第二ダム


1976年

21岐阜県
中部電力

020/奥矢作第一

0,315,000

矢作川

黒田ダム

富永ダム


1980年

23愛知県
中部電力

021/奥矢作第二

0,780,000
矢作川

富永ダム

矢作ダム

1980年

23愛知県
中部電力

022/奥美濃
1,500,000
木曽川

川浦ダム

上大須ダム

1994年

21岐阜県
中部電力

023/小口川第三

0,014,500

常願寺川

祐延ダム

真立ダム


1931年

16富山県

北陸電力

024/三尾

0,035,500
木曽川

牧尾ダム

木曽ダム


1963年

20長野県

関西電力

025/喜撰山

0,466,000

淀川

喜撰山ダム

天ヶ瀬ダム


1970年

26京都府
関西電力

026/奥多々良木
1,932,000

市川

黒川ダム

多々良木ダム
純可
1974年

28兵庫県
関西電力

027/奥吉野
1,206,000

新宮川

瀬戸ダム

旭ダム

1980年

29奈良県
関西電力

028/大河内
1,280,000
市川

太田ダム

長谷ダム
純可

1992年

28兵庫県
関西電力

029/新成羽川

0,303,000

高梁川

新成羽川ダム

田原ダム


1968年

33岡山県

中国電力

030/南原

0,620,000

太田川

明神ダム

南原ダム


1976年

34広島県
中国電力

031/俣野川
1,200,000

日野川

土用ダム

俣野川ダム


1986年

31鳥取県
中国電力

032/大森川

0,012,200

吉野川

大森川ダム

長沢ダム


1959年

39高知県

四国電力

033/穴内川

0,012,500
吉野川

穴内川ダム

繁藤ダム


1964年

39高知県
四国電力

034/蔭平

0,046,500

那賀川

小見野々ダム

長安口ダム


1968年

36徳島県
四国電力

035/本川

0,615,000
吉野川

稲村ダム

大橋ダム


1982年

39高知県
四国電力

036/諸塚

0,050,000

耳川

諸塚ダム

山須原ダム


1961年

45宮崎県

九州電力

037/大平

0,500,000

球磨川

内谷ダム

油谷ダム


1975年

43熊本県
九州電力

038/天山

0,600,000

松浦川

天山ダム

厳木ダム


1986年

41佐賀県
九州電力

039/小丸川
1,200,000

小丸川
大瀬内ダム
かなすみダム
石河内ダム
純可

2007年

45宮崎県
九州電力

040/黒又川第二

0,017,000

信濃川

黒又川第二ダム

黒又川第一ダム


1964年

15新潟県

電源開発

041/池原

0,350,000

熊野川

池原ダム

七色ダム


1964年

29奈良県
電源開発

042/長野

0,220,000

九頭竜川

九頭竜ダム

鷲ダム


1968年

18福井県
電源開発

043/新豊根
1,125,000

天竜川

新豊根ダム

佐久間ダム


1972年

23愛知県
電源開発

044/沼原

0,675,000

那珂川

沼原ダム

深山ダム


1973年

09栃木県
電源開発

045/奥清津
1,000,000
信濃川

カッサダム

二居ダム


1978年

15新潟県
電源開発

046/下郷
1,000,000
阿賀野川

大内ダム

大川ダム


1988年

07福島県
電源開発

047/奥清津第二

0,600,000
信濃川

カッサダム

二居ダム
純可

1996年

15新潟県
電源開発

048/沖縄やんばる
海水揚水

0,030,000
-
(名称不明)

太平洋
純可

1999年

47沖縄県
電源開発

049/城山

0,250,000
相模川

本沢ダム

城山ダム


1965年

14神奈川県

神奈川県企業庁


  • 桃色欄は建設中(一部運用開始含む)の揚水発電所。

  • 青色欄は揚水運用を廃止した一般水力発電所。

  • 灰色欄は廃止された発電所。

  • 備考




  1. ^ 事業者ごとに運用開始の古い順に並べた。この列のソートボタンで元の順序に戻る。


  2. ^ 2015年現在の認可出力をキロワット単位で示す。建設中の発電所について、1台も水車発電機が稼働していない場合は「-」とし、計画されている出力をかっこ内に示した。また、廃止された発電所については廃止される直前の出力をかっこ内に示した。


  3. ^ 「混」は混合揚水、「純」は純揚水、「可」可変速揚水ユニットが設置されているものを示す。


  4. ^ 発電所としての運用開始年を示す。建設中の発電所について、1台も水車発電機が稼働していない場合は運用開始予定年をかっこ内に示した。


  5. ^ 水車発電機が置かれた地点に属する都道府県名を示す。



揚水機の運転


以下に示すのは、一般的な揚水機の起動過程である。ここでは三相同期発電電動機とポンプ水車 (VFR-1RS) で構成される可逆式揚水機を一例とする。



  1. 運転制御回路の切り替え操作
    • 揚水機の運転はシーケンス制御回路により自動化されている。揚水機は発電時と揚水時とでは異なる運転シーケンス制御回路を持っており、運転員は揚水時の運転シーケンス制御回路へと切り替える操作を行う。また、主回路においても発電運転時と揚水運転時とでは回転の向きが逆となるため、主回路の中途に設けられた断路器(相切替断路器, G/M 断路器)によって三相のうち二相が入れ替えられる。


  2. 補機運転操作

    • 圧油装置や冷却水ポンプなど、揚水機の運転を支える補機を運転する操作を行う。

    • 揚水発電所では補機もまた大容量である。従って停止中は補機を停止させておくことで、発電所内における消費電力を低減し運転コストの削減が図られている。



  3. 運転操作
    • 補機を運転させ、揚水機の運転に必要な準備が完了したことを確認し、運転員は運転操作を行う。


  4. 入口弁開放
    • 入口弁(主弁)が開放される。これによりケーシングが水で満たされるが、現段階ではまだ全閉したガイドベーンによって水は遮られ、水車に流れ込むことはない。


  5. 回転子浮上
    • 回転子をごくわずかに浮上させ、スラスト軸受面での摩擦抵抗を低減し始動を円滑化する。多くはスラスト軸受面にギヤポンプなどを用いて送油し、回転子を油圧で押し上げる方法をとる。


  6. 水面位押し下げ
    • ポンプ水車は発電時に落差を有効に利用するため、常時水に浸っている場合がほとんどである。揚水始動時においては水の抵抗が揚水機の始動を困難とさせるため、あらかじめドラフト(吸出し管)の水面位を下げておく。多くはドラフト内に大量の圧縮空気を送り込む方法をとる。


  7. 始動
    • 始動装置により、揚水機を始動させる。この過程は始動方式による。


  8. 並列

    • 電動機が同期速度に達したら、自動同期装置によって同期検定を行い、電力系統と並列接続する。このあと揚水運転操作を行うまでは、ポンプ水車は空転した状態を維持する。この状態を揚水待機状態という。

    • この状態から界磁を強弱させることで無効電力を調整し、同期調相機として調相運転を行うことができる機種もある。



  9. 揚水運転操作
    • 運転員は、揚水待機状態から揚水運転に移行する操作を行う。


  10. 水面位上昇
    • ドラフト内部に充てんした圧縮空気を排気し、水面位を上昇させポンプ水車を水で浸す。


  11. ガイドベーン開放
    • 回転するポンプ水車はドラフト内の水を押し上げ始め、全閉したガイドベーンにかかる水圧が高まってゆく。この水圧がガイドベーンを開いてすぐに揚水開始できるに足りる揚圧力(プライミング水圧)に達したら、ガイドベーンを開放する。ガイドベーンは揚程に応じた適正な開度へと自動的に調整される。


  12. 揚水開始



新しい技術



海水揚水発電


海水揚水発電(かいすいようすいはつでん)は、海を下池とみなした揚水発電。下池のためのダム建設が省略できるので、建設コストを大幅削減でき開発可能地点も広がるが、海水を利用するため水車や水圧管路にはすぐれた耐食性が要求される。また海生生物や海水を地上に上げることによる環境影響等も考慮しなければならない。


電源開発が建設した沖縄やんばる海水揚水発電所で実証試験が行われていたが、2016年7月19日付で廃止された[8]。水力発電所がない上に他の電力会社との連系が不可能な沖縄電力では、貴重な調整力として活用されていた。



スプリッタランナ


スプリッタランナは東芝と東京電力が共同で研究・開発した、新しいフランシス形ポンプ水車ランナである。


従来のフランシス形ポンプ水車ランナは羽根(ランナベーン)の長さが一様であったのに対し、スプリッタランナでは長い羽根(長翼)と短い羽根(短翼)とが交互に配置されているのが特徴である。最新の流体力学による再設計とあわせて効率の向上と振動・騒音の低減を実現した。


スプリッタランナはまず東京電力安曇発電所 4号機で採用された。同発電所では従来、長さが一様で6枚羽根のフランシス形ポンプ水車を採用していたが、修理工事に伴い長翼4枚・短翼4枚、合計8枚の羽根を持つスプリッタランナに更新された。その後は同発電所 3号機が同ランナへと更新、そして2005年12月に営業運転が開始された東京電力神流川発電所では、超高落差での使用に対応した長翼5枚・短翼5枚、合計10枚の羽根を持つスプリッタランナが採用されている。



脚注


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  1. ^ abcde武智昭博 『自家用電気設備の疑問解決塾 改訂2版』、2012年、168頁。


  2. ^ “水抜かれ空っぽ 城山湖、10年ぶり点検で珍しい姿に”. 神奈川新聞 (2018年10月26日). 2018年10月30日閲覧。


  3. ^ 『揚水発電利用率3% 昨年度、再生エネ蓄電で活用せず』 中日新聞 (2014年11月2日付)


  4. ^ 『揚水発電活用を 世田谷で再生エネシンポ』 東京新聞 (2014年10月31日付)


  5. ^ 可変速揚水発電技術適用可能性調査 ファイナルレポート 国際協力機構 (PDF)


  6. ^ 400MW可変速揚水発電システム 日立評論 (PDF)


  7. ^ ポンプ逆転水車を採用した朱鞠内発電所 エバラ時報 (PDF)


  8. ^ 国頭村の揚水発電所廃止 電源開発、世界初の海水利用施設 沖電への売電交渉不調 琉球新報 2016年7月26日 同日閲覧




参考文献




  • 『電気協同研究』第24巻第1号、電気協同研究会、1968年、 ISSN 02855208。

  • 『土木工学ハンドブック』社団法人土木学会編纂、1964年11月10日、技報堂。

  • 松本貴與志・杉下懐夫・ほか「既設揚水発電所ポンプ水車のリニューアル (PDF) 」 、『東芝レビュー』第57巻第9号、東芝、2002年、 NAID 40005461476。

  • 新井秀忠、太田仁志・ほか「国内外水力発電所への最新技術の適用 (PDF) 」 、『東芝レビュー』第58巻第7号、東芝、2003年、 NAID 80016122654。


  • 電気学会・国立情報学研究所『電気のデジタル博物館』「世界初400MW可変速揚水発電システムの開発・実用化」




関連項目







  • ダム

  • 水力発電


  • 同期電動機
    • 電磁石同期電動機


  • 同期発電機

  • 水車発電機

  • 発電用水車



外部リンク




  • 揚水式発電 - 電気事業連合会

  • 北海道電力による揚水発電の解説





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